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酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」 第167回
公開日:2018年12月04日

国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。

このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。

米中関係の今後

先週、注目の米中首脳会談が開催された。

米国は今年3月、通商法301条に基づいて中国の知的財産侵害への制裁措置を決め、500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課すと宣言し、中国も報復措置として同額の米国製品に25%の追加関税を課すと宣言して米中貿易戦争が始まった。

米中両国は何回か閣僚級会議を開催して追加関税の発動回避を探り、5月の2度目の協議でいったんは関税発動を棚上げすることで合意したが、トランプ大統領が直後にひっくり返し、結局米中は7月に340億ドル分、8月に160億ドル分に25%の追加関税を掛け合った。

その後もトランプ大統領は中国側に譲歩を迫るため、さらに2千億ドル分の中国製品に10%の追加関税を課す方針を決めて9月に発動し、中国も対抗措置として計600億ドル分の米国製品に5~10%の追加関税を発動した。

報復が報復を呼び、トランプ大統領は更に来年1月から2千億ドル相当分の中国製品に対して10%から25%に引き上げるとしていたが、今回の首脳会談で中国は貿易不均衡を緩和するために、相当量の農業、エネルギー、工業製品およびその他の製品を米国から購入することに同意し、米中両国は構造的な変化について交渉を始め、強制技術移転、知的財産、非関税障壁、サイバー攻撃、サービス産業や農業について議論し両政府はこの話し合いを90日以内に完了するよう努力をすることで合意した。

これを受けて取り敢えず最悪の事態は免れ、リスクオンが進むと見た市場参加者は月曜日早朝のシドニー市場で円を売り、ドル円相場は一時113.81まで上昇し東京株式市場でも株が買われて日経平均株価は一時先週末比+350円近くまで上昇したが、相変わらず114円台を目の前にしてドル円相場の頭は重い。

今朝の東京外為市場でもじわじわと円高が進み、お昼現在でドル円相場は113.30近辺で取引されている。

実はトランプ大統領は首脳会談で『もし90日で合意出来なければ関税を10%から25%に引き上げる。』と脅しており、今回の合意は『単なる一時休戦』の域を出ないものではなかろうか?

トランプ大統領は中国に対して通商問題の他にも知的財産権の侵害や南シナ海の軍事拠点化に対す懸念などの安全保障の分野で強い懸念を抱いており、『大事になる前に中国を潰しておきたい。』との野望が有ると考えてもおかしくはあるまい。

その布石は10月のペンス副大統領の対中国強硬発言からも読み取れる。

ペンス副大統領はワシントンのハドソン研究所でトランプ政権の対中政策に関し講演したが、その中身は強烈だった。

その骨子は、
‐米国の2017年の対中貿易赤字は3750億ドルで、全赤字の半分近くを占める。
‐『中国製造2025計画』により、官民あげて米国の知的財産を獲得しロボットやバイオテクノロジー、AIなど世界の先端産業の90%の支配を目論んでおり、その中には米国企業を買収することで先端的な武器の設計図などの技術を盗むことも含まれる。
‐陸海空、宇宙における米国の軍事的な優位を脅かし、西太平洋から米国を追い出そうとしている。
‐日本の施政権下にある尖閣諸島の周辺を恒常的に哨戒したり、人工島に対艦・対空ミサイル基地を建設した。
‐南シナ海で『航行の自由作戦』を展開中の米イージス艦の45ヤード以内に中国の軍艦が接近して危うく衝突しかけた。
と訴え、『邪悪な中国共産党』との戦いを国民に呼びかけたのだ。

実はこの対中強硬路線は政権野党である民主党の中でも支持者が多く、米国こぞって『中国叩き』が続く可能性は極めて高い。要するに事は通商問題に留まらないということである。

ご存じの様にトランプ大統領はSNSでよく呟く。

はっきり言って言いたい放題であるが奇妙なことに今回の米中首脳会談後に一切呟いていないのだ。

わざわざアルゼンチンまで行ってG20と米中首脳会談に出席し、自分が期待する成果が有ったのであれば間違いなく得意になって大ぼらを吹いたことであろうが、恐らく今回の会談が満足するものではなかったのではなかろうか?

これからの米中関係は通商問題のみならず、知的財産権、安全保障問題などにも留意する事が重大であろう。



酒匂隆雄氏プロフィール

酒匂隆雄 さこう・たかお

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表

1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。

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