
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
11月第三週の木曜日はボジョレー・ヌーボーの解禁日である。今年は明後日の11月16日がそれに当たる。
ボジョレー・ヌーボーはその年に採れたガメー種と言われる赤葡萄を発酵させた早飲みタイプのワインでフランスでは『これで秋が来た』と祝う。
実は我が国にワイン・ブームが起き始めた1980年代の終わり頃に、このボジョレー・ヌーボーが大流行りに成った。このボジョレー・ヌーボーは『11月第三週の木曜日の解禁日までは飲んではいけない』と言う掟が有るらしく、時差の関係でまあ世界で一番早く(オセアニアを除いて)飲める日本が脚光を浴びて、酷い時には11月第三週の木曜日の解禁日の午前0時にフランスから着いたばかりの飛行機の中で大騒ぎをして栓を開けていた。
昨日来た2017年のボジョレー・ヌーボーにも"11月16日午前0時以前の販売・消費厳禁"と書いてある。
はいはい、分かりました。
酒飲みの筆者に『11月16日まで待ちなさい』と言うのは酷でありますな。但し迷惑を掛けたくないので『はいはい、分かりました』とでも言っておこう。
先週ハロウィーンの話をして何となく『影響を受け易い日本人』を多少揶揄したが、このボジョレー・ヌーボー騒ぎも似た様な物だったのだろう。流石に最近はほとぼりが冷めて輸入量がピーク時の2004年から半分以上減ったらしい。実は此処だけの話だが、本場フランスではこんなに騒がないし、1本数千円も払わない。
ではボジョレー・ヌーボーは安くて余り美味しいワインではないか?
実はそうでもない。
ガメー種は他の代表的な赤葡萄のカベルネ・ソーヴィニョン、ピノ・ノアール、メルロー、そしてシラーの様にワインに成ってから熟成しない。要するに、長く置いておいても『そんなに、美味しくならないから早飲みしましょう』と言うワインなのである。
では11月の解禁日から時間が経つと不味くなるか?
実はそうでもないのである。
筆者は毎年1ダース(12本)同じボジョレー・ヌーボーを購入しているが毎年数本残して数年後に飲むようにしている。
よく知ったかぶりをして『ボジョレー・ヌーボーは早のみだから直ぐに美味しくなくなる。』と言う人が居るが、あれは偏見である。ちゃんとした古木から採られたガメーを使ったボジョレー・ヌーボーは5年、6年経ってもちゃんと熟成していて美味しい。Blind tasting(ラベルを見せないでワインの素性を明かさないで飲み比べる)をすると「えっ、これがボジョレー・ヌーボーなんですか!」と多くの人が驚く。
大体5年くらいで飲み切る事にしているので現在の在庫は2013年からの物であるが今年も2013、2014、2015、2016、そして今年の2017と立て飲み(同じワインを年代=ヴィンテージ毎に飲み比べる)をしてみることにしよう。
秋に成ると日本酒のひやおろし、そしてワインはボジョレー・ヌーボーが出て来て嬉しいな。8月生まれの夏男である筆者は、日の出が遅く、日の入りが早くて、何となく薄ら寂しい秋から冬に掛けての風情が嫌いなのだが、呑兵衛としては嬉しいのであります。
さあ、飲もう!(ボジョレー・ヌーボーは明後日迄待つんですよ!待つと思います?)

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
