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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.17
公開日:2020年7月17日

「公的年金積立金運用が17.7兆円の損失」報道に思うこと

■ NHK - 公的年金の積立金運用 1~3月 17兆7072億円の赤字 過去最大

先日、公的年金の積立金を運用しているGPIFが1-3月期の運用で17.7兆円の損失を計上し、四半期ベースで過去最大の損失額になったと報道された。

この手のニュースを見聞きした時、皆さんはどう思うだろうか。

「17兆円も損失が出たら、私たちの年金が減るんじゃないの?」
「いよいよ年金破たんだ!」

などと思った人も、なかにはいるのではないだろうか。

確かに、四半期ベースで過去最大の損失額を被ったのだから、ニュースといえばニュースなのだが、バリューはそれほど高くない。というのも、公的年金積立金の運用で損失が生じたとしても、今の公的年金制度の根幹を揺るがすほど大きな問題ではないからだ。結論から言うと、公的年金積立金の運用で多額の損失が生じたとしても、受給できる年金額が大幅に減らされたり、年金財政が破たんしたりすることはないと断言しても良いだろう。

なぜか、について説明する前に、GPIFとは何かを簡単に説明しておこう。

GPIFはGovernment Pension Investment Fundの略称で、日本語では「年金積立金管理運用独立行政法人」となる。日本語の正式名称が長いので、GPIF(ジー・ピー・アイ・エフまたはジーピフ)という略称で呼ばれている。公的年金の積立金を運用するのが仕事だ。そして公的年金とは、皆さんもご存じのとおり、きちっと年金保険料を納めていれば65歳以降に受け取ることになる「厚生年金」と「国民年金」を指している。

まず、17兆円の損失額について考えてみよう。この損失額は2020年1-3月期に計上されたものであり、2020年1-3月期は2019年度第4四半期に該当する。

では、2019年度通期(2019年4月-2020年3月)の損益がいくらだったのかというと、8.3兆円のプラスだ。2020年1-3月期の損失額は17.7兆円だから、2019年4-12月には、すでに9.4兆円の利益が計上されていたことになる。

ちなみに、リーマンショックが起こった2008年度の損失額は、2019年度を上回る9.3兆円の損失だったが、その翌年度である2009年度は一転して9.2兆円の利益を計上した。

また、17兆円の損失を問題視するならば、利益が生じた年度についても取り上げるべきだろう。各年度の損益状況を見ると、2012年度は11.2兆円、2013年度は10.2兆円、2014年度は15.3兆円の利益を計上している。

■ GPIF - 年金積立金管理運用独立行政法人

ちなみに公的年金積立金の市場運用を始めた2001年度からの運用成績を見ると、今回話題になった17.7兆円の損失を含めても、合計で57.5兆円のプラスだ。それに、2020年1-3月期は大きな損失を被ったが、その後、株価が大きくリバウンドしたことを考えれば、恐らく2020年4-6月期の損益状況は大幅な利益に転じているはずだ。このように過去の数字を丁寧に追いかけると、17兆円の損失といっても、それほど大騒ぎすることではないのが分かる。

さらに言うと、17.7兆円の損失を計上したのが「公的年金積立金」であることも、取り立てて大騒ぎする必要がない理由のひとつだ。

原則として65歳から満額支給される公的年金の原資は、3つから成っている。それは①64歳までの現役世代が納めている国民年金保険料ならびに厚生年金保険料、②国庫から拠出された税金、③公的年金積立金、がそれだが、このうち公的年金積立金が占める比率は極めて小さい。

2018年度の数字で見ると、公的年金の支払い総額は約53兆円で、このうち現役世代が納めている国民年金保険料ならびに厚生年金保険料が約38兆円、国庫から拠出された税金が約13兆円なので、公的年金積立金によってカバーされている額は約2兆円足らずなのだ。

つまり、GPIFが公的年金積立金の運用に失敗して巨額の損失を被ったとしても、それが即、年金支給額の減額につながったり、年金財政の破綻を引き起こしたりするリスクは、限りなくゼロに近いといっても良いだろう。

恐らくこれから先も、世界的に株価が急落するたびに「GPIFが大きな損失を被った」という類の記事を目にすることになると思うが、それに一喜一憂する必要はどこにもないのだ。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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