たっしーが教える、中国株なら俺に聞け!!

田代尚機(たしろ・なおき)

TS・チャイナ・リサーチ代表。
1958年愛知県出身。大和総研勤務時代、北京に9年間駐在し、引受リサーチ、中国エコノミスト、中国株担当アナリストなどを担当。その後、内藤証券、リード・リサーチ・アンド・プロダクツ(株)を経て独立。個人投資家、機関投資家向けに中国株投資に関する助言・情報提供などを行う。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。現在、マネックス証券で「田代尚機の注目5銘柄」を掲載中。その他、SBIサーチナ、日経CNBC、ストックボイスなど、メディアへの出演・寄稿多数。

【著書】
・中国株二季報
・人民元投資入門
・中国株「黄金の10年」
・レッド・センセーション好機到来!

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中国株投資家のみなさん、こんにちは。

"一帯一路"国際会議で世界が変わる?!
"一帯一路"戦略が加速しそうである。

アメリカ抜きのTPPには意味がないと言い切っていた安倍政権が今では11カ国によるTPPを積極的に推進しようとしている。変説最大の要因が中国への対抗だとすると、状況は楽観できない。

5月14日から15日にかけて北京において"一帯一路"国際協力サミットフォーラムが開催される。習近平国家主席が開幕式に出席、首脳による円卓サミット会議を主催する。
4月18日の外交部発表によれば、
アルゼンチン、ベラルーシ、チリ、チェチェン、インドネシア、カザフスタン、ケニア、ラオス、フィリピン、ロシア、スイス、トルコ、ウズベキスタン、ベトナム、カンボジア、エチオピア、フィージー、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、パキスタン、ポーランド、セルビア、スペイン、スリランカなど28カ国の
国家元首あるいは政府首脳がその円卓サミット会議に出席する予定である。
そのほか、110カ国から政府官僚、学者、企業家、金融機関、メディアなどの代表、61の国際組織から89人の責任者が出席する予定である。全体では1200人以上が出席する会議となるようだ。

この会議が意味するところは重要である。中国側はAPECやG20を意識していると思われる。

インフラ設備建設、産業投資、経済貿易分野での提携、エネルギー資源開発、金融分野での提携、人材交流、生態環境、海上分野での提携など8つの分野から検討・意見交換が行われる。
お互いに協力するといった方向で、実施のための道筋を示し、提携のためのコンセンサスを作り上げ、実質的な成果を挙げることを目的としている。


現在のAPEC、G7あるいはG20は、どれほど成果があるだろうか?中国のやろうとしていることの中核には、経済成長のモデルがある。投資が沸き起こり、お金が動き、モノが動く。また、新興国中心の構成は、先進国へのキャッチアップといった共通の目標があり、まとまり易い。
参加国全体の現在におけるGDP規模は小さいが、その分成長余地は大きい。その中心に中国がいるというところにこの一帯一路戦略の重要性がある。

中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト(一帯)」と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸、地中海を結ぶ「21世紀海上シルクロード(一路)」において、インフラを整備し、貿易を促進させ、資金流通を活発にさせる。
それを中国が中心となって設計し、資材を調達し、建設する。世界の覇権構造を大きく変える戦略である。

tashiro_20170510.01.png           (百度百科写真集より、赤が一帯、青が一路)

全体像についてはよくわかるが、実際に足元で中国によるインフラ投資は進んでいるのだろうか?中国にこの大戦略を推進する力があるのだろうか?それについては個別に状況を調べてみる必要がある。

中国は世界第2位の経済大国であり、足元でも四半期ベースで7%弱の経済成長を続けている。設備投資を大きく拡大させることで経済は高成長を遂げてきたのであるが、成長の過程で建設会社などのインフラ関連企業が育っていった。
今では中央系国有企業を中心に、各分野で世界最大クラスの建設・エンジニアリング会社が多数存在する。

例えば鉄道、高速道路建設に強い建設会社がある。中国中鉄(A株601390、H株00390)、中国鉄建(A株601186、H株01186)の2社であり、
前者の2016年12月期(以降会計データは全て同様、国内会計基準)売上高は6394億元で海外売上高は276億元、売上比率は4.3%、後者の売上高は6293億元で海外売上高は328億元、売上比率は5.2%に達する。

中国中鉄については、ホームページ上でこれまで獲得してきた具体的な案件が記載されている。
インドネシア・ジャカルタ-バンドン高速鉄道、ロシア・モスクワ-カザン高速鉄道設計、中国ラオス鉄道、エチオピア-ジブチ鉄道、エチオピア首都のアディスアベバ都市鉄道、マレーシアクアラルンプールMRT、バングラディッシュ・パドマ(南西部と首都ダッカを結ぶ)大橋、ウズベキスタン電化鉄道トンネル、ボツワナ高速道路などである。

鉄道、高速道路建設も行うが、浚渫工事に強みを持つ中国交建(A株601800、H株01800)では売上高は4317億元だが、海外売上高は870億元、売上比率は20.1%である。

そのほか、海外売上高(売上比率)だけを示すと、
住宅建設に強みを持つ中国建築(A株601668)が796億元(8.3%)、工場建設に強みを持つ中国電建(A株601669)が540億元(22.8%)、鉄鋼所などの工場建設に強みを持つ中国中治(A株601618、H株01618)が124億元(5.8%)、電力設備メーカーの東方電気(A株600875、H株01072)が37億元(11.0%)、同じく上海電気集団(A株601727、H株02727)が71億元(9.0%)である。

そのほか、少し広い意味でのインフラ関連の海外事業データを示すと、
電車製造の中国中車(A株601766、H株01766)は191億元(8.3%)、建設機械製造の三一重工(A株600031)は93億元(40.8%)、同じく中聯重科(A株000157、H株01157)は22億元(10.8%)、トラック、ディーゼルエンジンメーカーのウェイチャイ・パワー(A株000338、H株02338)は444億元(47.6%)である。

挙げたらきりがない。セメントメーカーの海螺水泥(A株600585、H株00914)については、海外売上高は22億元で、売上比率は4.0%に過ぎないが、2016年12月期は急増している。インドネシア、ミャンマー、ラオス、カンボジアなどに生産ラインを投入し始めている。
これらの企業は一部の例外を除いて中央系国有企業である。習近平政権が最重要国家戦略として"一帯一路"戦略を実施しようとしているが、こうした企業は、いわば、国家戦略として走出去政策を実行している。その点で、どうしても収益性、安全性を十分考慮した上でなければ進出できない民間企業とは違う。

安倍政権が本当にTPPで中国に対抗したいというのであれば、中国の外交力、政治力、計画・戦略立案能力、統制可能な厚みも広がりもある企業群に勝つだけの何かがなければならない。それがあるのだろうか?

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