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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.15
公開日:2020年5月29日

これからのJ-REITの選び方

3月の株価急落局面で、御多分に漏れずJ-REITの投資口価格も大幅に下落した。
J-REITとは、オフィスビルや商業施設、レジデンス、介護施設、倉庫、ホテルなどの不動産物件に投資して、そこから得られる賃料収入を分配金として投資家に還元するという仕組みを持った金融商品である。
以下は、一般社団法人不動産証券化協会が作成したデータである。

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これを見ると、今のJ-REITの投資口価格が、総じて割安水準であることが分かる。

東証REIT指数の推移を見ると、2019年末は前年に比べて20.94%も上昇し、2145.49ポイントまで上昇した。それがコロナショックを受けた後、2020年4月末時点では1576.43ポイントまで下落している。2019年末に比べて、下落率は26.52%にもなった。

その結果、分配金利回りが上昇している。J-REITは年1回、あるいは年2回の分配金が支払われるが、分配金の総額に対して投資口価格が下落すれば、計算式の分母が小さくなる分だけ、分配金利回りは上昇する。逆に投資口価格が上昇すれば、分配金利回りは低下する。

東証REIT指数をベースにして見ると、2019年末時点の予想分配金利回りは3.60%だった。前年に比べて指数が20.94%も上昇したため、予想分配金利回りが低下した。逆に2020年4月末時点では、投資口価格の下落によって東証REIT指数も低下した分だけ、予想分配金利回りも4.71%まで上昇している。

また、NAV倍率といって、投資口価格を1口あたり純資産で割って計算される数値も、1倍を割り込んだ。NAV倍率は株式のPBRと似た考え方の指標であり、1倍を割り込むと、そのファンドが保有している純資産に対して、投資口価格が割安であることを意味する。

このNAV倍率も、2019年末時点では1.20倍まで上昇していたが、2020年4月末には0.92倍まで低下した。それだけ今のJ-REITは割安水準に放置されていることになる。絶好の買い場だと思う人もいるだろう。

そもそもJ-REITは、他の株式のように売ったり買ったりを繰り返すような投資商品ではない。基本的には長期保有で、安定した分配収入を得るためのものと考えた方が良いだろう。

現状、日本の金利は限りなくゼロに近く、預入期間の長短、預入金額の多寡に関係なく年率0.002%が適用されている。100万円を1年間預けることで得られる利息は、税引き前で20円にしかならない。ちなみに2020年4月1日以前の定期預金利率は年率0.01%だったが、4年ぶりに利率の見直しが行われた結果、さらにゼロに近づいたというわけだ。

これに比べればJ-REITの4.71%という予想分配金利回りは魅力的に見える。

ただしJ-REITの予想分配金利回りは、あくまでも「予想」という点に注意する必要がある。さまざまな不動産物件を組み入れて、そこから得られる賃料収入がJ-REITの分配金原資になるが、テナントが抜けて賃料が得られなくなった場合は、その分だけ投資している不動産物件の収益性が低下する。結果、実際に得られる分配金の利回りが低下するケースも考えられる。

たとえばホテルを投資対象としている「インヴィンシブル投資法人」の2020年6月決算(第34期)で予定されている1口あたり分配金は30円だ。ちなみに第33期の1口あたり分配金は実績ベースで1725円。実は第34期も1812円が予想されていたが、新型コロナウイルスによるホテル売上への影響が予測不可能ということで、第34期の1口あたり分配金が大幅に減額された。

また「ジャパン・ホテル・リート投資法人」もホテルを中心に組み入れているが、こちらの2020年12月期決算(第21期)における業績予想では当初、1口あたり分配金が3750円と予想されていたが、3月25日に「未定」に修正された。当初予想では9%超の分配金利回りになるが、果たしてその利回りが達成できるかどうかは、今後の業績改善次第となる。つまり9%の分配金利回りが実現するかどうかは、現時点では「全く分からない」のだ。

ホテル主体型のJ-REITは、これまでインバウンド銘柄として注目を集め、投資口価格も上昇を続けてきたが、新型コロナウイルス問題によってインバウンドの回復が期待しにくくなっている。いずれ回復する可能性はあるが、それにはかなりの時間を要するだろう。J-REITに投資するにしても、ホテル主体型は様子を見たい。

逆に投資口価格の回復が早かったのが「物流施設主体型」だ。倉庫を投資対象の中心にしたもので、たとえば「日本ロジスティクスファンド投資法人」の投資口価格は、1月29日に29万5300円まで上昇した後、3月19日には16万円まで下落したが、5月22日には28万7800円まで戻してきている。同じく物流施設主体型の「日本プロロジスリート投資法人」の投資口価格は、3月19日に22万1200円まで値下がりしたが、5月21日は32万1000円をつけた。これは過去最高値である。

物流施設主体型が物色されているのは、新型コロナウイルスの蔓延によって個人の購買行動の中心軸が、急速にリアル店舗からECにシフトする可能性が高まったからだ。この傾向が今後も続けば、物流施設主体型は物色の中心になっていくだろう。

現状、J-REITの中でも本数が多い「事業所主体型」は、オフィスビルなどを組み入れて運用されるが、今後注意しなければならないのは、リモートワークの普及度合いだ。リモートワークがこのまま根付くのであれば、都心のオフィスビル需要が後退する恐れがある。それは事業所主体型にとってはネガティブ要因だ。

また、事業所主体型は景気の影響も強く受ける。テナントの契約更新頻度が2年に1度なので、景気の良し悪しで需給がブレやすい。この景気低迷からの回復に時間を要すればするほど、オフィス需要はシュリンクしていく恐れがある。

ただし、東京に関して言えば、将来的にアジアの金融ハブになる可能性が高まるという見方がある。東京都も「国際金融都市・東京」構想を打ち出しており、この流れが実現すれば、かつて東京から香港、シンガポールにアジア拠点を移した金融機関が東京に戻ってくることも考えられる。目先は景気を反映して厳しい局面が続くものの、中長期的にはポジティブと考えられる。安いところを拾うのであれば、今のような景気低迷期における投資口価格の低迷はチャンスと考えられる。

また、今回のコロナ禍で影響を受けたのが「商業施設主体型」だ。外出自粛の最中、閉店を余儀なくされるテナントも多かった。今後、リアル店舗からECへのシフトが本格化した場合、中長期的にも悪影響が及ぶものと考えられる。ホテル主体型と同様、商業施設主体型も目先は投資しにくい環境が続きそうだ。

一方、景気の動向に左右されにくいのは「住居主体型」だろう。景気が悪くても、人が生活をしていくためには住む場所が必要なので、景気の良し悪しによる影響を受けにくい。

5月22日時点のJ-REITの予想分配金利回り平均は4.58%だが、最も分配金利回りの低いJ-REITが0.25%、最も高いJ-REITが9.21%となっている。確かに、全体的に今のJ-REITは割安感があり、かつ分配金利回りも高めになっているが、「J-REIT」という括りの中でも、投資している不動産の種類によって状況は大きく違うという点に留意しておくことが必要だ。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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