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ドル・円は戻り売り|為替ランドスケープ 2020年5月号
公開日:2020年5月05日

ドル・円は戻り売り

相変わらず新型コロナ・ウィルスの猛威は衰えることを知らず、ゴールデン・ウィーク明けに予定されていた我が国の緊急事態宣言もどうやら今月末まで延長されそうである。

新型コロナ・ウィルスのせいで様々な行動制限が課されているアメリカの経済は大幅に減退し、先月発表になった経済指標は目を覆う様な惨憺たる結果となった。

4月NY連銀製造業景気指数 -78.2 予想―35.0 (過去最悪)。
3月小売売上 -8.7% 予想 -8.0% (過去最大の落ち込み)。
3月鉱工業生産 -5.4% 予想 -4.0% (戦後最悪)。
4月フィラデルフィア連銀製造業景気指数 -56.6 (40年ぶりの低水準)。
3月住宅着工件数 -22.3% 予想-18.7% (36年ぶりの下落率)。
第一・四半期GDP. -4.8% 予想-4.0% (2008年第四・四半期以来の大幅な落ち込み)。

と目を覆う様な結果となり、地区連銀経済報告で"経済活動は突然かつ急激に収縮した。"とのコメントが載せられた。
中でも雇用の落ち込みが激しく、新規失業保険申請者数は6週連続で400~500万人単位で増え続けて約3000万件に達した。
米労働市場で6人に1人が失業した計算になるのだが、為替市場の反応は鈍い。

4月になってドル・円相場は大きな動意を失い、3月の安値101.17、高値111.70の値幅10円53銭から一転して安値106.35、高値109.37の値幅3円2銭に留まった。

この間ダウ30種平均株価は3月に18,592ドルの安値を付けた後4月に入って2万ドルの大台を回復し、4月末は24,346ドルで引けて4月は凡そ16%の上げを演じた。

要するに3月の大相場の後徐々にコロナ・ウィルスの影響で米国経済が弱体化する中株価は堅調に推移し、ドル安と円安、ドル高と円高がお互いにけん制し合って結局ドル・円相場は同意を失った感が有る。
昔の様なリスク・オフ=ドル安&円高、リスク・オン=ドル高&円安と言う経験則は通用しなくなった。

4月に戻り高値111.71を付けた後ドル・円相場はじり安の展開となっているが、最近流行りの言葉を使えば、モメンタム=(相場の勢い)はドル安&円高の様な気がする。

日米欧の中央銀行の果敢な金融緩和政策のお陰で一時のドル不足感は無くなり、むしろ余剰感が漂いだしたが、その他にもドル安要因が散見され始めた。

ご記憶の方も居られようが、2週間前にWTIの原油先物価格が何と1バレル当たりマイナス40ドルで取引されると言う珍事が起きた。

前日は凡そ1バレル当たり18ドルで取引されていた(買い手が売り手に18ドル支払う。)ものが、逆に売り手が買い手に40ドル支払って原油を引き取って貰うと言う市場原理からは考えられない現象が起きた。
この珍事が起きた理由はコロナ・ウィルスの影響で世界経済が減速する中、原油の需要が激減し、5月渡しで取引されていたWTI.先物の原油を受け渡しするタンクが満杯になり、買いたくても保管場所が無いと言う現象が起きて"粗大ごみを有料で引き取って貰う"様なことになり、マイナス価格が示現した。
翌日にはこの騒ぎは収まったが依然として原油価格は低いままで20ドル以下で取引されており、これは年初の1バレル当たり60ドルの三分の一である。
原油を殆ど輸入に頼る我が国にとっては貿易収支改善が見込まれて経常収支の黒字は増加する。
当然ドル安&円高要因となる。

次はドルの買い手の姿勢の変化。
4月から新年度が始まり、世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人 =GPIF.を始めとした機関投資家が新規外債投資を行ってドル買いに走ると思われたが、実は彼らは4月になってネットで合計1兆8千億円の債券売り越しに転じており、ドル買いどころかドル売りを行った可能性が高い。
これではドルは上がらない。

そして最後はトランプ大統領のご乱行の可能性である。
トランプ大統領は中国が初期対応を誤った結果、新型コロナウイルスが世界に拡散したとして、関税引き上げや損害賠償金の請求などの報復措置を検討していると明らかにし、
ワシントン・ポスト紙は"米国は中国保有の米債務の一部を帳消しにすることを検討している。"とも述べた。
これは中国が保有する米債の元本の返済や利払いを停止すると言うものだが、これはとんでもない話だ。
その実現性は低いだろうが、(日本以外の)米債保有国は心中穏やかではあるまい。
外貨準備の組み換えを含め、ドル離れが進む可能性は有る。

そもそもこれだけアメリカの実体経済が悪いのに、株価が堅調なのが理解出来ない。
金融緩和による金余り現象で株が買われているのだろうが、危うい気がしてならない。

暫くは、ドル・円は戻り売りのスタンスで臨みたい。



酒匂隆雄氏プロフィール

酒匂隆雄 さこう・たかお

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表

1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。

トレードトレードブログ:
酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」

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