
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
先週、もう15年前くらいの高松市での出来事を書いたら沢山の方々から「面白かった。」と言う有り難い(?)お言葉を頂き、また準主人公のS氏からも「もっと他の逸話も書いて下さい。」との励まし(?)を頂いて、また書くことにした。
こりゃあ、偶に書く為替の話よりも評判いいぞ!ところで例のA社の話は昨年の夏に書いていたことを思い出しました。
> 歳を取ると丸くなる?
さて今回の話にも再びS氏が登場する。
これも高松市事件と同じくらいのタイミングであったのだが、あの頃よく地方に出掛けて講演をした。依頼主は勿論S氏である。
S氏は太っ腹で飛行機での移動はJ-Classで新幹線での移動はグリーン車。そして行く先々では当地では一番上等の宿をアレンジしてくれた。
今回は仙台市。宿の名前は忘れたが、仙台で一番有名な大きな温泉宿に泊まる事になった。講演は午後4時頃に終わり、宿に着いて食事の前に皆で温泉に入ってひと風呂浴びようと言う事になった。筆者には一人で泊まるには勿体無い様な大きな部屋に通され、貴重品を部屋の金庫に入れ浴衣に着替えて大浴場に行った。
既に結構な人数の客が入浴中であったが、何人かは既に酩酊している様子であった。『へーー、皆いい気分なんだ。』と思いながら脱衣籠に金庫の鍵、そして部屋の鍵を置き、その上に先ずパンツを置き、そしてその上に脱いだ浴衣を置いた。
これ普通でしょ?
ところが、ざっと見るとどの籠も同じ浴衣が一番上に乗っており、中々見分けが付かない。勿論自分の籠の番号は覚えていますよ!
自分が鍵やパンツ、そして浴衣を入れた籠の番号が10番だったとしよう。湯を浴び、頭を洗い身体を拭いて籠の所に行ったら10番の籠が空になっている。
ん?
9番や11番の隣の籠には勿論同じ形の、同じ色の浴衣が入っているが10番は空だ!
その時は何が起きたか分からず、バスタオルを身体に巻いて腕を組んで『どうしたものか?』と思案していると、少し離れたところにあった露天風呂に入っていたらしいS氏が同じ様にバスタオルを身体に巻いて此方に小走りで来るではないか?
「どうしたの?」と聞いたら、「パ、パンツ盗られたんですよ。パンツが無いんですよ!」と偉い剣幕で怒っている。
「えーっ、俺も同じなんだよ。俺のパンツも無いんだよ。しかも部屋の鍵も金庫の鍵も無いんだよ!酔っぱらいの誰かが間違えやがったな?」と言ったらS氏が「金庫の鍵もですか?それはやばい。」と言ってフロントに電話をしてくれた。
細かい事は忘れたのだが、結局誰も部屋には入っておらず、勿論金庫も開けられた形跡は無かった。
で、どうしたか?
二人分の浴衣を持って来て貰い、それを羽織って二入とも所謂フル..の状態で部屋に帰りましたよ、「怪しからん、許せん!」と叫びながら。
女将の言うには酔っぱらったお客さん(二人もですよ!)が間違えて筆者とS氏のパンツと浴衣を着て部屋に帰り、当然自分の部屋には入れないからフロントに届けて事の次第が判明した。
女将は同じグループの二人が同じ目に遭ってパンツを盗まれた事を物凄く恐縮して(そりゃそうですよね、一番高い部屋に泊まっている上客ですからねえ..)「誠に申し訳有りませんでした。弁償致しますので盗られた下着(パンツとは言わなかったな。)のブランド名を教えて頂けますか?」と恐る恐る言う。
まさか「クリスチャンディオールの絹製のトランクスです。」と嘘を付くわけにも行かないし、金庫から何か無くなった訳でもなしで、「いえいえ、安物のグンゼのパンツですから結構です。」と言ってお断りした。
実は盗られたのはBVDのトランクスだったのだが・・・。
ところで、間違えて筆者のパンツを穿いて部屋に帰った酔っぱらいはどうしたんだろうか?他人のパンツを穿いているのに気付いて、「しまった!」と思っただろうな、ざまー見ろ。
その後も何回かS氏と温泉旅館に行ったが、必ずパンツは脱衣場にある小さな金庫に入れて、お互いに「これで大丈夫だね。」と確認する事にした。
これは冗談の積りでやっていたのだが、本当の話です。
脱衣場に金庫が無い場合は、先ず浴衣を脱いでその上にパンツを置くことにした。そうするといくら酔っていても、まあパッと目の前にある他人のパンツを間違えて穿く事は無いですからね。
これでパンツ事件はめでたく終了したのだが、その後の宴会でも置き去り事件、そして牛タン事件と続くのだが、NHK大河ドラマ・せごどんのナレーション役の西田敏行ではないが、
『今宵はここら辺で良かろうかい。続きは来週にでも書いてみようかい。チェスト!』

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
