
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
先週、Fairnessについて述べ、日大アメフト選手の危険なタックルに対して苦言を呈したが、どうやら文句を言う相手を間違えていたみたいである。
最初は危険なタックルをした選手をスポーツ精神に悖るとんでもない奴かと思ったら、全然違うではないか。未だ子供と言ってもいい二十歳の学生が独りで(今回は弁護士が付き添っていたが、ほとんどの発言は本人が行った。)数十人の記者を前にして堂々と事の顛末の話をした。
本人は相当優秀な選手で将来を嘱望されたらしいのだが、どう言う訳か監督から練習を干されたり、全日本代表を外されたりなどの嫌がらせ、或いはパワー・ハラスメント(?)を受けてどんな気持ちでいただろうか?
痛々しかったのは「幾ら監督やコーチの指示があったとしても、選手としてやってはいけない事があります。それをやってしまった自分が悪いんです。」と他人のせいにするでもなく、自分が責任を取ろうと怪我をさせた選手に謝罪の誠意を見せる為にも是非とも顔をちゃんと出して釈明したかったと言う。
思わず泣けてしまった。
それにしても、そう、それにしても翌日行われた監督とコーチの記者会見はまあ腹が立った。
監督は「自分は指示をしてない。」と言い、コーチや学校は「潰せ!」と言うのは選手を鼓舞するための激励で怪我をさせろと言う意味ではないと嘯く。
嘘つけ!「相手のQBが怪我して秋のリーグ戦に出られなければ楽になるだろう。」と言ったではないか。
まあしどろもどろの保身を目的とした会見で誰が見ても『こいつら、黒だな!』と感じさせたが、もっと面白い、そう面白い事が記者会見中に起きていた。日大の広報係と言うじーさんが司会役を務めていたのだが、記者が同じ様な質問をするのに切れてしまって、「止めて下さい。同じ質問をしないで下さい。」と記者の質問を遮ろうとする。
記者も負けていない。
記者:「きちんとした返事が無いから同じ様な質問をせざるを得ないんだよ。」(その通り。)
じーさん:「これだと何時間掛かるか分からない。」
記者:「この会見は皆んな見てますよ。」
じーさん:「見てても見ていなくてもいいんです!」
記者:「あなたの発言で日大のブランドが落ちるかも知れないんですよ。」
じーさん:「落ちません!」
もう呆れて笑ってしまった。記者会見場でも失笑が漏れていた。
この場面は多くの人が見ただろうが、もっとあった。記者会見が終わって納得のいかない記者がコーチを追っ掛けて同じ様な質問をしていたら、壇上では神妙な顔をしていたコーチが切れた。
--もういいだろう!
--出て行けや!
--勝手に撮るなよ!
--どうして写真を撮る義務があるんだよ!(これ、どうしてこんな権利があるんだよ、の間違いじゃないんけ?)
どうやらこのご仁は『義務=人が人として、或いは立場上当然しなければならないこと。』と『権利=ある利益を主張し、これを享受する事の資格』の意味を逆に理解しているらしい。言いたかったのは「どうしてあんたにこんなにしつこくする権利があるんだよ?」であろうが、どうやら日本語を間違えちゃったらしい・・・。
わははは!
毎日新聞社が緊急アンケートを行って、監督とコーチ、そして学校側が行った説明に納得したか否かを問うたところ、
--納得しない=82%
--納得した=1%
--分からない=17%
の結果が出たらしい。まあ、真っ当な結果でしょうな。
この問題は第三者委員会や、恐らく司直の手に委ねられて真相が明らかにされるのであろうが、まあ日大さんは危機管理能力の欠如を露呈しましたなあ。
日大には危機管理部と言う学部があるらしい。
皆さん、一度自分の学校の危機管理部に入って勉強し直した方が良いんじゃないですかね?

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
