

X'masは何も子供達や恋人達のためだけにあるわけではないですよね。特に団塊の世代以降に生まれた者にすると、子供の頃から街は赤と緑で彩られ、多くの人がプレゼントを享受し、シャンパン、ローストチキン、ケーキなど日常ではないご馳走を楽しんで来ました。それは、立場が変わった今でも思い出や習慣として息づいているのではないでしょうか。そんな特別な聖なる夜、大人達に是非楽しんでもらいたい唄を紹介します。
それが多田周子が歌う「風の中のクロニクル」です。リンクしているPVを見て、聴いてください。11月4日に発売されたこのCD、山野楽器銀座本店では演歌・歌謡曲で売り上げランキング1位(12月7日時点)になったそうです。題名のクロニクル【chronicle】とは、年代記や編年史と言う意味で、ここでは自分史という方が近いようです。この唄が一体どういう唄なのかを、歌手の多田周子さんに聞いてみました。
この唄をいただいた時に感じたこと、誰にでもある自分史だけれども、大人になって年を重ねて、静かに自分の人生を振り返ったときに、自分の人生の1ページに誰の名前が刻まれているのか?
たとえば、最愛の人が私の名前を記していれば私は嬉しいし、記す誰かがいるっていうことは私にとっても幸せな事ですよね。どんな人にもある自分史だけれども、それは幸せな自分史かもしれないし、辛いことが多かった自分史なのかもしれない。それは人それぞれだと思います。
この唄の2番の歌詞には『思えば長い戦で』というフレーズがあるのですが、これは戦争という意味だけでなく、『自分が小さなチャレンジをしながら生きてきた、いろんな苦難を乗り越えて生きてきた』と、そういう身近なものでもあると思います。
ですが、最終的には『私が生きた物語は、風に消える砂』というように、苦しみや悲しみ、恨みも消え去っていく、それはすごく儚い。実は私の実家が寺で、小さい頃から仏門に接してきました。だから何か、諸行無常(※1)で、結局無に帰すというか、それも帰命無量寿如来(※2)だと。

だからこそ「本当に一瞬一瞬を悔いの無いよう、一生懸命に生きていきましょう」という、人生の応援歌のような意味があるのだと思っています。ライブで歌うとすごく反応があります。50代以上の大人の方に感動していただく場合が多いですね。
想像ですが、一生懸命戦いながら生きてきた人ほどこの唄が響くのでしょう。先日、インストアライブで歌ったときは、1人の女性がものすごく泣いていらっしゃいました。お話を伺うと、50年来連れ添っていた人を最近亡くされたそうで「私の記したい人は旦那さん」と、ちょっと切なく、でも誇らしげに話してくれました。そういう意味では、大変な思いをされた人ほど大きく響く唄なんだと思います。
※1 【諸行無常】
仏教用語で、この世の現実存在はすべて、姿も本質も常に流動変化するものであり、一瞬といえども存在は同一性を保持することができないことをいう。
※2 【帰命無量寿如来】
親鸞の「正信念仏偈」の一文。限りない命の如来に帰命しと言う意味で、南無不可思議光と続く。
