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酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」 第161回
公開日:2018年10月23日

国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。

このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。

お勧めの便利物

11月3日(土)にアメジスト・香港さん主催のセミナーが開催される。前回は6月2日に開催されたので約5ヶ月ぶりのセミナーになる。今回もペンタゴン・チャートでお馴染みのエルビス川口さんと為替に関しての対談をさせて頂く予定である。

此処暫くゴルフや車の面白ネタばかり書いてきたので、今日はセミナーの予習を兼ねて少し真面目に為替の話をしてみたい。

ドル・円相場は前回のセミナー以来安値108.11、高値114.54の6円43銭の値幅に留まったが、一言でいえば110円割れではドルの買い手が多く、115円に近付けばドルの売り手が多いと言う感じであった。

2017年3月に115円を下切ってから4度115円をトライしたが何れも上切ることは無く、115円の上値のレジスタンス(上値抵抗線)が強く意識されている感じがする。

同時に今年3月に104.62まで短期的にドル安&円高がオーバーシュートした以外は108円前後がサポート(下値抵抗線)されており、108~114円が大まかなレンジの様に見える。

今年も残すところ約2ヶ月ちょっとなったが、これからのドル・円相場の展開を考えてみたい。

為替相場は常に動く物。

ドルの需要(買い手)が多ければドル・円相場は上がり、ドルの供給(売り手)が多ければ逆にドル・円相場は下がる。ドルの買い手は将来的にドルが上がると思ってドルの買い意欲を強め、ドルの売り手は将来的にドルが下がると思ってドルの売り意欲を強める。

先ずドルが上がる要因を挙げてみよう。
--好調な米国経済を背景にした金利の上昇。
米国の中央銀行であるFRBは今年既に3回利上げを行い、12月に更に1回の利上げを行うと思われている。それに対して我が国の中央銀行である日本銀行は物価目標の2%を中々達成出来ずにいて超緩和的な金融政策を続けなくてはならない。米ドルと円との金利差は開くばかりで自然に資金が円からドルに流れる=ドル高&円安となる。

--好調な経済は株価を押し上げ、ニューヨーク株式市場に資金が流入する。その結果、ドル相場も上昇する。
2月の米国発世界同時株安を熟した後ダウ平均株価はじりじりと値を上げ、今月初には高値26,828ドルを示現した。これは年初の24,824ドルから凡そ8%の上昇となる。その後ダウ平均株価は先々週25,052ドルまで急落したがその理由は後程解説しよう。

さて次にドルが下がる要因を挙げてみると、何とこれが枚挙に暇がない。

--燻ぶる米中貿易戦争の行方。
先週懸念された米財務省の議会宛の為替報告書で中国を為替操作国に認定する事は見送られたが"6カ月かけて再審査する"と中国へのけん制を強めており、依然として中国経済や世界経済の下振れリスクを意識せざるを得ない。

--日米通商協議の行方。
その為替報告書で日本についても触れ、日本に対して"巨大な貿易不均衡を引き続き懸念している。円相場は2013年以来、歴史的安値圏で推移している"と指摘して長期にわたる円安に強い懸念を表明した。

ムニューシン米財務長官が、日米物品貿易協定(TAG)に為替条項を盛り込む意向を示し、それに対して我が国政府は否定的な発言をしたが国際決済銀行(BIS)が算出する円の総合価値である実質実効レートは過去30年で最も安い水準にあり、1985年のプラザ合意前をも下回る。IMFも日米の物価をもとにした購買力平価では1ドル=99円程度が妥当だと試算しており、為替条項が謳う"市場に基づく為替レートの達成と維持"の文言に抵触していると言えなくもない。

トランプ政権も実質実効レートを注視しており、4月の為替報告書で中国とともに日本を監視リストに入れ、円が大きく下落している状況を指摘した経緯もあり、来年初から再開される日米通商交渉で為替条項が盛り込まれる可能性は高い。

--中東情勢の混乱。
トルコでのサウジアラビア人ジャーナリスト失踪問題に関してサウジアラビア王室の関与が疑われ、欧米諸国のサウジアラビアに対する制裁が検討されている。

米国製武器の大口バイヤーのサウジアラビアに対してトランプ大統領は"事を荒げたくない"感が見え見えであるが、もしサウジアラビアに制裁が科されれば原油供給が減少し、エネルギー価格の上昇を招くとの懸念が有る。米中貿易戦争の行方とも相まって世界経済の下振れリスクを加速させる恐れが有ろう。

--米中間選挙の行方。
先々週行われた米南部アラバマ州の連邦上院補選で野党・民主党候補が僅差で勝利した。此処は現与党である共和党が20年間議席を独占した牙城であり、俄かに11月6日に行われる中間選挙で共和党が敗北する可能性が指摘され始めた。既に下院では共和党劣勢が伝えられ、実際に敗北したら上下院のねじれ現象は間違いなくトランプ大統領にとって厳しい議会運営を強いられることになろう。

--相変わらずのトランプ大統領の大統領としての資質に対する不安。
週末、トランプ大統領が冷戦時代に旧ソ連との間で結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱する意向を表明し、条約締結を受けて撤廃された中距離ミサイルの再開発に着手すると示唆した。

米国はかつてよりロシアが合意事項に反して中距離核戦力を開発し、欧州諸国の安全を脅かしていると非難してきた。米国だけが条約に縛られて身動きが取れない一方、中国とロシアは核戦力を増強しているとして不満を募らせており、かつて米国が保有していた海洋発射型の核巡航ミサイル"トマホーク"の後継ミサイルの開発を仄めかしたがこれは中露両国の反発を招くことは必至で米露だけではなく中国をも巻き込んだ新たな軍拡競争に発展する危険がある。

--昨日トレード・トレードで紹介されたニューヨーク在住の若林さんの紀行文『Flying back Japan』でも指摘されていたが、ダウ平均株価の下への調整を懸念する動きが出始めた。

上でダウ平均株価は先々週25,052ドルまで急落したと述べたがこれは金利上昇が背景に在る。FRBによる利上げによる米短期金利上昇に伴って長期金利も上昇を始め、10年物債券の利回りは年初の約2.4%から今月約3.2%まで上昇している。

金利が上昇すると投資家の調達金利も上昇する訳で株式投資への意欲を殺ぎ、株価は上がらない。或いは処分売りが出ると株価は下がる。

と述べるとドル下落材料が目白押しでドルが直ぐに下がっても不思議ではない気がするが、ところがどっこい相場はそう簡単な物ではないのだ。それはドルの買い手は金利差を狙ったり株価上昇を望んで所謂実需(注:実需=輸出入や資本取引などの商取引において日々発生する需要に基づいて実際に行われる為替取引)と呼ばれる行動を起こすが、現在のドルの売り手は上に挙げた要因を考えながら"事が起きたらドルを売ろう!"と所謂投機的な意識を持っているドル売り予備軍でしかない(と思う)。

さあ、これからどうなるでしょうか?

セミナーの対談でのエルビス・川口さんとのやり取りをご期待下さい。

あ、それと何時もの様に真面目な(?)セミナー後の懇親会での大抽選会に賞品としてEscarpment Wineを6本ご提供しましたので是非ともゲット為さって下さい。



酒匂隆雄氏プロフィール

酒匂隆雄 さこう・たかお

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表

1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。

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