
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
先週の金曜日から昨日月曜日に掛けて3泊4日の旅程でフィリンピン・セブ島に出掛けて来た。
成田空港からセブ島まではフィリピン航空の直行便があり、行きは5時間半、そして帰りは4時間半で遠い様な近い様なちょっと中途半端な距離ではある。行きと帰りの所用時間が違うのはジェット気流と呼ばれる偏西風のせいで、行きはそのジェット気流に向かって行く逆風になり、帰りは逆にそれに乗って行く順風となるからである。
着いたセブの税関でひと悶着あった。
今回の旅行は普段大変お世話になっている会社の社員旅行にお招き頂いたのだが、今回の旅行でセブの恵まれない子供達にあげようと言う事でTシャツ、タオル、そしてボールペンなどを大量(凡そ段ボール4箱分)に持参した。
我々にとってTシャツやタオルなどは『どうって事はない』と考えがちだが、フィリピンではそれは輸入製品であり、税関は商用目的での持ち込みに厳しい。「これは何だ?」と訊かれて「セブの恵まれない子供達への贈り物だ。」と言いたいのだがその『恵まれない』の英語が咄嗟に分からない。
『Unhappy(不幸せ)』ではないな。
『Underprivileged(文字通りの恵まれない)』では硬いな。
結局「These are the gifts for poor children.(これらは貧しい子供達への贈り物だ)」と言ったら、「So, are these the donations for poor children?(と言う事はこれらは貧しい子供達への寄付なのか?)」と聞かれ、「そうだ」と答えると、「何故協会を通して寄付しないのか?」と手強い。
職員三人でああだこうだと言いながらこちらを観察している。「どうしてその寄付をする事になったのか?」と中々引き下がらない。
「友人が数か月前にセブに来た時に貧しい子供達を見て、次回来る時は何か贈り物を上げたいと思った。」
「それでその友人は誰?」
「あ、彼は香港在住で昨日からセブに来ていてここには居ない。」
ちょっとやばいかなと思っていたら一番偉そうなおばちゃんが「いいよ。」と言ってくれてほっとしたのも束の間、今度は一緒に着いた友人のバッグを開けろと言う。おいおい、何か持ち込み禁止の物を持っていたらやばいよと思ったら、ただの整髪剤で事無きを得た。缶に入っていたのでX線での検査に引っ掛かったのだろう。
ここまで来ても未だ職員の一人が「本当は許可を得ないといけないのに...」とぶつぶつ言っているので、「さあ、行こう。」と皆を促して無事にセブ島に上陸した。
着いた初日の晩御飯は2時間くらいかけた所の山の天辺にある、景色の良いレストランでフィリピン料理を頂いたが、全般的に甘くて酒飲みの筆者にはちょっと辛かった。
二日目は何と3時半の早朝に早起きして2時間半くらい掛けてジンベイザメ鑑賞ツアーに出掛けた。
ん、鑑賞ではないな。実際に海に潜ってジンベイザメを身近に見る事が出来る。でかい!
その次は近くに在る自然の滝。写真ではよく分からないが、高さは50メートルくらいあるのではなかろうか?
恥ずかしながらジンベイザメ・ツアーの船に揺られて船酔いとなり、何か炭酸飲料を無性に飲みたくなってコカコーラを買ったら20ペソ。(約45円也)ひゃあ、安い!
二日目の夜はホテルの前にあるスペイン料理屋で食事。スペイン料理も美味しかったがピザやパスタなどのイタリア料理も出て来て、少しほっとした。
三日目はシュノーケリングをしながらうようよいる熱帯魚を鑑賞したり、ドローンを飛ばしたり、時速50キロは出るラジコンのスピード・ボートで遊んでいたのだが、ここで又ハプニングが起きた。スピード・ボートが海面の藻やプラスティックのごみを絡めてしまい、制御不能となってしまった。
ブォーンと唸りながら目の前を突っ走ったり、数十メートル先を行ったり来たりしているのだが、どうしようもない。見ていると右に左に行きながらどんどん遠ざかって行く。50メートルは離れてしまっただろうか?
皆で「あーあ。」と言っていたら、チャーターした船の家族と思われる10歳くらいの少年がドボンと飛び込んでスピード・ボートを追い掛けて行く。最初は「頑張れ!」と言っていたのだがどんどん海流に流されてスピード・ボートが遠ざかる。
距離は正確には分からないがもう数百メートルは離れてしまったのに、スピード・ボートは止まらない。これはやばいと思って筋肉質の、正に『海の男』の様な乗組員に「もういいよ。」と言ったら「No problem.(問題無いよ)」と言いながらも自らも飛び込んでその子供とスピード・ボートを追って泳いで行く。
海流は依然として逆流で、もう肉眼ではほとんど見えない距離に行ってしまった、「これはまずいな。」と思っていたら目の良い人が「あ、捕まえた!」と叫ぶ。どうやらスピード・ボートの電池が切れたらしい。(30分も走っていたのだから当然だろう。)望遠レンズを付けたカメラを通して見ると確かに『海の男』がスピード・ボートを掴んでいるではないか。
『捕まえたはいいが、どうやって帰って来るんだ?』と思っていたら二人の姿が徐々に大きくなってくる。この逆流の中スピード・ボートを掴みながらどうやって泳いで来るんだろう?40~50分経っただろうか、ようやく二人が帰り着いた途端に大拍手が起きた。よくやった! 天晴れであった!
三日目の晩は海鮮料理。魚、海老、イカ、チャーハンなどが続々と出て来るが、やはりどことなく味付けは甘目であった。
さて四日目の最終日。ほとんどの連中はパラセイリングを含むマリンスポーツに出掛けたが、高度恐怖症の筆者は大人しくプール・サイドで音楽を聴きながらマイタイを飲んでゆっくり過ごした。
あっと言う間のセブ旅行であったが色々あって面白く、楽しかった。誰かが言った。
「また直ぐにでも来たい!」
同感である。

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
