
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
先月池袋で87歳の元通産省のキャリア官僚が運転する車の事故で若い母親と5歳の幼児が亡くなると言う痛ましい事故が有ったが、昨日も福岡市で80台の老人が運転する車が猛スピードで交差点に進入して衝突事故を起こし、運転手自身と同乗の70台の奥さんが死亡し8人が怪我をすると言う事故が起きた。
テレビのニュースを見ると、制限速度50キロの道を凡そ100キロ近い猛スピードで交差点に突っ込んで行っており、見たところブレーキを踏んだ痕跡は無い。
池袋の事故の場合は運転手は"ブレーキを踏んだが効かなかった。"と証言しているが、警察の検証によるとブレーキには何の問題も無く、恐らくブレーキを踏んだ積りでアクセルを踏み続けていたのだろう。
現場検証の折の運転手の姿を見ると歩くのにも大変なほどもうろくしており、悪いがああいう老人に運転をさせてはいけない。
昨日の福岡の事故は運転手が死亡した為、未だ詳細は分からないが反対車線を猛スピードで突っ走った後に交差点に突っ込んだのを見ると、まあこちらも池袋事故と同じ様にブレーキとアクセルを踏み間違えたのではなかろうか?
昔の車は殆どがマニュアル車で左足でクラッチを切り、右足で減速時にはブレーキ、加速時にはアクセルを踏んでいた。
ところで、サーキットで速く走る時はカーブで右足のヒール(踵)でアクセルを踏み、同時にトウ(爪先)でブレーキを踏むヒール&トウと言う高度のテクニックが有る。
何故こんな事をするかと言うとサーキットでカーブの前で減速する時にシフト・ダウンする時に下のギアに回転数を合わせないと急にエンジン・ブレーキが掛かってスピンするので、爪先でブレーキで減速すると同時に踵でアクセルをポンと踏んでエンジンの回転数を上げる。
もう少し説明すると直線で5速のギアで時速200キロ、エンジン回転数4000回転で走っていてカーブの手前で4速、3速とシフト・ダウンすると4500、5000回転に回転数を上げないと中々ギアが入らず、入ってもスピンしてしまう。
F1.を含め実際のレースを見ているとカーブの手前でブーン、ブーンと音がするがあれはレーサーがギアを落とす為にエンジンの回転数を上げているのである。
最近の車の殆どがオートマチック車になって、現在は左足はフット・レストに乗せて右足だけで減速時にはブレーキ、加速時にはアクセルを踏むが、もうろくしてくるとこのスイッチが急には出来なくなって、咄嗟にブレーキを踏まなければならない時にそのままだらーっとアクセルを踏み続け、パニックになってブレーキを踏む積りで更にアクセルを踏み込んでしまって減速するどころかどんどん加速するのだろう。
最近の車には安全装置が付いており、例えば筆者の車の場合は
-停止時から急発進するとアクセルを踏んでもエンジンがストール(回転数が落ちて急加速しない。)してのろのろ運転しか出来ない。勿論これに対するキル・スイッチ(エンジンがストールする機能を止める。)が有って筆者はこの機能は使っていない。
-走っていて急に横から人や物が飛び出して来たらフロント・グラスに付いている二つのカメラがそれを感知して急ブレーキを掛けて停止する。
-前の車を等間隔で追尾し、前車が加速すれば同じ様に加速し減速すれば同じ様に減速して追突する心配が無い。
その他に60キロ以上ではハンドル操作をしなくても車が自動運転する機能が有るがこれは上の様な高齢者の事故には何の助けにもならない。
この様な安全装置にも欠点が有り、例えば前車を追尾していて信号が変わり黄信号になり、そして赤信号になっても前車が急加速して突っ走っていけばこちらの車も同じ様に行動して信号無視となってしまう。
この遊楽・三昧でも触れたことが有るが"運転をしたい。"と願っている高齢者を無理やり運転させないことは出来ない。
まあ出来ることと言ったら上で述べた様な安全装置をもっと改善してなるべく事故の犠牲を少なくすることなんでしょうな?
高齢者講習を受けないと運転免許証を貰えない歳になってしまって色々考えさせられる今日この頃でありまする。

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
