
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
雅(みやび)をウィキペディアで調べてみると『雅(みやび、まさ〔名乗り〕)とは、上品で優雅なこと。宮廷風・都会風であること。風采の立派なこと。』とある。
先日、正にこの雅とも言える珍しいものを見せて頂く機会が有った。
筆者の友人が代表取締役を務める会社が創立50周年を記念して、あるホテルでパーティーを開いたのだが、その催しとして京都・祇園に伝わる慶事の伝統儀式『手打』と、地元赤坂の芸者衆よる『祝舞』を見させてくれた。
この友人(未だ若くて50歳ちょっと上)は大変粋な男で京都の祇園、そして赤坂の花柳界では結構有名だ。今までにも何回か京都の祇園や赤坂で珍しい体験をさせてくれた。赤坂の事はよく知らないが京都は『京都をよく知った人』と一緒でないとどうにもならない。別に悪口を言うつもりは無いが、よそ者に冷たい。
料亭や茶屋のみならず、おでん屋さんでさえ一見の客はお断りである。馴染み客に連れて行って貰わないと入れない。友人は色々な処で大変な『お馴染みさん』らしく、何処へ行っても「〇ちゃん」と名字の最初の漢字一文字で呼ばれる。たとえば名字が山本なら「山ちゃん」と言った具合である。
そして奇妙なことに、彼が勘定を払うのを見たことが無い。
そう。全て『ツケ』なのである。
料亭での食事代はおろか芸妓はんの花代、そして料亭から祇園の飲み屋までのタクシー代まで全てツケなのだ。後から請求書が来てそれに払い込むらしい。
どうしてそれが出来るか?
それは永年の客と料亭、或いは飲み屋との信頼関係なのだろう。そしてその信頼関係を築くのに相当な時間と財力を費やしているのだろう。このツケの習慣を見ると『一見さんお断り』の理由が分からないでもない。
筆者はこの友人に連れられて京都の祇園に何回も連れて行って貰ったことがあるが、芸妓はんの記憶力には舌を巻く。今回も何人もの芸妓はんから「お久しゅうおす。」(これでいいのかなあ?)とか、「毎度、おおきに。」と挨拶を受けた。写真は何回か会ったことのある豆千鶴ちゃん。あれ、嬉しいものですな。
今回のパーティーは約100人くらいのお客さんを呼んでの楽しいものであったが、帰りに頂いたお土産を見てびっくり仰天した。なんと、最高級シャンパンメーカーであるアンリ・ジローのフュ・ド・シェーヌであった。大体この様な『創立何十周年』と言う様なパーティーのお土産は紅白饅頭(古いか?)と『弊社50年の歴史』とかの『どうでもいい物』が多いではありませんか?
そうではなくて『普段は滅多に買えない高級シャンパン』をお土産にくれるなんて、やはり主催者の粋な様を表していると思う。久々に楽しいパーティーに出席出来て、大変幸せであった。
さあ何時フュ・ド・シェーヌを飲もうかなあ?

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
