
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
筆者は飛行機に乗る時はJALしか乗らない。
理由は二つあって、先ずは凡そ25年も前になるがJALの競争相手の航空会社(ABCとしよう)と大喧嘩をして「自分の目が黒いうちは絶対ABCに乗らない!」事に決めたからである。そのABC社の名誉の為に顛末を話すことは控えるが怒り心頭に達して航空券(その頃は紙切れであった)をびりびりに引き裂いてカウンターに投げ捨てた(JALに乗り換えて随分損をした。短気は損気だ)。
約10年前にある会社から地方公演を頼まれたのだが、主催者は筆者がJALしか乗らない事を知っていた。「あのう、今度○○市で講演をお願いしたいんですが、一つ問題が有りましてJALが飛んでいなくてABCに乗って頂く必要が有ります。」「嫌だよ。俺、船で行く。」と冗談を言ったがちっとも笑ってくれなかった。「あのう、もう一つ問題がありまして・・・市で一番いいホテルはABCホテルなんです。」「嫌だよ。おれ、野宿する。」と再び冗談を言ったが、また、全然笑ってくれなかった。
講演は成功裏に終わり、美味しい食事をご馳走になって上機嫌でABCホテルに戻り、「寝る前に一杯飲もう。」と言う事になった。ホテルの最上階にあるバーでワインリストを見るとGAJA(ガヤ)のBarbarescoが凄くリーズナブルな値段で載っている。そしてこれが一番値段が高いワインだった。
「へー、すごいなあ。ABCホテルも満更ではないじゃん。」と皆で満悦でいたら若い兄ちゃんが栓を抜いたワインを持って来た。イタリアワインではあるがGAJAのBarbarescoではない。「これ、GAJAのBarbarescoではないよ。」と言うとそのお兄ちゃんは平然として「いえ、これはGAJAのBarbarescoです。」と答える。
「何処にGAJAのBarbarescoって書いてあるんだよ?」と瓶を見せると、「あれ?おかしいな。」と余り気にしている風でもない。「それとさあ、何で抜栓されているんだよ?客の前で抜栓するのが普通だろう?ちょっとソムリエを呼んで来いよ!」と言うと「今は居ません。」とけろりとしている。
お兄ちゃんはワインがGAJAのBarbarescoではないことを認めたし、そのワインは結構美味しかったので悶着はそれで終わった。因みにそのイタリアワインの値段は通常のGAJAのBarbarescoのそれの約四分の一であった。
トラブルを忘れて皆でそのワインを飲んでいると、隣の席で太ったおばさんが携帯電話を使って話の中身が筒抜けになるほどの大声で話していて、迷惑甚だしい。テーブルには「携帯電話のご使用はお控え下さい。」との注意書きがあるではないか!お兄ちゃんを呼んで「隣のおばさんに静かにする様に言ってくれ。」と頼んだら注意してくれた。
そのおばさん、凡そ2分間は静かだったが直ぐに又同じ様に大きな声で通話を始めて、ついに堪忍袋の緒が切れた。「おい、うるせえんだよ!此処で携帯電話を使うなって書いてあるだろう!」と怒鳴ったら逃げるようにして出て行った。「だからABCは嫌いなんだよ!」と主催者に八つ当たりしたら「やはりそうですね。」と妙に同感してくれた。おかしい(Funny)思い出である。
そしてもう一つのJALにしにか乗らない理由は、搭乗する航空会社を一社に絞ればマイレージが効率よく溜まるからである。さっき調べてみたら何とJALに乗った総距離は100万マイルを超えており、地球を約44周、月まで約2.3往復した計算になるらしい。ひえーっ!マイレージも溜まりに溜まって現在約70万マイル残っている。やはり一社に集中した方が効率良いですよね。さあ、今年はマイレージを使って何処に行こうか?

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
