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ゲーム・チェンジは起きるか?|為替ランドスケープ 2021年2月号
公開日:2021年2月01日

ゲーム・チェンジは起きるか?

すったもんだ(?)した後、ようやく民主党バイデン氏が第46代米国大統領に正式に就任した。

異例の前大統領が出席しないままの就任式が行われたが、懸念された首都ワシントンでの騒ぎも殆ど起こらず、株式市場では祝賀ムードに包まれているかの様に株価が堅調に推移し、連日ニューヨーク株式市場で3指数が史上最高値を更新してドル・円も104円を中心とした穏やかな相場展開の中、1月最終週に入って突如大混乱が起きた。

その発端は"ゲーム・ストップ"と言う名も知れないアメリカのビデオゲーム小売りチェーンや映画館運営会社のAMC.エンターテインメント・ホールディングスなどの銘柄の高騰である。

"ゲーム・ストップ"の株価はヘッジ・ファンドの空売り攻勢に遭って永らく19~20ドル近辺で低迷していた。

そこへ個人投資家がSNS.(交流サイト)のチャット・サイト上で団結して、"ゲーム・ストップ株のコール・オプション(株を買う権利。)を買おう。"と呼び掛けた。

現物株の買いと違ってコール・オプションの買いはプレミアムを支払うだけで比較的個人投資家も安く買うことが出来る為に買いが殺到し、コール・オプションを売却した証券会社などのヘッジの現物買いが入り、週明けの26日には株価が148ドルまで高騰した。

その勢いは止まらず、翌27日には高値347ドルまで高騰して空売りをしていたヘッジ・ファンドが巨額の損失を被り、損失補填の為に仕方なく手元の利が乗った他の株を売る必要に迫られて3指数共に2%を超える下げを誘う事となった。

個人投資家集団がプロのヘッジ・ファンド集団を打ち負かしたのである。

この"ゲーム・ストップ"の株価の急騰と3指数の急落に驚いた個人投資家集団にオンライン取引プラットフォームを提供するスマートフォン専業証券"ロビンフッド"といった、インターネット証券大手が相次いで"ゲーム・ストップ"などの乱高下した銘柄の株式などの購入停止措置を導入したり取引証拠金の引き上げを行った為に28日には一時高値483ドルを付けた"ゲーム・ストップ"の株価は155ドルまで急落し、3指数は前日の下げの半分の凡そ1%を戻すこととなった。

ところがである。

この措置に対して個人投資家集団のみならず政治サイドからも異論が出て29日にインターネット証券が一転して購入停止措置を緩和したところ、"ゲーム・ストップ"の株価は328ドルまで急反発し、3指数は揃って凡そ2%以上の下げで週を終えることとなった。

3指数は27日に2%下落、28日に1%戻し、29日には再び2%下落して3日間で3%下落して、まるでドタバタ劇である。

1月6日のジョージア州での補欠選挙で民主党が共和党から2議席奪取して、大統領、そして上下院とも民主党と言うトリプル・ブルーとなり、大規模財政支出期待と金融緩和政策継続で堅調な株価の動きが続くと思われた株式市場に突然横槍が入った感が有る。

"ゲーム・ストップ"のなどの名も無い銘柄の株価高騰が引き金となった株式市場の変調が"ゲーム・チェンジ"=(今迄の堅調な地合いがベア・トレンドに変化する。)の引き金となるのか?(詰まらない駄洒落である..)

ドル・円相場はこのドタバタ劇が始まるまでは103円台で静かに推移していたが、株価の下げと共にリスク・オフとなってドル高の展開となり、上値抵抗線と見られていた90日移動平均線の104.35辺りを上切ると損切りを含めたドル買いが先行して高値104.94を示現した。


(ドル・円日足ローソク足+90日移動平均線)

テクニカル上の上値抵抗線であった104.35を上切り、このまま株価の調整と共にリスク・オフが続いてドル・円も高値をトライするかと思われたが、よく考えたら今までの株式相場の上げを引っ張ってきた大規模財政支出期待と金融緩和政策継続には変化は無い。

短期的な調整後、株価は再びブル・トレンド(上昇トレンド)に戻るものと思っている。

言い換えれば株価下落によるリスク・オフのドル高は長続きせずレンジが多少上にずれたものと考える。

暫くはニューヨーク株式市場の動きから目が離せない。

ところでもう一つ気になることがある。

それは昨年の大統領選挙を境に鳴りを静めていた米中関係のことである。

今回の米大統領選挙のごたごたを中国がほくそ笑んでいたことは間違い無いし、アメリカの政権移譲の空白期間を利用して中国が東アジアの覇権のイニシアティブを取ろうと画策しているであろうことは目に見えている。

そんな矢先、1月23日に中国軍の戦闘機など計13機、24日には戦闘機、爆撃機や対潜哨戒機の計15機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入する事件が起きた。

米国務省は23日に"台湾が十分な自衛能力を維持するよう支援していく。"との声明を公表したが、米中関係の焦点の一つである台湾問題で、バイデン政権がトランプ前政権の強硬路線を引き継ぐか注目される。

焦点の一つであると述べたのは、他にも懸念事案として香港問題と新疆ウイグル自治区の人権問題が存在するからだ。

これらに関しては米議会内で共和、民主を問わず対中強硬路線を敷くことを許容しており、バイデン新大統領もその方針を踏襲することは間違いなかろう。

ところで、我が国にとっても中国の動きは大いに気になるところである。

先週終わった我が国の国会とも言える中国全人代で、我が国の固有の領土である尖閣諸島領海内に侵犯を繰り返す海警局の船に対して火器の使用を認めた。

今まで何回か尖閣諸島の領海内で操業中の我が国の漁船を海警局の船(公船と呼ばれている。)が追い掛け回し、我が国の海上保安庁の巡視船が中に割って入るという事態が起きたが、今後漁船や巡視船に対して発砲する事も考えられる。

そうなった場合、海上保安庁の巡視船は反撃するのであろうか?

先週、我が国の岸防衛大臣が就任したばかりの米国のオースティン国防長官と、バイデン政権発足後、日米の閣僚同士による初めての電話会談を行い、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条は沖縄県・尖閣諸島にも適用され、同諸島での日本の施政権を損なおうとする"いかなる一方的な行動にも反対する。"ことを確認したが、これは中国海警局と我が国の海上保安庁との衝突の可能性とは次元の違う問題である。

先週は一部の株価の乱高下のせいでニューヨーク株式市場が波乱の展開となったが、次のニューヨーク株式市場のみならず世界の金融市場の波乱の要因となる可能性としては中国発の地政学的リスクの勃発の可能性が挙げられまいか?

もし再び株式市場が変調をきたしたら、言い換えれば株価に大きな調整が起きた場合の為替相場の次の動きがイマイチよく分からない。

為替市場の反応が先週も見られた"リスク・オフのドル買い"=(リスクを取りたくないので、安全資産のドルを買う。)"になるのか、或いは逆に"リスク・オフのドル売り"=(リスクを取りたくないので、米中問題の片割れである米国の通貨のドルを売る。)になる可能性も有るのか?

この地政学的リスクの発生が今日明日にでも起きる可能性は甚だ小さいと思われるが、重大なリスク要因として認識しておきたい。

ドル・円に関してはドルが上昇すれば売り向かう、"Sell on rally."の戦略を続行したい。



酒匂隆雄氏プロフィール

酒匂隆雄 さこう・たかお

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表

1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。

トレードトレードブログ:
酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」

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