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田代尚機(たしろ・なおき)

中国株アナリスト
1958年生まれ。愛知県出身。大和総研、内藤証券、リード・リサーチ・アンド・プロダクツ(株)を経て独立、TS・チャイナ・リサーチ(株)を設立。現在は生活の拠点を中国に移し、日本と中国を行き来しながらフリーランスとして活動中。マスコミ、金融機関や、個人投資家向けに情報提供を行っている。大和総研勤務時代に1994年から9年間、北京に駐在、中国経済、個別企業の調査を担当。それ以来、中国経済、企業に関する情報提供をライフワークとしている。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。
【著書】
・人民元投資入門
・中国株「黄金の10年」
・レッド・センセーション好機到来!

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本土市場、押し目継続か?!

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 中国株投資家のみなさん、こんにちは。

 保険商品に問題発生!!

 再び理財商品リスクが高まっている。

 保険会社が販売する万能保険(ユニバーサル保険)において、一部の保険会社の運用方針について法令違反の疑いが高いとして、当局は取り調べを始めた。

 保険会社は万能保険といった「生命保険に投資信託を組み合わせたような商品」を販売している。

 たとえば、平安保険のホームページをみると、"知悦人生"といった商品が紹介されている。(注.ちなみに、平安保険に問題があるわけではない。あくまで、万能保険の例がわかりやすく書かれているので例として挙げているだけである)。

 この商品では、生命保険部分について、癌、傷害、入院などの特約内容や保障額を自己で設計したうえで、理財部分については、保証利回りについて、低(1.75%)、中(4.5%)、高(6%)から選ぶといった仕組みになっている。

 形の上では、一般の生命保険と同様に毎年決まった額の保険金を払うのだが、収益部分が大きいので積立預金や投信のような感覚で投資できる。

 2014年9月から販売が解禁されたようだが、今年に入ってからは伸び率が鈍化しているようだ。とはいえ、1~10月における保険投資口座残高の純増額(ほとんどが万能保険の理財部分による投資純増額)は1兆500億元で74%増加している。1-3月では214%増で、それと比べれば増加率は鈍化しているものの、依然として高い伸び率であり、また、相当な金額である。

 こうした商品は欧州では非常に多く販売されている。ここまでの話におかしなところはまったくない。

 問題は保険会社の運用にある。

 ここで視点を変えたい。

 本土不動産業界のトップ企業である万科企業(深センA株000002、深センB株200002、H株02202)が、敵対的買収に見舞われている。



tashiro_20161215_1.png

2015年7月、姚振華氏が100%権益を所有する深セン市宝能投資集団有限公司(宝能)が万科企業の株式買占めを開始、8月には発行済み株式総数の15.04%を取得。一旦、華潤股フェン有限公司(華潤)を抜き、筆頭株主となった。9月には華潤に抜き返されたが、その後、株を買い増し、12月には22.45%を取得、再び筆頭株主に返り咲いている。

 万科企業の王石会長はこの時点で、正式に「宝能が大株主になることを歓迎しない」と発言。安定株主(安邦財産保険安邦人寿保険など)を引き込み、買占め阻止に動いた。

 その後、万科企業は企業リストラ案をめぐり華潤と衝突、華潤に宝能が加担したことで、リストラ案は廃案となっている。

 さらに、宝能は臨時株主総会を要求、王石会長以下7名の取締役の解任などを求めたものの、今度は華潤がこれに反対。これも実現に至らなかった。

 7月には万科企業は、宝能の違法行為に対して調査を求める報告書を証監会、深セン取引所などに提出。

 8月には恒大集団が買収に乗り出し、買収劇はさらに複雑になっている。

 11月29日の段階で、筆頭株主は宝能で25.4%、華潤が15.3%、恒大集団が14.07%を占めるといった状況である。

 経営権の行方は依然として混沌としている。

 問題となっているのは、宝能、恒大の資金源である。

 宝能は同社が実質的に支配する前海人寿の名(ただし、商品カテゴリーごとに分別管理されているため、口座数は複数)で株式を取得している。

 恒大集団は傘下企業を通じて株式を取得したと発表している。詳細は不明だが、先週の当局の動きからすれば、傘下の恒大人寿が関連しているとみられる・・・。

 12月3日、中国証券監督管理委員会はHP上で、劉士余主席による中国証券投資基金業協会第二回会員代表大会での講演内容を公表した。

 この中で、流通市場において、敵対的で激しい買収劇が相次いでいることについて、「野蛮人による、まるで強盗のような買収はヒューマニズムの面からも、商業道徳の面からも著しく逸脱した行為であり、刑法への挑戦でもある」などと発言している。

 劉士余主席は大きなレバレッジを使った買収や、由来の不当な資金を用いた買収を厳しく批判しており、「玄関から入ってきた野蛮人が業界の強盗と化している」などといった厳しい表現が使われている。

 保険業監督管理委員会HPによれば5日、万能保険の業務・経営において問題があり、全体改革の行われていない前海人寿に対して、万能保険の新業務を停止する監督管理措置が発表された。同時に、前海人寿の商品開発管理に問題があるとして、全体改革を進め、3か月の間、新商品を売り出すことを禁止した(6日、証券日報)。

 5日に前海人寿の万能保険が業務停止されたのに続き、保険業監督管理委員会は近日中に検査部隊をそれぞれ前海人寿、恒大人寿に派遣するようだ。(7日、中国証券報)

 保険会社が上場企業の株式を発行済み株式総数の5%を超えて買い入れた場合、半年間はその株式を売却することはできない。また、筆頭株主となった場合、1年間は売却することはできない。こうしたルールが存在する。

 加えて、保険会社は純粋な中長期投資を行わなければならず、合併や経営権取得などを目的とする投機は認められていない。

 宝能は会長である姚振華氏が100%所有する個人の投資会社である。いわば仕手筋である。

 また、恒大集団は許家印会長が率いる民営の大手不動産会社であり、万科企業とはライバル関係にある。

 これらの人物は買収目的で傘下に保険会社を置き、これを利用しているのである。やり口としてはとても巧妙である。銀行からの借り入れよりも、資金調達が楽である。高い保証利回りを付ければ資金は集めやすい。

 多少高い利回り保証を付けても、大量の資金があれば、それを企業買収に充てるか、株価の釣り上げに充てるかすれば、大きく儲けられる可能性が高い。また、保険資金なので長期で勝負できる・・・。

 残念ながら、今回の件も、当局の監督管理部門の甘さが招いた失態といえよう。

 1月の急落以降、底割れしそうで底割れしない相場が続き、その背景には長期投資家の資金流入があるとみられてきた。その一つがこうした保険資金の流入である。



tashiro_20161215_2.png

 万能保険そのものは、まさに長期投資であることから、株式市場にとって望ましい。特に5%を超えて保有すれば、制度として、売買制限がかかり、長期安定株主となる。

 非常に望ましい長期投資家の買いが、今回の件で規制が厳しくなり、資金流入が鈍化するならば、それは直接株式市場に影響を与えそうである。

 

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