
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
先週水曜日の8月30日に『まだまだ老けていられないよ!古希祝い、誰がジジィだふざけんじゃねーコンペ』と言う、仰々しいけれでも面白い名称のゴルフ・コンペにお招き頂いた。
恥ずかしながら8月8日に古希を迎え、またその前週の8月1日付の『遊楽三昧』が100回であったので、トレードトレードの方から「遊楽三昧100回記念と古希のお祝いを一緒にやっちゃいましょう!」とお祭り好きの筆者が喜びそうな(?)お申し出を頂き、基本的にはゴルフは止めた筆者でさえどうして断れましょうや!
2組8人のメンバーは昔からお世話になっている方々ばかりで、わいわい騒ぎながらの楽しいゴルフであった。ダブルペリアで決めたハンディキャップが幸いし、心ならずも2位の栄誉に輝いて賞品の『獺祭の純米大吟醸酒』を頂いた。
因みに1位の賞品はドンぺリであったが『獺祭の純米大吟醸酒』の方が良かったなと言うのは負け惜しみである。
プレー終了後、月島に場所を移して表彰式及び宴会を『ベジ&バード』と言う洒落た焼き鳥屋さんで催して頂いた。後日、プロのライターがプロの写真家が撮られた写真と共に記事になさるそうなのでお楽しみにお待ち下さい。
さて、先週は北朝鮮が火曜日にミサイルを4発発射し、多くの都道府県でJアラートが鳴って人々を震撼させた。また、日曜日には核実験を強行して、彼等に言わせると大陸間弾道弾(ICBM)搭載用の水素爆弾に実験に成功したとの事で、再び緊張が走った。
8月21日から31日まで米韓の軍事演習が行われており、これに対抗して北朝鮮が何らかの挑発行動を起こすことは予期されてはいたが、実際にそれが起きるとそれは大混乱になるのは必定である。
29日のミサイルは北海道上空を通過して約2700キロ飛行して太平洋に落下したが、北朝鮮が予告した米領グアム沖への発射を想定した実践演習と見られているが、軍事基地があるハワイやグアムを巧みに避けて米国への無用な刺激を避けた節がある。
我が国政府は『動きは把握していた。』と言うがJアラートが鳴って『あ、大変だ!どうしよう?』と慌てふためいている間にミサイルは既に飛び去った後だと言うのは何とも切ない。
やはり怖いのは9月3日の核実験である。
北朝鮮は実験後に『この爆弾は核電磁パルス(EMP)攻撃を行う事が出来る』と公言したが、これは怖い爆弾である。我々は唯一の原爆被爆国として広島と長崎の惨状については知っているが、この原爆の被害は地域的に限られていた。
ところが、電磁パルス弾(EMP)はその強力な電磁波によってほとんどの電子機器を使用不能にすることが出来て、当然停電が起き、車は走行不能となり、飛行機は飛べない。要するにインフラが壊滅して通常生活が出来なくなるのである。
多くの建物が水道水を一旦屋上に上げて水の下降圧力で給水しており、停電すれば水も止まる。停電して水も無ければ我々の生活がどうなるかは一目瞭然である。考えるだけでも恐ろしい....
これ等のニュースを受けて金融市場は混乱した。
株式市場は今週になって160円下げ、為替市場では円高が進み一旦110円台を回復したドル円相場は今日は109円台のLowで取引されている。
株価が下げるのは理解出来るが、北朝鮮発の地政学的リスクの増大(日本にとっての脅威の増大)で何故円が高くなるのが理解できない方も多かろうが、これは
・投資家がリスクを取るのを控えて新たな資産購入(円を売る)を控える。
・同時に既に保有しているリスク資産(円を売って買っている外貨資産)の圧縮を図り、円を買い戻す。
などが考えられるが、この動きが一服すると地政学的リスクの増大(日本にとっての脅威の増大)を意識して今度は円安が進む可能性も否定出来ない。筆者は最悪の事態(北朝鮮と米国の本格的な軍事衝突)は起きないと思っている、いや起きて欲しくない。
その理由は金正恩、そしてトランプ大統領共に最悪の事態が起きた場合のリスクを理解しているだろうからである。金正恩のリスクは北朝鮮が壊滅する事であるが、米軍が本格的な軍事行動を起こせば数日でそうなる可能性が高い。
トランプ大統領のリスクは、北朝鮮が壊滅する前に韓国、日本、そしてもしかしたら米領に地上兵器やミサイルを含めた反撃を行うことである。韓国内には数十万人の米国人とその数倍の外国人が居住しており、その人達を犠牲にする覚悟での攻撃は難しかろう。
結局、金正恩とトランプ大統領がチキンレース(どこまで、ぎりぎり物事を我慢できるかによって度胸の良さを競い合う行為)を続けており、もう暫くこの状態は続くであろう。
まあ我々は我慢するしかありませんなあ・・・

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
