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田代尚機(たしろ・なおき)

中国株アナリスト
1958年生まれ。愛知県出身。大和総研、内藤証券、リード・リサーチ・アンド・プロダクツ(株)を経て独立、TS・チャイナ・リサーチ(株)を設立。現在は生活の拠点を中国に移し、日本と中国を行き来しながらフリーランスとして活動中。マスコミ、金融機関や、個人投資家向けに情報提供を行っている。大和総研勤務時代に1994年から9年間、北京に駐在、中国経済、個別企業の調査を担当。それ以来、中国経済、企業に関する情報提供をライフワークとしている。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。
【著書】
・人民元投資入門
・中国株「黄金の10年」
・レッド・センセーション好機到来!

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本土A株、MSCI新興国市場指数入りに期待!!

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中国株投資家のみなさん、こんにちは。

金融市場の正常化が進展!!

5月の金融統計ではちょっとした異変が起きている。

人民元新規貸出純増額は1兆1100億元で、前年同月を1264億元上回っており、市場コンセンサスに対しては2100億元上振れした。実体経済に対する資金供給は比較的スムーズに行われている。

一方で、5月末のM2伸び率は9.6%増に留まった。これは前月末と比べ、0.9ポイント低く、市場コンセンサスを0.8ポイント下回り、過去最低となった。また、M1伸び率は17%増で前月末と比べ1.5ポイント低かった。

joe_20170622_01M1M2新規貸出純増額の推移.png

M1は流通する現金、要求払い預金の合計であり、M2はそれに定期預金などを加えたものである。いずれも通貨の供給量であるが、その伸び率が意味するところは、少し異なる。

M1は消費活動や、川下市場の状況を示し、M2は投資活動や、中間財市場の状況を示す指標と言われている。そうした観点からすれば、消費活動、投資活動ともに少し弱まっているが、投資活動の方が、より強く抑制されている。

この点について、中国人民銀行の責任者は、「金融システムにおける内部のレバレッジが低下したからだ。
ここ数年、一部の金融機関は過剰な資金を多層、多重に再投資するといった方法で"規制の裁定取引(Regulatory Arbitrage)"を実行し、システム内におけるレバレッジを急速に拡大させたため、金融業界全体に一定のリスクが累積された。
穏健な中立的貨幣政策を実施し、監督管理を強化し、内部レバレッジを引き下げた」と説明している。

話がやや難しい。一例を挙げて説明すれば、一部の金融機関は、「理財商品の販売で集めた資金で、まず、国債、社債などの金融商品を購入する。それらを現先取引に出すことで一旦資金を回収し、その資金を用いて再投資する。
それを何度も繰り返すことで、レバレッジを大きく拡大し、ハイリターンを追求する」というようなことを行った。もちろん、債券だけでなく、株を絡めて同じようにレバレッジを高めた取引も行われた。

"規制の裁定取引"とは、規制が市場原理に沿っていないため、金融機関がその規制を潜り抜けてしまうことを意味する。そういうことが目につき、「金融システムの中に無視できないリスクが生じたのでそれを排除した」という話である。

それでは、どうやって監督管理しているのだろうか?

joe_20170622_02銀行間金利動向.png

その点に関して触れる前に、足元の金利状況について示しておきたい。

昨年11月以降、中国本土の銀行間市場金利が上昇傾向にあるが、6月に入り、それが少し加速しているようだ。たとえば、5月31日の1か月物金利は4.0763%であったが、6月16日には4.699%まで上昇している。

その要因として考えられるのは、金融政策の変化である。

まず、不動産政策である。一部の地方では購入制限が厳しくなるなど、不動産価格コントロール政策が強化されている。そうした中で、住宅ローン金利が上昇し、住宅ローン業務そのものを停止する銀行まで現れている。

13日の証券時報によれば、北京・上海・広州・深センなど一線級都市では、1件目住宅購入目的のローン金利はほとんどが基準金利だが、2件目では10~20%の上乗せ金利が適用されているようだ。
また、数は多くないが、東亜、包商(以上、北京)、平安、華潤、広州(以上、深セン)の5行が住宅ローン業務を停止しているそうだ。中央、地方政府の行政指導の結果、住宅向けの資金が絞られており、金利が引き上げられている。

不動産政策以上に影響が大きいとみられるのは、中国人民銀行による検査である。6月はMPA( Macro Prudential Assessment)検査の時期である。MPAとは、中国人民銀行が2016年から始めた審査評価システムである。
銀行の経営内容について、資本・レバレッジ、資産負債、流動性、プライシング行動、資産の質、外債リスク、信用貸出政策といった7つの方面から審査評価するシステムであり、資本充足率を評価することを目的としている。

銀行経営をほぼ、完全に掌握するような検査であり、これを通じて、当局は徹底した金融レバレッジの縮小を進めているのである。

投資家にとって気になるのは金利の見通しである。

6月16日の上海銀行間取引金利をみると、3か月物金利が最も高く、次に高いのは1か月物である。6か月、9カ月、1年の金利はいずれも1か月物よりも低くなっている。とはいえ、6か月、9カ月、1年の金利は緩やかだが上昇傾向を続けている。

中国人民銀行の銀行に対する厳しい監督管理は比較的短期間に集中的に行われ、金利上昇は一旦、3か月以内に峠を越えそうだといったことを示唆しているように見える。ただし、その後、金利上昇が止まるかどうかはわからない。

アメリカは景気を下支えした上で、金融危機後に行われた非伝統的な金融政策からの脱却、正常化を進めている。そのための利上げであり、テーパリングである。政策としては引き締め気味であるという点で中国の金融政策と似ている部分がある。
しかし、そういう政策を打ち出している背景は違う。激しい投機を抑えるためである。投機が蔓延る最大の理由は、中国人の持つアニマルスピリットの強さであるが、もう一つは金融行政の遅れにある。

しばらくの間は、景気刺激策よりも、レバレッジ縮小を進めるといった金融政策の方が優先されそうである。

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