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香港彩り情報「銅鑼湾書店関係者失踪事件」
公開日:2016年3月2日

みなさん、こんにちは。楢橋里彩です。
今回の「香港彩り情報」は昨年末から話題となっている「銅鑼湾書店関係者らの失踪事件」について取り上げました。日本でもニュースなどで大きく取り上げられています。今回の香港彩り情報では、香港で報道されてきた事件の経緯をまとめてみました。

失踪事件、外交問題に発展か?

中国政治書籍の専門書店「銅鑼湾書店」関係者らの失踪事件。特に注目され始めたきっかけは、銅鑼湾書店の株主である李波氏が昨年12月30日、柴湾の倉庫に書籍を取りに行きそのまま失跡したことです。2016年初め、李波氏の妻を含む関係者宛に李波氏本人から直筆ファクスが届きました。

文面には「急に、ある問題を処理しなければならず、独自の方法で本土に赴き、関係方面の調査に協力している」と書かれており、無事を知らせるとともに、従業員に対し書店の営業再開を託す内容だったことから、書店経営が圧力を受けているわけではないことがうかがえます。その後、妻は警察への捜索願を取り下げています。

1月10日、民主派団体の香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)は、事件を「政治誘拐」として抗議するデモを開催し、主催者発表で6000人余り(警察の推計は約3500人)が参加しました。民主派議員の多くも参加し、デモ隊と警官との衝突も起こりました。

 

 

梁振英行政長官は、「香港基本法の規定に基づけば、香港以外の執法人員は香港で執法する権利はない」と述べおり、社会で取り沙汰されているように、中国本土の公安に香港で逮捕されたとなれば基本法違反と指摘しています。

袁国強司法長官も現段階でやみくもに結論を下すべきではないと強調し、「法律が認める状況を除いては、いかなる人や機関も授権されずに刑事調査や違法逮捕を行うことは認められない」と述べており、これら高官の発言は中央の意思を反映しているといえるでしょう。

また袁長官は、広州香港間高速鉄道で採用が検討されている出入境審査の簡素化と、同事件を合わせて論じる者がいることに注視し、出入境審査方法の設計については「特区政府は香港基本法と1国2制度の精神を厳格に順守する」と述べました。外交問題に発展する可能性がでてきたのは、李波氏が英国パスポートを所有していることが判明したからです。

北京を訪れた英国のフィリップ・ハモンド外相は、中国の王毅・外相と会談した際、「李波氏が香港で罪を犯したならば香港で裁判を受けるべき」と表明、王外相は記者会見で「香港基本法と中国の国籍法に基づくと、李波氏はまず中国国民である」と指摘しました。

中国中央電視台(CCTV)は1月17日、失踪した銅鑼湾書店店主の桂民海(桂敏海)氏自身が説明する姿を放映。桂民海氏は2003年に浙江省で飲酒運転による事故で20歳の女子大生を死亡させ、04年に懲役2年、執行猶予2年の判決を受けました。ですが同年に他人の身分証を使って出国し、海外逃亡を続けていました。自責の念や昨年6月に父親が死去し、母親が生きているうちに会いたいことなどから10月に公安機関に出頭したそうです。

同日には、李波氏が再び妻にあてた手紙も公表されました。今回の件は桂民海氏によって巻き込まれたと説明、事件を大げさにして政治利用する民主派らに苦言を呈しました。23日には妻が本土に赴き、李波氏と面会しています。翌日、宿泊先で撮影した夫妻の写真と李波氏の手紙が報道され、李波氏は「拉致でもなければ買春で捕まったわけでもない」と強調しました。民主派や一部メディアはなおもネガティブキャンペーンを続けていますが、李波氏は「無責任なメディアや個人に対し訴訟の権利を保留する」と警告しています。

 

未だ全貌が明らかにならず

李波氏と桂民海氏以外に行方不明だった3人について、広東省公安庁が2月5日、「中国本土で違法活動に従事して、拘留し調査を受けている」との回答を香港警察に送っています。このうち2人は深センと東莞の自宅で拘束されたことが分かっています。香港や外国で拘束されたわけではないので、あまり注目はされていませんでしたが、李波氏以外の3人は、桂民海氏の犯罪に加担しているため逮捕されたとみられています。

また2月16日には、桂民海氏の捜査に協力しているだけとみられていた李波氏も、実は犯罪を行っていた可能性が外国メディアで報じられました。中国本土の官僚や富豪に対し本人にとって不利な内容の書籍を出すと脅し、法外な額で書籍を買い取らせる恐喝をやっていたというのです。

しかし国連の中国代表が即座に「李波氏は自らの意思で捜査に協力しており、本人が再三説明している。本人の意思やプライバシーを尊重すべき」との声明を発表しました。事件の全貌が明らかになっていないだけにネガティブキャンペーンなどの政治利用が続いており、それに惑わされる香港市民も多いようです。

民主派による情報に市民が翻弄

今回の事件について、街の声を聞きました。

 

【 20代女性 】
香港人として、香港銅鑼湾書店の失踪事件はただただ恐ろしく、香港の一国二制度はまだ保たれるのかは疑問です。中国は基本法や中英共同声明によって、香港住民は香港の司法システムによる保護を受けるはずなのに、現在、この事件の関係者たちは法的に正当ではない方法で国内外で拉致し、彼らは中国本土に連れて行かれました。これは中国政府が公約した香港の自治を無視し、政治的な迫害さえも懸念されることです。

さらに5人は中国政府に批判的な本を扱う書店関係者ということで、失踪の理由は恐らく出版物の内容に関係があるのではないかと思います。この事件で、中国政府はさらに各方面で香港の自由を制限していることを実感しました。香港の自治、文化、自由などを尊重してほしいと強く思います。

 

【 30代男性 】
こんなバカバカしいことが香港で起こっているのは信じられません。明確な証拠がなくても明らかに中国政府の仕業だと思います。もっとも中国政府は国民の政治運動、政治に関わる活動、出版物などを恐れています。今回の事件は香港人に対する脅迫です。香港の一国二制度を無視して、崩壊させるつもりなのです

 

【 60代女性 】
この事件は最初、書店の奥さんを疑いました。話せない何かを抱えているような気がします。わざわざメディアにも報告して警察に失踪届をだしたのにすぐに取り下げていますし。もう何が何だかわかりません。

 

李波氏、英国パスポートを放棄

新たに、2月29日付の香港各紙で情報が報じられました。銅鑼湾書店店主の桂民海(桂敏海)氏が交通事故の件で出頭し収監されている間に違法経営罪の容疑が発覚し、公安機関に戻されて再度取り調べを受けているそうです。桂民海氏は、国家新聞出版部門の販売許可を得ていないことが明らかな書籍を郵便によって本土で大量に販売し、違法に利益を得ていました。

本土で拘束されている他の銅鑼湾書店の関係者3人(林栄基氏、呂波氏、張志平氏)は、桂民海氏の指示により販売活動を担当、表紙を偽装して本土に書籍を持ち込むなどしていたようです。3人は深セン市と東莞市で逮捕され、罪を認めています。

また、桂民海氏の違法経営容疑の証拠を提供しているということで保釈処分となり、近日中に香港に戻れるとのことです。一方、香港警察と入境処の職員は2月29日に中国本土のホテルで李波氏と面会し、李波氏は一貫して誘拐を否定、警察に捜査中止を要求しています。

香港の衛星テレビ局「鳳凰衛視」の番組にも出演し、外部に知られないよう密入境で本土に渡り、調査が済めば密入境で香港に戻って来るつもりだったが、事が公になって政治利用されていることから、香港に戻りづらくなったことを明らかにしました。また、政治利用されることを避けるためにも英国パスポートを放棄することにするそうです。

さまざまな憶測から「1国2制度の崩壊」と騒がれ、外交問題にまで発展した事件ですが、実際に身柄を拘束されていた関係者が、香港に戻され自由にコメントできる立場で表現するまで、一件落着とはいかないようです。

 

 

 

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