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酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」 第184回
公開日:2019年4月09日

国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。

このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。

ディーラー殺すには刃物は要らない。

ドル・円相場が動かない。

先週のドル・円相場の値動きを見ると月曜日こそ66銭の値幅の動きが有ったが、後の火曜日から金曜日までは大体一日30銭前後の動きとなり、1週間の値動きも1円4銭に留まった。

  高値 安値 値幅
4月1日 111.44 110.78 66銭
4月2日 111.45 111.25 20銭
4月3日 111.57 111.21 36銭
4月4日 111.63 111.33 30銭
4月5日 111.82 111.52 30銭
週間 111.82 110.78 1円4銭

(4月1日から4月5日までのドル・円相場の高値、安値、値幅。)



どうしてドル・円相場が動かないで膠着状態にあるかと言うとその理由は簡単である。
買いたい人の買い意欲と売りたい人の売り意欲の力関係が拮抗しているからである。

為替相場は"上がる"か、"下がる"か、そして稀に"動かない"しかない。
買いたい人が多ければ需要過多になって相場は上がる。
売りたい人が多ければ供給過多になって相場は下がる。
買いたい人と売りたい人の力が拮抗していると現在の様に相場は動かない。

現在のドル・円相場で言えば、111円近くに来ると輸入業者や機関投資家、そして個人投資家などのドルを買いたい人や既にドルを売り持ちにしていて、ドルを買い戻したい人が増え、逆に112円近くに来ると輸出業者、そして個人投資家などのドルを売りたい人や既にドルを保有していてドルを売り戻したい人が増えて、結果として110.50から112.50の間に相場が停滞し、これをレンジ相場と呼ぶ。

この様な相場の膠着状態のことを"ボラティリティ-が低い。"と言うが、これは為替ディーラーにとっては死活問題となる。
(注:ボラティリティーとは相場の変動率のことである。)

為替ディーラーは相場が上がると思えばその通貨を買って暫く保持し、高くなってから売って利鞘を稼ぎ、相場が下がると思えばその通貨を売って暫く保持し、安くなってから買って利鞘を稼ぐのが商売である。

現在111.50の相場が112.50になると思えば10万ドルを今買ってそれを112.50で売れば10万円の利益を上げることが出来る。 逆に現在111.50の相場が110.50になると思えば10万ドルを今売ってそれを110.50で買い戻せば10万円の利益を上げることが出来る。

至極簡単な仕組みであるが、実際はそうは簡単に行かない。

現在111.50の相場が112.50になると思って10万ドルを今買ってその思惑が外れて111.00に下がれば5万円の損失となる。 現在111.50の相場が110.50になると思って10万ドルを今売ってその思惑が外れて112.00に上がれば5万円の損失となる。

まあ買うか売るかは自己責任であるからどうでも良いが、相場が動かないことにはどうしようもない。
利益チャンスが無いからである。

だから"ディーラー殺すには刃物は要らない。ボラティリティーさえ奪えばいい。"とよく言うのである。
言い換えれば"相場が動かなければディーラーは利益を上げる手段が無くてどうしようもない。"と言うことになる。

ところが勝手なもので"余り過度なボラティリティーも困る。"のである。

1月3日、フラッシュ・クラッシュと呼ばれた相場の乱高下をご記憶かと思うがあの朝午前7時過ぎ、ドル・円相場が僅か数十分の間に108円台から104円台まで凡そ4円近くも暴落し、その数時間後には3円近くも戻した。
あの時の値動きが余りにも早く、そして大き過ぎて流石のディーラーも付いていけず結構損失を被ったと聞く。だから自分が思った様に売買出来る程度の"適度なボラティリティー。"が欲しいのである。

さてこの低いボラティリティーの状態は何時か必ず終わり、再びボラティリティーが高くなる時が来るのだがそれが何時になるかは全く分からない。

個人的には
-Brexit.=(英国のEU.からの脱退。)が"合意無き脱退。"となればリスク回避の動きとなって、ポンド安&円高になる可能性が大である。

-来週から始まる日米通商交渉で為替問題が議題になれば円高になる。
と考えており、一言で言えば"イベント・リスクが増大すればボラティリティーが高くなり、結果として円高になる可能性が大である。"と思っているのだが、これはあくまでも筆者の個人的な意見である。

イベント・リスクを意識している間はイベントの結果次第で相場が動くので、評論家やアナリストが重視するファンダメンタルズ(経済的基礎要因)や中央銀行の金融政策などの分析は余り役に立たない。

もうこれはイベントが終わった後に動き出した方向に付いていくのが得策である。 要するにイベント後に相場が上がりだしたら一緒にくっついて買い、相場が下がりだしたら一緒にくっついて売るのだ。 そう、"長いものには巻かれろ。"戦法である。 その点、相場の動きに応じて戦略を変えるテクニカル分析は極めて有効な手段とも言える。

ひと月半前にご紹介した"ペンタゴンチャート。"などは強い味方と言える。
第178回「ペンタゴンチャート」

相場に王道は無い。

ある方向に一方的に動いている"トレンド相場"では上で言ったファンダメンタルズ(経済的基礎要因)や、中央銀行の金融政策などの分析が有効である。

現在の様にイベント待ちでその結果次第で相場が動く時は、テクニカル分析が有効であると思うのだ。

今はボラティリティーが低く、我慢の時である。
こういう時に下手に手を出してやられると中々その損失を取り戻せない。
"休むも相場。"の格言を忘れないでおこう。



酒匂隆雄氏プロフィール

酒匂隆雄 さこう・たかお

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表

1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。

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