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米中冷戦時代突入?|為替ランドスケープ 2020年8月号
公開日:2020年8月05日

米中冷戦時代突入

先月の為替ランドスケープで、依然として燻る新型コロナ・ウィルス問題の他に当面の注目すべきポイントとして、

-アメリカ大統領選の行方。
-朝鮮半島の地政学的リスクの増大。
-安倍首相の支持率下降。
-米中関係悪化の可能性。

を挙げた。

この内の前3者の状況は、まあ大きく状況は変わらず依然として相場への不透明要因として残るが、此処にきて米中関係悪化が際立ってきた。

先々週アメリカ政府は中国に対してテキサス州ヒューストンに在る総領事館から72時間以内に退去するように命じ、中国はそれに従った。

中国側が総領事館の庭で大量の文書を焼却した為に火と煙が上がり、消防当局が出動する騒ぎとなったが、まるでスパイ映画を見る様であった。

アメリカ政府は、"アメリカの知的財産と個人情報を保護するためだ。"としたが、この措置に対して中国は四川省成都にある米総領事館の閉鎖を要求する報復行為に出た。

すると今度はアメリカは中国人民軍兵士の数名が経歴を偽って入国し、スパイ活動を行ったとして身柄を拘束し、在サンフランシスコの中国総領事館封鎖の可能性を示唆した。

外交関係は互恵主義(相手国の自国に対する待遇と同様の待遇を相手国に対して付与しようとする考え方)を旨としているが、これは裏を返せば"目には目を、歯には歯を。"と言う事になり、"やられたらやり返す。"のが普通である。

ここ数年の米中の軋轢の変遷を見ると、

-中国の巨大な対米貿易黒字に対しての通商問題。
-通信大手ファーウェイ問題をはじめとする、テクノロジーの覇権争いと知的財産権問題。
-新型コロナ・ウィルスに対しての中国政府の責任と対応問題。
-新疆ウイグル自治区での人権問題。
-中国による香港の一国二制度の高度な自治への侵害。
-中国による南シナ海の領有権主張。

と両国間の緊張が益々増大している。

ここにきて上述した点とは異なった次元の問題が起きつつある。

対中国強硬派として知られるポンペオ国務長官が習近平国家主席をトップとした共産党政権を痛烈に批判し、民主主義国家による新たな同盟を構築して対抗すべきだと訴えた。

言わば米中間の対立が、民主主義と共産主義のイデオロギー対決の様相を呈してきたのである。

中国がこの対決に一歩たりとも譲ることは考えられないし、また殆どの州で大統領選対立候補のバイデン氏に対して劣勢が伝えられるトランプ大統領も弱気を見せる訳には行かない。

要するに米中共に一歩も引けない状態なのだ。

新たな米中冷戦時代に入ったと言っても過言ではあるまいか。

そしてここにきて今まで通商パートナーとして中国経済に多大な影響を与えていたオーストラリアが中国の南シナ海での拠点づくりが国際法に違反しているとアメリカと同調し始めて中国の孤立化が目立ち始めた。

実は我が国とも尖閣諸島問題で外交関係悪化が懸念される。

中国孤立化が進むと何が起きるかと言うと先ずは中国が保有する米ドル建て資産の売却と数年後に起きるであろう中国国内の景気後退である。

恐らく報復合戦がエスカレートすれば、在サンフランシスコやニューヨークからの中国総領事館退去、そして在上海アメリカ総領事館退去となり、最悪ケースは在ワシントン中国大使館、在北京アメリカ大使館の退去にまで進む可能性がゼロとは言えまい。

その可能性を考えた場合、中国当局が何時封鎖されるかも知れないドル口座や債権をアメリカに置いておく筈が無い。

実際、アメリカと敵対関係にあるイランが保有するアメリカに在るドル建て資産はアメリカ当局に差し押さえられたままである。

穿った見方かも知れないが、米中関係が悪化しだした途端に始まったユーロ、ポンド、豪ドルなどの爆上げ(ドルの爆下げ)は中国がドル建て資産を他の主要通貨に振り替えだした兆候かも知れない。

(ユーロ・ドルの6月からの日足ローソク足。)

 

(ポンド・ドルの6月からの日足ローソク足)

 

(豪ドル・ドルの6月からの日足ローソク足)

 

これも先月ご説明したが、最近はリスク・オン時にドルが下がると円も下がる傾向が有るため、ドル・円の下げはその他通貨ほどでもなかった。

(ドル・円相場の6月からの日足ローソク足。)

6月30日と7月31日のニューヨーク市場終値を比べてみると、以下の様である。

6/307/31(ドルの下落率)
ドル・円 107.92 105.93 -1.8%
ユーロ・ドル 1.1233 1.1771 -4.8%
ポンド・ドル 1.2400 1.3080 -5.5%
豪ドル・ドル 0.6904 0.7141 -3.4%

先週金曜日は月末と重なり、ファンド勢のリバランス(外貨建て保有資産の価値の増減により、通貨のバランスを取る為に相対通貨の売買を行う。)と、前日までの急激なドル安是正の動きが出て上の主要通貨全てが対ドルで下げて終えたが、冒頭に挙げた三つの不透明要因プラス米中問題を考えるとドル安トレンドが未だ終わったとは思えない。

金曜日に安値104.19の安値を付けたドル・円相場も8月の

-機関投資家による外債投資の利払いの円転。
-お盆を控えて輸出筋の実需のドル売り。

を控えて、再び安値トライの可能性が高いと思われる。

ドルが上昇した場合の"戻り売り戦略"を続けて良いのではなかろうか?



酒匂隆雄氏プロフィール

酒匂隆雄 さこう・たかお

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表

1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。

トレードトレードブログ:
酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」

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