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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.33
公開日:2021年9月02日

ウッドショック

昨年あたりから、「ウッドショック」という言葉をよく耳にするようになりました。

シカゴ・マーカンタイル取引所に上場されている木材先物価格の値動きを時系列で追うと、1993年以降は高値で1000ボードフィート=470ドル、安値で170ドルのレンジで推移していましたが、2020年になってから騰勢を強め、今年5月には1700ドルを超えました。

ところが、6月以降は急落へと転じ、8月には450ドル近辺まで値下がりしました。もともと言われてきた「ウッドショック」は、木材価格の高騰によって住宅の建材価格が値上がりし、それが住宅需要全体に悪影響を及ぼすという意味で用いられていましたが、昨今は木材価格の暴落という意味で「ウッドショック」という言葉が用いられています。

なぜ木材価格が急騰したのでしょうか。


(※画像クリックで拡大します)

木材先物価格が騰勢を強め始めたのが2020年7月前後になります。新型コロナウイルスが世界的に感染拡大していくなかで経済活動の低迷が懸念され、2020年3月には一時的に株価が暴落する「コロナショック」が起こりました。この時、木材先物価格も400ドル前後で推移していたのが、安値で278ドルまで下落しました。この下落は、「新型コロナショックで経済活動が低迷→個人の所得が不安定化→高額消費の低迷」という流れで十分に説明がつきます。

しかし、新型コロナコロナウイルスの感染拡大はそこからさらに深刻化し、米国では2020年12月にかけて感染者数がうなぎ登りに増えていきましたが、そのなかで木材先物価格は上昇トレンドを描いていきました。その流れは2021年5月まで続き、1711ドルの高値をつけたのです。

この間、木材価格の高騰について言われていたのは、コロナ禍によって在宅ワーカーが増えた結果、人口の密集する都心部から郊外に転居する人が増えて住宅購入意欲が高まり、住宅用木材に対する需要増大につながったということです。

米国における新型コロナウイルスの新規感染者数は、2021年1月2日の30万462人をピークに減少傾向をたどり、6月には1~2万人程度にまで抑えられてきました。ワクチン接種が行き渡り始めたからですが、7月以降は再び新規感染者数が増加し始め、8月には30万人弱という日も見られるようになってきました。

もし、木材価格の高騰が新型コロナウイルスの感染拡大による在宅ワーカーの増加と住宅購入意欲の高まりにあるのだとしたら、再び木材価格が急騰してもおかしくない局面ですが、8月以降も木材先物価格は下がり続けており、かつ下値を切り下げる展開が続いています。この、新規感染者数の動向と木材先物価格の値動きを見ると、「コロナ禍によって在宅ワーカーが増えた結果、人口の密集する都心部から郊外に転居する人が増えて住宅購入意欲が高まり、住宅用木材に対する需要増大につながった」という理屈は、いささか怪しいものになってきます。

では、ウッドショックの裏側にあるのは何でしょうか。

答えから言ってしまうと、恐らく金融緩和による過剰流動性が悪さをしているのではないかと思われます。

ウッドショック
(※画像クリックで拡大します)

グラフで示した木材先物価格の上昇・下落のサイクルを見ると、極めて短時間のうちに上昇トレンド・下降トレンドを繰り返していることが分かります。これだけ短い時間軸のなかで、「急に家を建てたい人が増えたから木材をたくさん買いたい」、「家を建てたい人がいなくなったから、もう木材はいらない」などと、実需の動向が急変するとは考えられません。つまりウッドショックの裏側には、純粋な木材需要以外の要因があると考えられます。

それは「投機」の動きです。

昨年3~4月にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大が加速した時、米国をはじめとして世界各国は、積極的な金融緩和政策と財政出動を動員しました。金融緩和と財政出動を積極化させれば、金融市場に資金が溢れます。その結果、余剰資金が不動産や株式、各種商品先物などに向かいます。そのひとつが木材先物取引だった可能性は極めて高いと考えられます。

ただし投機で入ってきた資金は、売買益を得ることだけが目的なので、買われて値上がりした後は、必ず利益を確定させるための売りに転じます。そのきっかけになったのが、6月に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)です。

この場で、2024年中と考えられていた利上げのタイミングを2023年中にするということが公表されました。

新聞報道によると、2021年10-12月期の実質GDPは前年同期比で7.0%の伸びになると見られ、同時期の物価上昇率は前年同期比で3.4%に達するという見通しが出ています。FRBのインフレ目標値は2.0%なので、3.4%の物価上昇率はいささかスピードオーバーの感があります。その結果、早期の金融引き締めがアナウンスされました。

金融引き締めが行われれば、過剰流動性は解消に向かいます。結果、投機資金も回収され、過剰流動性を背景にして値上がりしてきた投資対象の価格は下落に転じます。これが8月にかけて木材先物価格が急落した一番の要因だと思われます。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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