
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
先週、シンガポールの某名門ホテルでの騒動をご披露したがこの馬鹿ホテル、日曜日にまたやりやがった!シンガポールに来ると在住30年近くになる有名な元為替ディーラーをこのホテルの「Sunday Champagne Lunch」に必ずご招待するのだが、これはシンガポールで一番美味しいと言われていて何時も満足していた。
このSunday Champagne Lunchは正午から午後3時までバフェー・スタイルの食事をしながらシャンパンは飲み放題である。今回も良い線を行っていた。午後3時を少し過ぎて、もうたらふく食べて(筆者は実は余り食べない)、たらふく飲んで(筆者は滅茶苦茶飲む。おそらくシャンパンをグラスで10杯以上は飲んだと思う。軽く元は取った)ちらと隣のテーブルを見ると未だシャンパンを注いでいるではないか?
「何だ、未だ良いのか?」と思っておねーちゃんに「Could we have one for the road ?(最後の一杯を貰える?」と聞いたら、「Sure, of course.(勿論ですよ)」と言う。話に夢中になって7~8分経って未だシャンパンが来てないことに気付いて、ちょっと偉そうなおばちゃんに「未だシャンパンが来てないんだけど。」と言うと「シャンパンは3時で終わりです。」と言う。
「うん知ってるけど、10分くらい前に頼んだらいいよと言ったから待ってるんだ。」と言うと、「誰に言った?」と言うので「ほら、あの人」と指差して教えてやったら二人で何か話して、その後余り英語の話せない某国のおねーちゃんが来て、「シャンパンは3時までです。」と言いやがった。
プッツン!
シャンパン一杯の事をごねているのではない。サービスするのを忘れていやがって、挙句の果てに自分で謝りもしないで他の奴に尻拭いをさせる魂胆が許せないのである。マネージャーを呼び付けて顛末を話して「I am very angry. Or rather, I am very pissed off.(俺は凄く怒っている。いや激怒している。)」と言ったら、「申し訳有りません。代わりにビールでもお出ししましょうか?」と来やがった!馬鹿野郎、15年前と同じではないか!「要らねーよ!早く勘定をしやがれ。」と席を立った。
皆さん、どう思いますか?私が理不尽でしょうか?
さて現在はシャングリラ・ホテルに滞在しており、既に2週間以上を快適に過ごしたが、この5年間シャングリラ・ホテルに来る前はマリーナ・ベイに面する六つ星とやらのホテルに凡そ15年間滞在していた。8年位前だったと思うが子供たち二人が結婚して家から出て行ってしまいジジ・ババ二人となってしまって犬の世話をする者が居なくなりシンガポールに2年ほど来なかった。
残念ながら愛犬の「はな」は13歳の命を全うして6年前に亡くなってしまい、ジジ・ババの旅を妨げる者が居なくなり(御免ね)二人でまたシンガポールに行こうかと言う事になった。
何時もの様に予約をし、チェックイン時にクレジット・カードをプリントして渡して快適に滞在していた。2年のブランクの間に左側に奇怪な姿のホテルが建ったり観覧車が出来たりで随分風景は変わったがまあいいや。
滞在10日目くらいであろうか、朝起きるとドアのところに封筒が有り開けてみると、「滞在費が貴方の個人信用の枠を超えましたので一度清算して下さい」と書いてある。実はこれは一見の客にはよく見られる光景で、まあ食い逃げならぬ泊まり逃げを防ぐ方法である。確か35年位前にロンドンに4週間くらい滞在した時に一度経験した事がある。おいおい、俺は一見の客ではないだろうに?しかもお互いに予約をした時の確認書で幾ら支払うという確認をしているし、使用額無制限のクレジット・カードのコピーを渡しているではないか?
プッツン!
ジェネラル・マネージャーを呼び出して猛烈に文句を言ったら、「すみません、ここ数年いらしてなかったので会計係が酒匂様の個人情報を無くしてしまって一般客と同じ扱いにしてしまいました。」と平謝りする。そこで確認書とクレジット・カードの話をすると押し黙ったままである。「今直ぐにチェック・アウトするから用意しろ!」と言ったものの、さあどうする?
そうだ、彼奴が居る、確か奥さんが昔シャングリラ・ホテルのお偉いさんだった。電話をして事情を話すと、「そりゃあ頭に来るわな。いいよ。シャングリラ・ホテルの手配をしてあげるね。」 「有難う。」で、彼がぼそっと言った。「ところで俺の息子(小さい頃からよく知っている)がこのホテルで顧客係として働いてるんだ。」「ん?そうか、では今回は息子さんに免じて何もしないけど、次回からは来ないからね」。それで、その翌年からこのシャングリラ・ホテルに滞在することになったのだ。
皆さん、どう思います?私の行いは理不尽でしょうか?
さて長いようで短かったシンガポール滞在もあと三日で日本に帰る。ああ、冷たいソーメンを食べたい!

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
