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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.35
公開日:2021年10月08日

資産形成の時間軸を考える

恐らく、資産形成と時間軸の間には、切っても切れない関係があるのではないだろうか。

たとえばお金を増やしたい一心で、時間軸をまったく考慮せずに漠然と節約や積立投資をすることで、自分の老後は安泰だと思い込もうとする人たちが、少なからずいる。

節約を例に挙げてみよう。

実際にどの程度節約になるのかは、方法にもよるので一概には言えないが、あくまでも参考事例として、株式会社じげんが運営している「enepi」というサイトに書かれていた記事の内容を取り上げてみたい。

電気をお得な料金プランに乗り換えて月1000円の節約、契約アンペアを見直して月280円の節約、家電や水回りの遣い方を見直して月3300円・・・・・・、などということがたくさんあって、合計すると月4万円ほどの節約が可能になるとか。もちろん、使い方などは人によって違いがあるし、全部を実行するのはまず不可能だから、平均的に月2万円の節約を実現できたとする。

では、この2万円を毎月預金に積み立てていった場合、30年間でどのくらいになるだろうか。答えは720万円だ。

確かに720万円と聞くと、そこそこ大きなお金という印象を受ける。

しかし、今ここにある720万円と、30年間かけて節約生活をして貯めた720万円は、果して等価だろうか。

よく合理的な行動をとっているかどうかを判断するうえで、こんな事例で説明されることがある。

「今、10万円もらえるのと、1年後に11万円もらえるのと、どちらを選ぶか」という話だ。「確かに1万円多いけれども、出来れば今、10万円を使って楽しみたい」という人はもちろん前者を選ぶ。

でも、よく考えてみると、1年後に10万円が11万円になるということは、年利回りで10%になる。対して今のリスクフリーレートがほぼ0%だとしたら、10万円を何年、運用し続けても、金利環境が変わらない限り10万円のままなので、選ぶべきは後者、というのが正解だ。

では、もし自分自身がある程度、投資に精通しているとしたらどうだろうか。1年あれば資産を倍に出来るという自信を持っている人ならば、1年後の11万円よりも今10万円を受けとる方を選ぶだろう。今、10万円を受け取って投資をし、1年間で倍に出来るならば、1年後の資産は20万円になる。冒頭の話に戻ると、節約に節約を重ねて30年後に720万円の資産を築くのも、ひとつの資産形成の選択肢ではあるが、ここに投資の概念を加えると、さらに資産形成は効率的に進むということだ。

とはいえ、これらの話はあくまでも机上の空論に過ぎない。10万円を20万円に出来るかどうかはマーケットと、自身の投資センスに依るところが大きいし、今10万円をもらえるか、1年後に11万円をもらえるかなどという話は、単なる喩えであって、実際の人生において、その手の選択肢が目の前にぶら下がることも、ほぼないだろう。

以上の話で確実なのは、毎月2万円ずつ30年間節約生活を続けると、手元に720万円のキャッシュが残るということだ。したがって、資産を増やすうえで大事なのは、「30年後に720万円のキャッシュが、自分にとってどれほどの価値を持っているか」を、現時点で推察する力だと思う。

つまり720万円という絶対金額で考えるのではなく、「30年後の720万円」というように、時間軸で相対化した価値を判断できる力を身に着けるということだ。そして、その価値を計る際には、時間軸だけでなく、自分が持っているスキルなどによって、どれだけのキャッシュを生み出せるのかということも、考慮する必要がある。

たとえば年収5000万円を稼ぎ出せる人ならば、30年後の720万円のために節約の知恵を絞ったりはしない。もっと大きなキャッシュを生み出す方法を考えるだろうし、その方が合理的だ。

もっと具体的な事例を用いて、30年後の720万円の価値を考えてみよう。

30年後に定年を迎えた時、それまで働いて得た資産は720万円のキャッシュのみだったとする。果たして、そこから恐らく30年近く続く老後生活を、その720万円で支えられるだろうか。

これは、ほぼ確実に「無理だ」と断言できる。これから30年後を考えると、年金財政は今以上に厳しくなる。公的年金制度が破綻することはありえないが、少なくとも総支給額は大幅に減るだろう。そうなった時、生活を支えるうえで切り崩しができる資産を持つ必要があるが、それが720万円ぽっきりでは、恐らく数年間で費消してしまうだろう。

そう考えると、そこそこ大きな金額であるように見えた720万円が、何やら心許ない金額に見えてくるのではないだろうか。そう、30年もかけて築いた720万円の価値なんて、実はその程度のものなのだ。「30年間、一所懸命に節約生活をしてきたから老後は安泰」などとは決して言えないのである。

では、どうすれば良いのか。正直、その方法に正解はない。

これから老後まで30年くらいの時間がある人は、たとえば「30年後までに純金融資産で1億円をつくる」というように具体的なゴールを定めて、それを実現するにはどういう方法があるのかを、真剣に考えるべきだろう。

ちなみに節約は、自分が働いて稼いだ以上のキャッシュを生むことが出来ない。資産を増やすためには、自分で働いて稼ぐことも大事だが、それと共にお金に働いてもらうなど、キャッシュを生み出す方法をいくつか持つことが肝心だ。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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