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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.14
公開日:2020年4月17日

インバース型ETFは株価が下落した時のリスクをヘッジできるのか

日経平均株価は1月17日、2万4115円の高値を付けた後、しばらく揉み合いが続き、2月25日から急落に転じた。理由は世界的に新型コロナウイルスが蔓延し、各国の主要都市で都市封鎖が行われ、急激に景気がスローダウンしてきたからだ。3月19日の日経平均株価は1万6358円まで下落。わずか2カ月間で32%の値下がりとなった。

このように株価が急落すると、必ず注目されるのが「インバース型ETF」だ。

ETFはExchange Traded Fundの略で、証券取引所に上場されているインデックスファンドである。インバース型とは、特定の株価インデックスに対して逆の値動きをする特性を持っている。たとえば日経平均株価が10%値下がりすると、取引価格が10%値上がりする。

したがって、株価が下落に転じたところで首尾よくインバース型ETFを買っておけば、保有している株式のポートフォリオには損失が生じたとしても、インバース型ETFの取引価格は値上がりするため、多少なりとも株式のポートフォリオに生じる損失リスクを軽減できるというわけだ。

しかし、本当にそう簡単にいくのかどうか。そこを今回は検証してみたいと思う。

※画像をクリックすると大きな画像が表示されます。

グラフに示したのは、野村アセットマネジメントが設定・運用しているインバース型ETF、「NEXT FUNDS日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信」の取引価格と出来高だ。ダブルインバースとは、たとえば日経平均株価が10%下落すると、取引価格が20%上昇する特性を持っている。ちなみにグラフの取引価格は終値ベースだ。

日経平均株価が急落に転じた2月25日にこのETFを買い、目先の底値をつけた3月19日に売却した場合、かなりのリターンが期待できる。2月25日時点の終値が1口あたり946円。3月19日は1674円だ。たとえば1万口を購入していれば、わずか2カ月間で728万円の値上がり益が得られる計算になる。

ただ、問題は2月25日に買えたかどうかだ。2月25日の出来高は8801万8319口であり、それ以前の2000~6200口での推移からすれば明らかに増えているものの、過去の推移を見れば、何となく目端の利いた一部の投資家が食いついたかな、という程度に過ぎない。つまり、今回の急落を上手に捉えてインバース型ETFで大きな利益を上げた投資家は、恐らくそう多くはないと考えられる。

いや、現時点においては逆に損失を被っている投資家の方が多いかも知れない。それは3月中の出来高の推移を見ると察しがつく。

インバース型ETFの取引価格は、3月6日あたりから上昇ピッチを速めているのが分かる。また、それと同時に出来高も増えている。ちなみに3月6日の出来高は9696万8905口だが、その翌営業日になる3月9日には1億5538万8477口に急増している。

今になって振り返れば、2月25日に買うのが大正解だと分かるが、実際に2月25日時点で、日経平均株価が1万6000円台まで急落することを見通せた投資家はほとんどいないだろう。大半の人は、初動を掴むことは出来ない。多くの人は、いよいよ日経平均株価が連日、大幅に下落するのを目の当たりにしてから、徐々にインバース型ETFを買ってみてはどうかと考えるようになり、恐る恐る買いに行く。そして3月13日に出来高がピークをつけている。この日の出来高が2億7550万8799口だから、実際に数字を比較すれば、この日、いかに多くの投資家がインバース型ETFを買う決断を下したかということだ。

しかし、この時点で買って、さらに大きく儲かるかというと、残念ながらそうはいかない。出来高がこの数カ月で最高となった3月13日の取引価格は1口あたり1531円。取引価格がピークを付けたのが3月19日の1674円だ。つまり3月13日に買った投資家の利益幅は、1口あたりたったの143円でしかない。

しかも、インバース型ETFの取引価格は、ピークをつけてから急落に転じている。3月25日時点の取引価格は1157円だから、出来高が最も大きかった3月13日に買った投資家は利益を得るどころか、逆に逃げるタイミングを失って、損失を被っている人が結構多いのではないかと察する。4月13日時点の取引価格は1160円だから、3月13日に1531円で買ったとすると、すでに371円の損失を抱えていることになる。

インバース型ETFは、確かに商品設計上はマーケットが下落した時の損失をカバーできるようになっているが、相場心理を考えると、最も有効なタイミングで売買できる人は極めて限られる。

いつ来るか分からない相場の下落に備えて常にインバース型ETFのポジションを一定額保有するという方法もあるが、特にレバレッジのかかっているインバース型ETFを長期で保有すると、徐々に価格に下落圧力がかかっていくだけでなく、保有している株式や投資信託の額に対して、どの程度までインバース型ETFを買えば良いのかという点も考える必要がある。

保有しているポジションと同額のインバース型ETFを買うとなれば、資金力も必要になるし、上昇トレンドが続けば、インバース型ETFを持っている分だけ運用効率が大きく下がる。つまりインバース型ETFは、リスクヘッジ手段というよりも、相場が下落することに賭けてポジションを取る、投機目的の商品と考えるのが妥当なのだ。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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