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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.29
公開日:2021年6月23日

資産運用の誤解4 ~株価は企業価値ではない?~

価値と価格の違いとは何でしょうか。なかなか説明に困る話ではあるのですが、これを押さえておくことが、投資をするうえではとても大事です。

そして、往々にして価値と価格を混同して解釈している人が大勢います。

たとえば株価。皆さんは株価を企業価値だと思っていませんか。これは、投資の教科書に「時価総額は企業の価値を示している」などと書かれているからでもあります。時価総額は「株価×発行済株式数」ですから、時価総額は株価によって大きく左右されます。したがって、時価総額が企業価値なら、株価も企業価値を示すという解釈がまかり通るようになります。

でも、本当に株価は企業価値なのでしょうか。

株価とは、株式市場において、ある企業が発行した株式の売り手と買い手の間で決まるもので、時々刻々と変化していきます。その結果、株価が前日に比べて10%、あるいは20%も値上がりしたり、あるいは値下がりしたりするケースが見られますが、果たして企業が持っている価値とは、1日のなかでそこまで変化するものなのでしょうか。

このように考えていくと、株価は企業価値ではないということが、何となく分かってくると思います。つまり株価は価値ではなく価格なのです。

ひとことで「企業価値」といっても、その見方、計算の仕方にはさまざまな観点があります。

たとえば企業が保有している「純資産」を企業価値とする見方。純資産とは総資産から負債を差し引いたもので、純粋にその企業に帰属する資産のことです。企業が解散した場合、この純資産を株主全員で分け合います。つまり純資産は、その企業の解散価値を示したものであり、1株あたりの純資産が株価に対して割高なのか割安なのかを見るための指標がPBRです。

もうひとつの見方が、将来生み出されるであろうキャッシュフローを企業価値とみなす考え方です。

キャッシュフローとは、「現金流量」といって、収入から支出を差し引いて手元に残る現金の総量のことです。企業が経済活動を通じて得た収入から、その収入を得るのに必要だった支出を差し引いて残った現金が増えれば増えるほど、その企業は新しい付加価値を生み出したことになります。

この将来生み出されるキャッシュフロー(正確にはフリーキャッシュフロー)を現在価値に計算し直したものを企業価値とみなします。

この他にも、純資産を計算するに際して、貸借対照表に示されない無形資産や知的財産価値などの非事業資産まで加える方法など、企業価値の計算方法はさまざまです。

資産運用の誤解4 ~株価は企業価値ではない?~

このように、いくつもの概念があるという点からも、企業価値は特定の決まった計算方法があるわけではなく、したがって、「A社の企業価値はいくらか?」という問いに対する答えは、回答者の企業価値に対する考え方によって変わってきます。

株価は、この企業価値を株式の買い手と売り手双方がどのように見るのかによって、常時変動しています。

株式市場に参加している投資家は、計算した企業価値を1株あたりの数字に割り出し、現在の株価が企業価値に対して割高に買われているのか、割安に放置されているのかを比較しています。割高と判断すれば売るし、割安と判断すれば買います。こうして売り手と買い手の間で株価という価格が形成されていくのです。

個人投資家が企業の本質的な価値を計算するのは、なかなか難しいことです。そのため、割高か割安かを判断するための簡単な計算方法として、PERやPBRなどの株価指標があります。

これらの計算式は検索すれば簡単に出てくるので、ここでは特に触れません。ただ、これらを使う時にはいくつか注意点があります。

まずPBRですが、純粋にその企業に帰属する資産とはいえ、その資産を売却する際に、帳簿上に記載されている金額のまま売却できる保証がありません。帳簿上の金額よりも安く評価されてしまったら、PBRに対して株価が割高になる恐れがありますし、そもそも企業が保有している資産のひとつひとつに対して現在の時価を計算すること自体が困難なので、PBRについては参考程度に留めておいた方が良さそうです。

次にPERを用いて株価の割高、割安を判断する場合は、複数の評価軸を持つ必要があります。それは、

1.同一銘柄の過去のPER推移をチェックして、現在の水準が高いのか低いのかを見ること。
2.同業他社のPERを比較して相対的に高いのか低いのかを見ること。
3.東証株価指数(TOPIX)の平均PERに対して高いか低いかを見ること。

以上の3つです。これらを比較することによって、投資したい銘柄の株価が割高か割安かを判断します。

株式に投資するうえで大事なのは、この「価値」の見極めです。ただ、価値を見極めるにはさまざまなアプローチがあり、「これが絶対に正しい」というものがないのも事実です。とはいえ、頭の片隅にでも良いので、「企業の価値を見る」ことを常に心がければ、株価という価格に振り回される恐れは避けられると思います。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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