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筆者は生牡蠣が苦手だ。小さい頃牡蠣で有名な広島で育ち、生牡蠣を食べられなくはなかったがあの『牡蠣臭さ』が嫌で、余り好きではなかった。

あれは娘が未だよちよち歩きの頃だからもう40年以上も前の話になるが、東京在住の為替仲間を横浜の有名なお店に招いて蟹やら牡蠣やら色々な海産物を沢山食べた後本牧の我が家に戻り、皆でウィスキーを飲み始めた。すると間もなく猛烈に胃が痛くなり息が出来なくなる程ひどくなった。

ばたんと倒れ、皆が「大丈夫か、大丈夫か？」と騒いでいるのが聞こえ、娘がちょろちょろ歩き回っているのがかすかに見えるが、どうしようもない。冗談ではなく「あ、俺は死ぬんだ。家族の為にもう少し沢山の保険に入っておけば良かった。」と咄嗟に思った。

余りの痛さに悶絶していたが救急車で近くの病院に運ばれ、医者から状況を聞かれて牡蠣を食べたと言ったら「ああ、それでしょう。只の胃痙攣です。疲れていたんじゃないですかね？」と言って、注射を打ってくれたが血管に注射針をぷすっと刺した途端に痛みがぴたっと収まった。医者が無表情に「胃痙攣を収める為にモルヒネを打ちました。」と言ったが、まあ驚いた。

もう何ともないではないか？

「先生、治りました。家に帰って飲み直してもいいですか？」と訊いたら「馬鹿なことを言ってはいけません。暫く安静にしていなさい。」と怒られた。

友人達の何人かは病院まで付き添ってくれ、何人かは家で待っていたが「飲み直しは後日にしよう。」と言うことになり、我が家での飲み会は延期となった。その数日後に新たな生命保険に加入し、既存の保険を増額した。

それ以来牡蠣を食べるのが怖くなり、他人が牡蠣を食べているのを見ることも嫌だった。

昨年の秋、友人が主催するゴルフ・コンペに参加し、その後の宴会を千葉で有名な鰻屋さんで行うことになり皆で押し掛けたが突き出しに大きな生牡蠣が出て来た。「わっ、生牡蠣だ！僕、食べられないんですよね。」と言うとお店の方が「ああ、うちの生牡蠣は特別の方法で殺菌しており、大丈夫ですよ。」と笑いながら答えた。

周りの皆も美味しそうに食べている。「よし、俺も。」と覚悟をして（？）食べたが、美味しい！あの牡蠣臭さが殆ど無い。『そうだ、俺生牡蠣大丈夫だったんだ。』と安心した。メインの鰻も大変美味しかった。

だがそれ以来生牡蠣を食べたことは無かった。

先週一緒にニュージーランド・ワインを輸入している友人から「大塚に我々のワインを買って下さる素敵なお店があります。ちょっと訪ねてみませんか？」とのお誘いが掛かった。

大塚？それ何処？

勿論行ったことも無い。聞くところによると大塚は池袋の隣駅らしい。まあ横浜からは東京の反対側になるな・・・。

そしてその大塚に出掛けた。思ったよりも賑やかな商店街を抜けて信号を超えたところにそのお店が在った。

お店の名前はカイミーオ。昨年の11月に新規開店したばかりの新しいお店で、イタリアン風のおつまみが出て来て名物はトリュフの入ったラーメンだと言う。その日は「素晴らしい生牡蠣がありますよ。」と言うので友人は四個注文して美味しそうに食べている。

筆者にも勧められたが「生牡蠣、駄目なんです。」と断ったのだが、友人が「これは美味い！」と言って新たに二個追加の注文をした。「そうだ、俺生牡蠣大丈夫だったんだ！」と思い出し、二個注文して食べたが確かに美味しい！

全然牡蠣臭くない。牡蠣って美味しいんだ・・・。

ワインも色々揃っている。勿論我がEscarpmentも置いて頂いている。

食べログで調べてみると、『昼は本格無化調ラーメン、夜はニュージーランド産中心のワインバーの店』とある。ニュージーランドから直輸入したと言うラムを使ったラム・チョップも美味しかった。ラーメンも美味しかった。

大塚の近くにお住みの皆さん、一度お試し下さい。未だ知名度が低くお店は空いている。美味しいです。

ワインはEscarpmentを飲んで下さいね。