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楽観と悲観|為替ランドスケープ 2020年7月号
公開日:2020年7月01日

楽観と悲観

全世界で新型コロナ・ウィルスの感染者数が1千万人、そして死者数が50万人を超えた。

全感染者の四分の一である250万人を擁するアメリカであるが新型コロナ・ウィルスに対する楽観と悲観が入り混じる。

楽観者の筆頭はトランプ大統領で、自らはマスクを付けることを拒み"消毒液でも注射すれば治るんじゃないか?"と無知な発言をして失笑を買う。

まあ選挙をあと4ヶ月後に控えたアメリカ大統領としては兎に角経済優先であるから、一刻も早く通常の経済活動再開を望むのは当然だが、実際に行政を司る州レベルではそうは行かない。

ホワイト・ハウスはどんどん規制解除を促して経済活動再開を急がせるが、再び感染者数が増え始めた幾つかの州や都市では再びレストランやバーの営業規制が始まっている。

これらの楽観と悲観が入り混じる状況で金融市場、特に株式市場の動きが甚だ掴み難い。

ダウ30種平均株価とS&P.はこのひと月で楽観論が出れば上げ、逆に悲観論が出れば下げると言う分かり易い動きをしながら結局前月比でわずかな上げを記録したが、ハイテク株が主流を占めるナスダック総合指数は一時史上最高値を更新してこのひと月で約4%上昇した。

正に、"コロナ・ウィルス騒動、ものともせず。"である。

この間ドル・円相場は株価の動きを睨みながら余り主体性の無い動きを見せ、やり難い相場展開となった。

先月の為替ランドスケープで、"最近リスク・オンとリスク・オフの時のドル・円相場の動きに変化が見られる。"と書いたがおさらいすると、

楽観を裏付けるニュースが出るとリスク・オンとなって株が買われ債券が売られる。(金利は上昇する。)

逆に悲観を裏付けるニュースが出るとリスク・オフとなって株が売られ債券が買われる。(金利は低下する。)

本邦機関投資家の立場から考えると、以前はリスク・オンになると"積極的にリスクを取って新規投資に走る。"のだから咄嗟に円売りの発想となり実際にドル高&円安に成る傾向が強かった。

リスク・オフはその逆で"既存の債権を売却するか新規投資を控える。"のだから咄嗟に円買いの発想となり実際にドル安&円高に成る傾向が強かった。

 ところが最近は市場の考え方が変わり、

"リスク・オンはリスクを取るのだから、基軸通貨で安全なドルは不要だから売る。

逆にリスク・オフはリスクを取らないのだから、基軸通貨で安全なドルが必要で買う。"

と言うロジックが流行りだしたのだ。

どう言う訳か円もこれだけ低金利や財政に問題が有るにも拘わらず流動性の高さを評価されて"何も無い。"=リスク・オンになると円売りとなり、ドル売り&円売りなのだからドル・円は動かない。

逆に"何かの折。"=リスク・オフになると円買いとなり、ドル買い&円買いなのだからドル・円は動かない。

個人的に上のロジックは解せないのだがその理由は、現在は超金融緩和政策と財政出動のお陰で余った資金が株式市場に流入してIMF.も指摘する通り、"日米の株価上昇は実態経済と乖離しており、割高感が有る。"と思うのだ。

市場が頭を冷やして割高な株価の訂正=(株売り)を行えば、余った資金=ドルも売られて然るべきなのではないのだろうか?

どうも解せないが、相場は相場。

逆らってばかりいると、命が幾つ有っても足りはしない。

現在は新型コロナ・ウィルスに対する楽観と悲観が市場のセンチメントを左右しているのだが、他にも相場を動かす要因は沢山存在する。

-アメリカ大統領選の行方。

こちらも先月の為替ランドスケープで書いた通り、個人的に益々トランプ大統領再選の可能性が減少しつつあると思う。

トランプが敗戦してバイデン新大統領誕生となると株安とドル安になろう。

-米中関係悪化の可能性。

先週通商担当のナバロ米大統領補佐官が"中国との交渉は終わった。"と述べてドル・円が106.08まで売り込まれる場面が有ったが、トランプ大統領が即座に"中国との貿易合意は全く損なわれていない。

中国が合意に応えるのを望む。"とツイートして直ぐに107円台を回復したが、トランプ政権内でこの様な議論が為されたことに疑いは有るまい。

現在トランプ大統領の頭の中にある事は"秋の大統領選で再選を果たす。"ことだけであり、態度を硬化しつつある中国に対して今ここで切り札を切ることは得策ではなく、米国民を納得させるのに一番効果的であるタイミングを計っているのではなかろうか?

言い換えれば、機会さえ有ればトランプ大統領が中国に対して強権を発動する用意は何時でもあるということ。

折しも本日、アメリカの忠告にも拘わらず中国が香港国家安全法を可決したが、アメリカの出方が注目される。

米中関係悪化は株安とドル安要因。

-朝鮮半島の地政学的リスクの増大。

北朝鮮が、脱北者がばら撒いたビラごときに怒って南北朝鮮の友好のシンボルとされていた建物を爆破したのには驚いた。

金正恩の健康悪化説が噂される中、国内の統制を強化する為に益々意固地になって対外的挑発を行う可能性は大きい。

朝鮮半島での緊張の高まりは株安とドル安要因。

-安倍首相の指示率下降。

"一強"と呼ばれていた安倍政権の屋台骨も傾ぎだした感が有る。

"桜を見る会"の不明瞭会計問題、財務省職員の自死に対する冷酷な対応、お些末な賭けマージャンで首が飛んだ検察庁のお偉方の任命責任、そして夫婦揃って検察庁に逮捕された現職国会議員と元法務大臣の任命責任など、安倍首相のリーダーシップに対する不満が蓄積されつつある感じがする。

アベノマスクの評判も散々だ。

直近の調査では安倍内閣の支持率は"支持する。"が34%で、"支持しない。"の50%を大きく下回る。

支持率が20%台に入ると自民党内からも相当な批判が出て来るであろう。

問題は"では誰が後継者となって政権を立て直すか?"であるが、どうもよく分からない。

安倍首相は、衆議院解散については"全く考えていない。"とその可能性を一蹴するが、支持率が下がり続けたらそうも言ってはいられまい。

安倍首相が退陣すれば、当然アベノミクスの終焉である。

金融緩和、株高、円安を演出してきたアベノミクスが終われば、当然株安と円高の動きとなろう。

と、こう書いてくるとドル安&円高論をぶっているようであるが、あくまでも筆者の個人的な中長期の考えでしかない。

トランプ大統領が再選されるかも知れないし、安倍首相も来年の任期まで歯を食いしばって頑張るかも知れない。

痛み分けを恐れて米中が歩み寄りを見せるかも知れないし、金正恩も過激な行動を起こさないかも知れない。

ただ世の中の動きに対して常にアンテナを張って色々考えるのは楽しいものである。

願わくば相場が自分の考えるのと同じ方向に動いてくれて儲けることが出来ればそれに越したことは無いのだが..

うーん、難しい。



酒匂隆雄氏プロフィール

酒匂隆雄 さこう・たかお

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表

1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。

トレードトレードブログ:
酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」

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