
みなさん、タンク満タンですか?鈴木正浩です。
5月26日決勝が行われたF1モナコグランプリ。昨年知人から、『滅多に取れないチケットが手に入るから行かないか?』とお誘いがあり、こんなチャンス逃すものかと思い申し込みました。その夢に見たモナコに5月末行って参りました。今回はそのレポートをお送りします。
ご存じの方も多いと思いますがモナコ公国はフランス南部、コートダジュールの隣、と言うよりも地中海に面する沿岸部の一部に当たります。モナコの北東西と3方向はフランス領土であり、世界で2番目に小さい国として認識されています。その面積は東京ディズニーリゾートと同じということで、行かれたことがある人は感覚として分かると思います。
少し高台にあるフランスとモナコの国境、別に何もないのですが、ここからの景色がほぼモナコ公国の全貌です。中央右手に見えるのが、国王の住む宮殿、そして政府機関が集まっています。
しかし侮るなかれ、こんな小さな国ですが、集まってくるのはヨーロッパを中心に世界のブルジョアの面々なのです。数億円という大型クルーザーで乗り付ける人もいれば自家用ジェットでコートダジュール空港に着陸、そこからリムジンで入国する人も居ます。
勿論F1が開催されるので、F1ドライバーやプロサッカー選手、そしてすぐ近くにカンヌがあるため、ハリウッドスターが居を構えています。なぜこんなに世界中の富裕層が集まるのか?それはカジノをはじめとするリゾート地としての魅力もありますが、やはりモナコがタックスヘイブンの地だからでしょう。
さて、そういうモナコも年に一度の特別な一週間が訪れます。それがこの週、5月の終わり、F1グランプリの週です。この一週間は正に国をあげてのお祭りとなります。
沿道にはところ狭しと屋台が連なり、オフィシャルも偽物も関係無くTシャツが売られ、ホテルやレストランの値段もグングンうなぎ登りで上がります。そして、ヨーロッパ中のモータースポーツファンがモナコという美しい国の初夏を楽しみに集います。
私は、23日にニースに到着。ここから25日の予選、26日の決勝を見に行く予定でした。ニースですらこの週末はホテル代が1.5倍。モナコなら最低でも3倍はすると言われています。1日空き日となった24日は、ニースの周りの観光地を巡るツアーを、現地で頼みました。結果的にはこれが大成功。とても楽しい旅行となりました。
映画祭で高級リゾート地カンヌ、画家が愛した村サンポール・ド・ヴァンス、山の上にまるで鷲の巣の様に作られた中世の城下町エズなど、南フランスの美しい地方の街を見ながら、最終的には予選前日のモナコに入国しました。
ツアーの運転手兼ガイドを務めてくださったのは60歳前後のフランスのご夫人。拙い英語で一生懸命説明しながらミニバンを運転するというスタイルでした。
王宮がある地域に観光の為の有料許可を取って車で乗り入れてくれました。皆に愛された悲劇のヒロイン「グレース・ケリー王妃」の画やシルエットが街中を彩っています。少し小高いその地から、明日からのF1グランプリーのメインスタンドやコースがよく見えました。
ツアーガイドのご夫人に「そろそろ時間だから、急いで車に戻りなさい」と言われ、何があるのかと思えば、F1モナコグランプリは希な市街地の公道を走るレース。その公道は日常的に使われている普通の道路なんですが、この週だけ規制されコースでのレスキュー体制の準備や、スタンドの設置などで長い時間、車両は侵入できなくなります。
ところが、それでは不便だと言う事で予選の前日にもかかわらず夕方2時間だけ、コースを開放するらしいのです。その開放する時間に並んでいないと一般車両でコースに入れません。そのコースに入るのに一番近い方法がこの宮殿方面から、スタートラインに入る事だったのです。
ツアーガイドのご夫人は、自ら運転しつつ、スタートの効果音を口まねし、アクセルを踏み込んで、レースコースをドライブしてくれました。視点の高さやスピードは違えど、F1ドライバーの見る景色を前日に楽しむ事ができるなんて想像もしていませんでした。本当に幸運です。
25日いよいよ、F1が始まりました。ショーアップされた予選走行です。私が胸熱く見ていた頃は、プロスト、マンセル、そしてセナが活躍していた時代です。それに比べ、現代は予選から、ドンドン下位のドライバーが篩にかけられ落とされていきます。
私が観戦した場所は名物のトンネルを抜けて、マリーナの沿道を走るそのマリーナの対面のマンション7階からです。ですから、マリーナ横のカーブから、最終コーナーに向かうシケインまで見られる、と同時にスタート後ピットアウトレーンと合流するコーナーも見られるとてもエキサイティングな場所です。
F1ファンの方は良くご存じかと思いますが、はっきり申し上げるとモナコは、ポールポジションを取ったドライバーが限りなく優勝に近づきます。
と言うのも、他のサーキットと違い市街地コースのモナコは、抜くポイントも数少なく、道幅も狭いため、ピットストップのタイミングやリタイア、トラブルなどが起きない限りまずチャンスは訪れません。だから、ことのほかこの予選が盛り上がるのです。
レースはメルセデスチームのバルテリ・ボッタスがトップタイムを叩きだすと、そこに日本のホンダエンジンを積んだレッドブルチームのフェルスタッペンがそれを更新。
しかし、再びボッタスがファースティストラップを出し、勝負あったかの様に見えたこの予選、最後の最後で同僚のメルセデスチーム、ルイスハミルトンが鬼神の走りを見せポールポジションを奪いました。LIVEで見られるTV中継では、やはり前述の優勝の可能性が高まったことが嬉しいのか、まだ予選でポールポジションを取ったに過ぎないのに、ハミルトンは涙を流さんばかりに勝利の雄叫びを上げていました。
そして26日決勝。やはりモナコGPモンテカルロ市街地コースはパッシングポイントが少なく、ピットストップも卒なくこなしたルイスハミルトンがポールトゥウィンで優勝。今回のレース、波乱が起こったのが2位争いを演じていた、フェルスタッペンが2位だったボッタスにピットアウトを利用して、前に出てメルセデスのワンツーの間に入り込んだ事でしょう。私が見ている位置から丁度ピットアウトが見られるので、ボッタスの前にレッドブルの車体が割り込んだ時には盛り上がりました。
しかし、この時僅かに接触したなどの理由で、チェッカーフラッグ2位で受けたフェルスタッペンはペナルティーを科され4位という結果となりました。一時はトップのハミルトンにも肉薄していただけに、実に惜しい結果となりました。
今回のF1モナコGPレポート、如何でしたでしょうか?南フランスの初夏に穏やかな風を受けながら、1929年にスタートした歴史あるグランプリレースを、美酒を楽しみながら観戦する。これぞ人生の喜びではありませんか。GP前に天昇したF1界のレジェンド、不死鳥のニキ・ラウダ(アンドレアス・ニコラウス・ラウダ)に思いを馳せながら、欧州の歴史ある街を訪れる。生きている事に感謝したいと思える瞬間でした。人生を楽しむタンクが満タンになりました。
最後に、短い動画ではありますが、モナコ・グランプリのレース様子を御覧ください。
