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何時、レンジが崩れるか?|為替ランドスケープ 2021年9月号
公開日:2021年9月01日

何時、レンジが崩れるか?

依然としてドル・円相場が109円~111円のレンジ内に留まり、大きな動意が見られない。

此処2ヶ月の相場の推移を見ると111円を上切ったのは7月月初の2回だけ、109円を下切ったのは8月月初の2回だけで110円を挟んでのレンジ取引が続いている。


(7月からのドル・円相場の日足・ローソク足チャート)

為替相場と言う物は市場の需給で決まり、買いたい人が多いと相場は上がり、逆に売りたい人が多いと相場は下がる。

買いたい人も高いところでは買いたくないし、売りたい人も安いところでは売りたくない。

結局相場が110円近辺に収斂するのはこのレベルが買いたい人にも売りたい人にも現状では心地良いからなのだろう。

奇しくも今年は1971年にニクソン・ショックが起きてから丁度50年経った。

ニクソン・ショックを機会に円は1ドル=360円から308円に切り上げられ、翌1972年には変動相場制に移行してその後は円の上昇が続き、ニクソン・ショックから40年後の2011年に円は史上最高値の1ドル=75.32を記録した。

筆者は1972年から為替に携わり、ドル円相場が1ドル=308円からの推移を見てきて昔は一日に9円近くも動く様なダイナミックな相場を経験したが、今から思うと夢のまた夢である。

決して昔の様なボラタイル(価格変動が大きい。)な相場を望んでいる積りは無いのだが、程々のボラティリティー(価格変動の度合い)が有った方が利益チャンスが大きいのは当然である。

昔から、"ディーラー殺すには刃物は要らない。ボラティリティーさえ奪えば奴らは直ぐに死ぬ。"と言ったものだが、正にその通りである。

泣き言を言うと現在のドル・円相場の様にレンジ内に留まってボラティリティーが低下すると当然相場の動きも緩慢となり、上がると思って買っても中々上がらなくてイライラし、下がると思って売っても中々下がらなくてイライラしてストレスが溜まり、甚だ精神上宜しくない。

"109円~111円のレンジだと思っているのなら109.50近辺に下がれば買って、110.50近辺に上がれば売っていれば儲かるだろう。"とのご意見も有ろうが、人間弱いもの(いや、欲張りなものかな?)109.50迄下がれば"よし、やっと来たか、未だ下がって109円を割るな?"と思って"えいや!"と売り、逆に110.50迄上がると、"よし、やっと来たか、未だ上がって111円を上切るな?"と思って、"えいや!"と買ってしまうのである。


(※画像クリックで拡大します)

これが悲しきディーラーの性かも知れないな。

つい本音の泣き言を呟いてしまったが、今暫くはこの心地良い109円~111円のレンジ相場が続くのかも知れない。

現在の市場の最大の注目点はFRBによるテーパリング(量的緩和策による債券購入額を順次減らしていくこと。)が何時始まるかであるが、FOMC=(米連邦公開市場員会)議事録や先週ワイオミング州・ジャクソンホール開催されたシンポジュームでのパウエルFRB議長の講演内容などから推し量ると、どうやら年内に始まりそうであり、そうなると長期金利上昇と共にドル・円相場も底堅く推移しそうに思われるが、此処にきて大きな問題が立ちふさがった。

そう、アフガニスタン情勢の悪化である。

米軍は宣言通り8月31日をもってアフガニスタンからの撤退を終えたが、それに先立ってのイスラム過激派による自爆テロとそれに対する米軍の報復爆撃は米軍撤退だけでは決して終わらない問題の深さを浮き彫りにした。

そもそも今回の米軍撤退は同盟国である英国、フランス、そしてドイツとの綿密な協議の下ではなくある意味唐突に行われてこれらの国々だけではなく、サウジアラビア等の親米国に"何か起きた場合にアメリカは本当に助けてくれるのだろうか?"との猜疑心を抱かせ不信感を募らせた。

これはバイデン政権の外交上の失敗であり、更に自爆テロによる13人もの米軍兵士の死が共和党贔屓のアメリカ国民の怒りを買い、支持率は急落した。

不味いコロナ対策で国民の支持を失った何処かの首相とよく似ている。

バイデン大統領は国民向けの演説で、自爆テロを起こしたISISに対して"We will not forgive. We will not forget. We will hunt you down."=(絶対に許さない。絶対に忘れない。お前らを必ず追い詰める。"と宣言し、その宣言通りすかさず2回の空爆を行って首謀者と次のテロを狙っていた容疑者を殺し、"これが最後ではない。"と言い切った。

懸念されるのは自爆テロに対する報復、その報復に対する報復、そしてそれへの報復と負の連鎖で報復合戦が始まる事である。

これはアフガン地域での地政学的リスクの増大を意味する。

又上で述べたアメリカのバイデン政権に対する不信感の増大は基軸通貨である米ドルへの不信感にも繋がる。

地政学リスクの増大はリスク・オフを招く。

リスク・オフと言えば投資家がリスクを取ることを逡巡し、既存の債権の圧縮を図り、新規投資を控えると言うのが一般的な概念であり、リスク・アセットの株を売り(株価下落)、安全資産である米国債券を買う。(米金利低下)

リスク・オフ時の常でドルと円が買われる傾向が強いが、今回のアフガニスタン情勢は金利低下と共にドルにとってネガティブであろう。

ドルが上がらないで円が強くなればドル安&円高となってドル・円は下がるではないか?

と言う事で、テールリスク(市場において、ほとんど起こらないはずの想定外の事象が実際に発生するリスクの事。これは、通常、確率的には極めて低いものの、発生すると非常に巨大な損失をもたらすリスクのことを言う。)とまでは言わないが、現在のぬるま湯の様なレンジ相場を大きく打ち破る不確定要因として、アフガニスタン情勢を挙げておきたい。



酒匂隆雄氏プロフィール

酒匂隆雄 さこう・たかお

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表

1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。

トレードトレードブログ:
酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」

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