
みなさん、こんにちは。楢橋里彩です。
アジア最大規模の金融業界B2Bイベント「iFX EXPO Asia」(1月27日~28日)。昨年に引き続き、今回も香港・湾仔にあるコンベンション&エキシビションセンターにて開催されました。会場には、FXブローカーやバイナリーオプション、銀行など76社が出展、期間中2500人以上が参加し、初日から大いに賑わいました。今回の香港彩り情報は「iFX EXPO Asia 2016」。『金融ハブ香港』で開催された会場の様子をレポートします。

1月26日に行われた、ウェルカムパーティーの様子です。前日ですが、出展企業や参加者の方々が集まり、前夜祭を楽しんでいました。
このイベントは、コンバージョン・プロス(CONVERSION PROS)とファイナンス・マグネイト(Finace Magnate)が共催しているもので、主に最先端のテクノロジーシステムと、FX、バイナリ―オプション、銀行などのネットワーキングを深め、アイディアを共有していくもの。欧州市場をはじめ、飽和状態が続いている中、世界のFX業界関係者らは、昨今アジア市場に注目しています。

開催初日の1月27日、開始時刻午前10時より前から早くも多くの人がエントランスに集まり、参加者同士の再会の挨拶などが交わされ、すでに賑わいを見せていました。まもなく旧正月を迎えるということもあり、前回に比べ、会場の雰囲気も旧正月ムードに。チャイナドレスを身にまとう女性スタッフ、初日の午前中には鳴り響く銅鑼の音と共に龍が登場するなど、盛り上がりを見せました。

会場では、振る舞われたスパークリングワインを片手に、早くも商談がスタート。世界中からFXブローカー、システム関連ベンダーなど、アジアでの顧客開拓を狙う多くの企業が集い、新たなビジネス獲得に向けた商談が繰り広げられました。日本国内では未だ制限されているバイナリーオプションやソーシャルトレーディングといった、海外では人気になりつつある新サービスを紹介しているブースもあり、会場には東南アジア、中東諸国からのFX関係者の参加が前回よりも多いように感じられました。
これらの人たちはまさに「一帯一路」の地域から来た人たちです。「一帯一路」とは今年3月に全人代(中国の国会に相当するもの)で審議される予定の「第13次5カ年計画」に盛り込まれている、新シルクロード経済帯と海上シルクロードの地域による、共通の経済圏をつくっていく壮大な構想のこと。まさにこの構想が徐々に動き出していることがうかがえます。

開催期間中は、18ものワークショップやパネルディスカッションが行われ、FX業界の経営陣や専門家らが熱い議論を交わしていました。、「アジア市場の開拓において不可欠な最先端テクノロジーのトレンド」や、「トレーディングマーケットのアジアの役割について」といったテーマが用意され、中国を中心としたアジア市場への進出やアジア市場の見通しについての講演が多いと感じられました。
今回唯一日本から出展したのは、NEXTOP Asia。FX、金融デリバティブの取引システムの開発が主な事業です。会社が設立されて4年目の今、なぜ今回出展されたのかについて菅原崇 取締役社長は、「FX業界はとても大きいので、小規模な企業の新規参入はやや厳しい部分がありました。ならば、海外に向けてビジネスができるようにしようと考えなおし、こうしたイベントにも積極的に出るようにしています」と語りました。

香港は、中国をはじめアジア諸国のクライアントが多く集う拠点で、香港で行われる展示会に参加する企業は多く、顧客開拓に有利とみています。将来的には日本で培ったテクノロジーを世界に広げ、アジアから世界を目指していきたいそうです。

今回のイベントについては、「商談相手は、中国本土の企業をはじめ、東南アジアなどからの企業が目立ちました。これらの国の人たちは、低コストの初期投資を考えている企業が多いですね」と壁を感じた菅原さん。中国企業はモバイル市場を重視しているので、どうアプローチするかが今後の課題です。
今回初出展した、次世代型取引プラットフォームを販売しているHI-CARE Financial Services営業部日本担当 坪井桂子さんは、「これまではイギリス、中東、南アジアが主な市場でしたが、今後は日本、香港、シンガポールなどアジア市場を視野に入れるため、今回の出展に至りました」と語りました。

また、中国本土からテクノロジーに関する問い合わせが多かったのも理由だそうで、予想の倍以上の来場に驚いたそうです。そのなかでも特に印象に残ったのは、中国本土の方の商談のスピーディさ。「とても決断が早いのです。トレードされている方は前もって情報を収集されて来られるので、話が早いんですよね」と出展した意義を実感。確実に今後世界で普及していくサービスなので、より注力していきたいと語りました。
FXブローカーFX PRIMUSの投資調査部門統括として働きながら、経済アナリストとしても活動されているマーシャル・ギトラさんは、今の中国、香港経済の低迷について、「香港は1998年のアジア金融危機の時に大変な危機に見舞われましたが、それにも関わらず対米ドルペッグ制は崩壊しませんでした。したがって、今後も米ドルペッグ制は維持していくと思います」と述べました。

人民元安で人民元資産を売る動きがあるなかで、マーシャルさんは人民元建て金融資産は今が買い時だと断言しています。人民元は今後も国際化が進み、中国経済も安定的に成長していくとみているからに他なりません。アジア金融危機の再来が懸念されているなか、1998年の経験から、中国政府、香港特区政府は十分に対処できるとマーシャルさんは見ています。世界で金融市場が動揺する中でも、業界の関係者らはポジティブな見方を示しているといえます。
<取材後記>
今回会場を歩き周っていてよく耳にした、印象的な言葉が「フィンテック」という用語。これは、ファイナンス(Finance)と、テクノロジー(Technology)をかけあわせた造語で、最先端のIT技術を使った便利な金融サービス。金融機関によるビジネスとIT企業によるビジネスが融合することによって、資産管理や決済、融資などを、もっと便利に、もっと身近に変えようという動きが生まれています。iFX EXPO ASIAでも、システム開発企業の出展が目立ちました。日本では特に厳しい規制がかかっている金融界ですが、今後大きな可能性をもたらす金融サービスであることは間違いありません。
