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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.13
公開日:2020年2月27日

長期上昇トレンドの金価格と長期下降トレンドのプラチナ価格

金とプラチナといえば代表的な貴金属として知られている。そしてプラチナの埋蔵量は金の3分の1と言われており、希少性はプラチナの方が高い。なので、かつてはプラチナ価格が金価格を上回るというのが、コモディティマーケットでは常識とされてきた。

ところが、ここ5年の傾向としては両者の関係が逆転しており、金価格がプラチナ価格を上回る状態が続いている。かつても金価格がプラチナ価格を上回ることはあったが、それは一時的なものだった。プラチナ価格を金価格で割って求められる価格比は過去の経験則から1.1前後と見られており、それをターゲットにして「ストラドル」というポジションを組む投資家もいた。

たとえば価格比が0.9とか0.8というように1.1を下回っている時は、金価格がプラチナ価格を上回っていることになる。そのような状態は長く続かないという経験則が生きていた時は、いずれ価格比が1.1に戻るという前提で、プラチナを買って金を売るというポジションを持ち、無事に価格比が1.1になったら、プラチナを売って金を買い戻すことにより、最初に組んだストラドルのポジションを解消する。それによって金とプラチナの価格差を収益にすることが出来る。

しかし、ストラドル取引はあくまでもプラチナと金の価格差が1.1に戻るという特性を活かしたものなので、現状ではまったく意味を持たない。両者の価格比は2015年1月16日に1.0を割り込んで0.994になったが、その後、一度も1.1に戻ることなく、2020年2月26日時点では0.570まで低下している。このように価格比が1.1を割り込んで低下に歯止めがかからないのは、プラチナ価格の下落が続く一方で、金価格の上昇が続いているからだ。当然、2015年1月の時点でストラドルのポジションを組んだ投資家は、現在に至るまでほとんど収益を得るチャンスに巡り合わず、ただ損失が膨らんでいくのを、指を咥えてみているしかなかった。


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なぜ金とプラチナの価格が逆転したままなのかについては、プラチナの需要後退が大きな原因であると考えられる。プラチナは全体の60%が工業・医療・化学用途であり、なかでも自動車排気ガスの触媒や化学工業の触媒、燃料電池などに多く用いられている。

特に問題なのは、自動車排気ガスの触媒に対するニーズが、今後大きく後退すると思われることだ。

金価格とプラチナ価格が逆転し続けている現状の始まりは、2015年にフォルクスワーゲンが排ガス不正問題を引き起こしたことで、欧州においてディーゼル車の販売が急減したからだ。自動車触媒のうちプラチナが用いられるのは、主にディーゼルエンジン車である。一時はクリーンディーゼル車が欧州車の中心を占めており、日本国内にも欧州プレミアムブランドのディーゼルエンジン車は、今もかなり輸入されている。

ところが、これから欧州ではガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車をマーケットから締め出す動きが現実化してくる。

たとえばノルウェーでは、2030年からEV(電気自動車)とHV(ハイブリット車)のみを販売することになっている。オランダは2025年からEVのみの販売、インドは2030年からEVとHVのみの販売、中国も明確な時期は表明していないが、将来的にはEVとHVだけを販売する予定だ。またイギリスでは先日、当初は2040年からとしていたガソリン車とディーゼル車の販売禁止を5年前倒しにして2035年からにすることを発表した。フランスも2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出している。

こうした流れから、自動車触媒に用いられていたプラチナの需要後退が懸念されている。結果、マーケットでプラチナ価格は2019年6月まで低下傾向をたどった。

ただ、足元の値動きを見ると、プラチナもさすがに売られ過ぎのようで、2019年6月を底値にして徐々に上昇トレンドに入ってきている。そうであるにも関わらず価格比が低下しているのは、金価格の上昇が著しいからだ。

ここ数年続いている国際情勢の緊張化、地政学リスクの高まり、ドル安政策に対する備え、世界景気の後退懸念、あるいは中国を中心に蔓延しているコロナウイルスによる先行き不安など、リスクオフの要因が山積みになっている。リスクオフになれば金は買われる。結果、金価格は上昇の一途をたどっており、プラチナとの価格差が一段と広がっていると見られる。

プラチナなどの貴金属相場には、明確なファンダメンタルズが存在しないため、今の相場が割安かどうかを判断する術がない。とはいえ、過去において5400円もあったプラチナ価格は、2019年6月18日に2970円まで値下がりした。これを「異常な価格下落」と考えるのであれば、マーケットではいずれ異常な価格形成は修正されるので、プラチナ買いの金売りというストラドルのポジションを組んでみるのも一興だ。

ただし、この取引は先物の活用になるため、もっとも清算期間の長い限月でも10カ月先までしかチャンスを狙うことが出来ないことには留意しておきたい。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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