
一般的に長期の運用成績を比較すると、アクティブ運用はインデックス運用に勝てないと言われる。ただ、すべてのアクティブファンドがインデックスファンドに負けるわけではない。なかにはインデックスファンドを上回るリターンを出しているアクティブファンドも少なからず存在する。
2020年11月末時点における運用成績で比較してみよう。対象は日本株ファンドのうち大型株型と中小型株型の全394ファンドだ。まず、インデックスファンドの5年間騰落率は次のようになっている。
日経225平均株価連動型・・・・・・35.9%~38.6%
東証株価指数(TOPIX)連動型・・・・・・18.2%~20.0%
JPX日経インデックス400連動型・・・・・・19.4%~20.4%
インデックスファンドは特定の株価インデックスを連動目標としてポートフォリオを構築するが、売買コストや運用資産の規模などの関係で、株価インデックスの構成銘柄をすべて組み入れているわけではない。特定の株価インデックスに連動するようなモデルを組んで運用している。そのモデルの巧拙によって、インデックスファンドといえども運用成績に差が生じてくる。
では、過去5年間の運用成績でインデックスファンドを超えたアクティブファンドはどの程度あるのだろうか。
インデックスファンドのうち最も高い運用成績を上げたのは日経225平均連動型なので、それを上回る運用成績を収めたアクティブファンドの本数をカウントすると、全394ファンドのうち116ファンドとなった。ちなみに昨年、2019年11月末時点における過去5年間の騰落率で見ても、対象となる全381ファンドのうち100ファンドがインデックスファンドの運用成績を超えている。
上位に入ったファンドは大半が中小型株に投資するタイプなので、日経225平均株価と比較するのではなく、東証マザーズ指数や日経JASDAQ平均株価への連動を目指すインデックスファンドと比較する方が正しいと思われるが、現状、このタイプのインデックスファンドがほとんど設定されていないので、2020年11月末を起点にして過去1年間と5年間の両インデックスの騰落率を比較対象にしてみる。
まず、それぞれの騰落率は、
<過去1年間>
東証マザーズ指数・・・・・・34.66%
日経JASDAQ平均株価・・・・・・0.00%
<過去5年間>
東証マザーズ指数・・・・・・42.14%
日経JASDAQ平均株価・・・・・・36.72%
となる。ちなみに過去1年間と過去5年間の騰落率を見る理由は、過去5年間は長期のリターンを判断するためで、過去1年間については2020年3月のコロナショック後の戻りを見るためだ。
東証マザーズ指数と日経JASDAQ平均株価でより騰落率が高いのは東証マザーズ指数なので、東証マザーズ指数を比較対象にして、過去1年間と過去5年間の騰落率が両方とも上回ったファンドをピックアップすると、全部で10ファンドになる。ファンド名を挙げると、
DIAM新興市場日本株ファンド(アセットマネジメントone)
新光日本小型株ファンド(アセットマネジメントone)
新光小型株オープン(アセットマネジメントone)
ファンド"メガ・テック"(アセットマネジメントone)
ダイワ新興企業株ファンド(大和アセットマネジメント)
ダイワ・セレクト日本(大和アセットマネジメント)
ザ・2020ビジョン(コモンズ投信)
新光ジャパンオープンⅡ(アセットマネジメントone)
日本ニューテクノロジー・オープン(岡三アセットマネジメント)
生活基盤関連株式ファンド(アセットマネジメントone)
ちなみに上記10ファンドは過去5年間の騰落率の高い順になっている。カッコの中は運用会社名だ。
ただし騰落率をみる場合は、特定の期間だけでなく複数の期間を見ることが大切だ。たとえば5年騰落率で150%と、他のファンドよりもはるかに高い成績を収めた「DIAM新興市場日本株ファンド」の騰落率を期間別に見ると、確かに5年で150%だが、過去1年が85.4%、過去3年が81.4%だ。ということは、過去3年間の上昇率を超える上昇を、過去1年間で実現したことになる。
つまり、それだけ短期間で基準価額が大きく上下する傾向があると考えられる。これと似た特性を持つのが、大和アセットマネジメントの「ダイワ新興企業株ファンド」と「ダイワ・セレクト日本」、アセットマネジメントoneの「新光ジャパンオープンⅡ」、岡三アセットマネジメントの「日本ニューテクノロジー・オープン」だ。
基本的に、短期間で大きく値動きすると思われるファンドを購入する場合は、大きく値下がりしても持ち続けられるような資金を充てる方が無難だ。

金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。
