

「角川書店」ブランドとして知られる出版大手、KADOKAWAのグループ会社、香港角川有限公司。日本の話題や情報を中国語で発信する月刊誌「HongKongWalker(香港ウォーカー)」は、紙媒体の経営が厳しい時代にあっても売り上げを伸ばしており、毎月7万部が売れるまでに成長しています。
とはいえ、事業が窮地に追い込まれた時期もありました。2007年の創刊以来赤字が続いていましたが、4年前に着任し、見事黒字転換を果たしたのが同社董事長の居駒昭太さんでした。香港の多くの『日本ファン』を魅了する「香港ウォーカー」。今回は制作秘話とともに、香港角川の新たなビジネス戦略について伺います。
それを3年前に大きく方針転換して今の香港ウォーカーがあるわけですが、今でこそ、多くの方に愛読書として慕われていますが、現在の事業展開の土台を構築するにはかなり苦戦しましたね。実は3年前までは現在の売り上げの2割もなかったんですよ。
しかし、ここまでくるには、現地社員と腹を割って話をし、一緒に考え、アイデアを出し合い、一冊を作る。そして、成功と失敗の繰り返しでした。
赴任当初、編集部メンバーを集めて「何故この表紙になったのか。何故この特集をしたのか。そして、いったい何を作りたいのか」ということをカナリしつこく質問していました。雑誌を見たときに、正直この雑誌のコンセプトが全く分からなかったのです。
過去の香港ウォーカーは、香港や日本、台湾や中国本土の特集などを中途半端に掲載しており、何を伝えたい雑誌なのか、ブランドポリシーが何なのか全く分かりませんでした。
コンセプトを編集部に聞いても誰も答えられない状況だったので、だったら雑誌をやめようという話になったこともあります。
そうです。6年も赤字を出しており、コンセプトが不明瞭のまま続けることは避けたかったんですよ。編集者の伝えたいことがなく、かつ赤字で誰がハッピーなんでしょうか。そんなポリシーも無いメディアは買ってもらった読者への裏切りですからね。
このことを編集長に伝えたら「時間が欲しい」と言われ、暫くしてから返事が来ました。『自分達が何をしたいのか』というのをまとめてきたんです。そこにはどれだけ日本の食や生活文化が好きで、埋もれていて知られていない魅力を発信していきたい、という彼らの思いが綴ってありました。書き出すことで自分たちの思いを整理し、再認識したようです。
その意思を受け止めて、もう余計な情報を混在させず、雑誌の表紙から最後まですべて「メイドインジャパン」に徹底するように言ったのです。こうすることで「香港ウォーカー」イコール「日本情報誌」という確固たるブランドポリシーを作ることができたのです。でも、その後もしばらくは、私を信用していなかったのか、他国の特集の話をだすスタッフもいたのですが、すべて断り徹底させました。
