
みなさん、こんにちは。楢橋里彩です。
香港島・中環(セントラル)にあるSOHO(ソーホー)エリア。アートギャラリーや、オシャレなブティック、レストラン、バー、カフェなどがあり、国際的な雰囲気のあるエリア。観光スポットとしても有名なこのエリアに5月29日にオープンしたのが、文化複合施設「大館(Tai Kwun)」。
旧中区警察署、中央裁判司署跡、域多利亜監獄(ビクトリア監獄)跡など「歴史的建築物」に指定された建物におよそ10年かけて補修工事を行い、ようやく生まれかわったものです。今回は施設とともに、近くで気軽に楽しめるカフェ、レストランもあわせてご紹介します。
※1香港ドル=14円計算
■目次
・歴史的建築物を保存、未来に遺す動きが活発に
・アートやカルチャーの新たな発信基地に
・香港警察の歴史に触れる「警察総部大楼(旧警察本部)」
・警察総部大楼内にある中国茶専門店「楽茶軒 Lock Cha」でベジタリアン点心を楽しむ
・夜はライトアップショーも楽しめる「営房大樓 」
・香港初の監獄となった「域多利亜監獄(ビクトリア監獄)」
・新たに増築されたギャラリー「JC CONTEMPORARY」
・「大館」周辺で食べられるレストラン&カフェ
⌊ 本格四川料理を食べられる「麻辣燙 Chili Fagara」
⌊ スイーツやサラダが人気のカフェ「Fresca health-taste-love」
香港では近年、古い建物を保存・活用していこうとする市民意識の高まりを受け、香港特区政府がその推進に乗り出しています。こうした動きは「保育政策」というもので、老朽化が進む歴史的建築物を修繕工事して、新たな観光スポットにするものです。
こうしたなか「大館」も「保育政策」の一環。1995年に香港特区政府は170年の歴史のある旧中区警察署、中央裁判司署跡、域多利亜監獄(ビクトリア監獄)跡を"歴史的建築物"に指定し、修繕工事を10年かけて行い、このたび「大館」として誕生しました。
エントランスゲートは複数ありますが、今回私が使ったのは、世界一長いエスカレーターとして知られる「ヒルサイド・エスカレーター」。セントラル駅から歩いて10分圏内にあり、このエスカレーターを使うと繁華街SOHOをはじめ、あらゆる観光スポットに行きやすいのでとても便利です。
またこのエスカレーターは「大館」の ゲートのひとつ「Footbridge Gate」 に直接つながっているため、雨がふっても移動が楽です。
ゲートから入ると目の前に広がるのは、広々とした「検閲広場」。両サイドには、警察総部大楼と営房大楼の建物が見え、まるでタイムスリップしたかのよう。それぞれの建物のなかには、カフェ、レストラン、アパレルショップなど店舗が入っており、とてもお洒落な空間になっています。
敷地面積およそ1万3000平方メートルもある「大館」には、警察本部ビルやビクトリア監獄跡、検閲広場、警察本部などを含む11棟の歴史建築と新たに建てられた美術館、総芸館、屋外運動場跡などがオープン。アートや最新カルチャーの新たな発信基地となりました。
「大館」の修復・再利用を請け負った賽馬会文物保育によりますと、投資額は約38億香港ドル(約570億円)に上り、着工前の2007年に想定した投資額の18億ドルを大幅に上回りました。2016年5月には修復工事中に外壁の一部が崩壊するなどの事故が起き、修復せずにすべてを取り壊して公園にするという意見も出たほどで、その存続が危ぶまれていました。今回のオープンに多くの香港市民が「ようやく無事に・・・」という安堵の思いが強かったはずです。
ゲートから入ると、すぐに目に飛び込むレンガ造りの建物が、警察総部大楼(旧警察本部)。1919年に建てられました。
建物のなかは、香港警察の歴史にまつわる様々な展示品やパネル、写真などを見ることができます。1930年代のセントラル地区の当時のパトロールルートなどが細かい絵図になって紹介されていたり、警察官になるための必須条件なども展示されているなど、普段はなかなか見られない、知ることができないものが多く展示され大変興味深い内容になっています。また当時より多国籍の人を警察官として採用していたことも驚かされました。
施設内には、シーク教徒の警察官のための「祈祷ルーム」。宗教を考慮していた点は国際都市、香港ならではかもしれません。階段、窓、廊下なども当時の面影を残しながらの美しい造りはどの角度から撮影してもフォトジェニックな空間です。
1864年に建設された美しい建物。未婚の警官や、未婚・既婚の軍曹の宿泊施設としても知られています。館内には「第一隊更衣室」と書かれた当時の生活を実感できるものが残されています。新しく生まれ変わったとはいえ、ところどころに、こうした当時の様子を垣間見られるところがあるので、見つけると面白いかもしれません。
施設内は、まだテナントがすべてに入っていませんが、香港のデザイナーによるアパレルショップ「HARRISON WONG(所在地:Shop 03-205B)」や、コーヒーカップや食器類などを取り扱う「Lovermics(所在地:Shop 03-104」が入っており、今後も様々なショップが入る予定です。
この建物は白い色を活かしたプロジェクション・マッピングショーや、ライトアップショーなどが開催されます。日中と夜の二度楽しめます。各ショーについては公式サイトで確認をしてお出かけください。
> 大館内の全ショップリストはこちら
旧中区警察署に隣接する赤レンガの壁が印象的なビクトリア監獄(当時は中央監獄、1899年に改称)。この建物は、19世紀に香港で最初に造られた監獄です。ビクトリア監獄は犯罪者を収監するのみならず、隣接の中区警察署、中央裁判司署と共に香港の司法制度の中心とされてきました。
1970年代には英国がベトナム難民の受け入れを承認、香港域内の刑務所も1977年から23年間にわたり、難民キャンプとしても使わました。このためビクトリア監獄にもベトナム語表記残っている個所も。観光スポットでありオシャレなエリアSOHOに監獄があったとは信じがたいのですが、実はこちらの監獄は2005年12月23日まで実際に使われていました。
監獄内部は6棟。ご覧のように、監房はとても狭く、壁は明るい色になっているものの、窓が小さくわずかな光が差し込む程度。当然空調などないので、亜熱帯地域の香港は特にこの時期は蒸し風呂状態。取材していても長時間いるのがややきつく感じたほどでした。また映像を使って当時の懲罰や更正労働の様子が分かるようになっています。
また年代ごとに変化した受刑者の食事なども写真や絵など分かりやすく、それぞれの時代にどのようなものを食べていたのかが分かります。様々な国籍の受刑者がいるなかでも、さすが中華圏、中華料理が多かったようで、月餅が食事に入っていたのは香港らしく感じました。
歴史的建造物のなかに突如現れるモダンギャラリー「JC CONTEMPORARY」。外観だけでも大きく目をひく印象的なつくりとなっている同建物は、世界的に有名なスイスのバーゼル出身のジャック・ヘルツォークとピエール・ド・ムーロンの2人による建築家ユニット「ヘルツォーク&ド・ムーロン」が手掛けたもの。
彼らは、北京オリンピックのメインスタジアムなどにもかかわっており、九龍西エリアに建設中のギャラリー「M+美術館」も担当している、世界的デザイナー。彼らが織りなす美しい世界が見られる贅沢な空間がここにあります。
大館は屋外シアターやパフォーマンスなど、様々なアートや文化を楽しむイベントが開催予定。毎月第1土曜に検閲広場で開催される無料コンサートをはじめ、今後は屋外シアターやパフォーマンスなど様々な文化芸術に触れられます。
施設内は、ガイドツアー(英語・広東語)も時間ごとに行われているので、公式サイトで確認してくださいね。尚、入場は無料。週末はオンラインでの申し込みが必要となりますので気を付けてください。詳しくは公式サイトで確認してくださいね。
大館の道路挟んで対面にあるのが四川料理レストラン麻辣燙(Chilli Fagara)。2011年~13年連続でミシュラン一つ星を獲得しているレストラン。四川省の軽食を表す看板のこちらのお店は、縦長におよそ30席。ランチはセットメニューから、ディナーはアラカルトで。特にイチオシは麻婆豆腐。山椒がほどよく効いた本格的な一品です。スパイシーなものが食べたくなったらぜひ、こちらへ。
店舗名 | 麻辣燙(Chilli Fagara) |
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場所 |
G/F,7 Old Bailey street, Central > 付近の地図はこちら |
営業時間 |
■月曜~金曜 ランチ:11:00~15:00 ディナー:17:00~23:30 ■土日 ランチ:12:00~15:00 ディナー17:00~23:30 |
支払い方法 | VISA・MasterCard・アメリカンエクスプレス・現金・銀聯 |
対応言語 | 英語、広東語、標準中国語 |
電話番号 |
+852-2796-6866 +852-2796-6766 |
今回ご紹介した「大館」以外にも、近くには様々な「保育政策」が見られます。例えば、セントラルにある複合商業施設「PMQ」は旧警察宿舎。今年1月にオープンした5つ星ホテル「The Murray, a Niccolo Hotel」は旧政府庁舎から新たに生まれ変わったもの。
新旧が混在する香港ならではの魅力が街に点在しています。次回は離島特集として観光客にも地元の人にも人気の「ラマ島」をご紹介!まだ離島に行ったことがない人も簡単に日帰りで楽しめる場所です。どうぞお楽しみに。
