蟹瀬誠一コラム「世界の風を感じて」

蟹瀬誠一(かにせ・せいいち)

国際ジャーナリスト
明治大学名誉教授
外交政策センター理事
(株)アバージェンス取締役
(株)ケイアソシエイツ副社長

1950年石川県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米TIME誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のテレビ報道界に転身。東欧、ベトナム、ロシア情勢など海外ニュース中心に取材・リポート。国際政治・経済・文化に詳しい。
現在は『賢者の選択FUSION』(サンテレビ、BS-12)メインキャスター、『ニュースオプエド』編集主幹。カンボジアに小学校を建設するボランティア活動や環境NPO理事としても活躍。
2008年より2013年3月まで明治大学国際日本学部長。
趣味は、読書、美術鑑賞、ゴルフ、テニス、スキューバ・ダイビングなど。


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ペルーの暗雲

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ナスカの地上絵やインカ帝国時代の空中都市マチュピチュなどロマン溢れる世界遺産で有名な南米ペルー。そのペルーで初の女性リーダー誕生かと注目された大統領選は大番狂わせの結果となった。

政治状況が悪化すれば、世界経済にも影響を与える可能性がある。同国はお隣のチリに次いでハイテク産業では欠くことのできない銅の生産量で世界第2位の鉱物資源国だからだ。

先月行なわれた第1回投票ではどの候補も過半数を獲得できず、今月6日に上位2名で決選投票が行われた。4日後の選挙管理当局の発表によれば、政治経験のない急進左派の小学校教師ペドロ・カスティジョ氏(51)が保守政党の党首であるケイコ・フジモリ氏(46)を得票率で0.3%の僅差で上まわった。彼女の名前で気がつかれた方が多いと思うが、日本でも知られている日系のフジモリ元大統領の娘である。

ところが勝者は未だに発表されていない。3度目の挑戦となったフジモリ氏が待ったをかけたからだ。

「これは国際的な左派グループが民意を曲げようと企てた不正選挙だ!」

そう主張して、確固たる証拠も示さないまま票の再集計を要求したのだ。発表された票差は4万4000票余りあり、国際選挙監視団も投票に不正は確認できなかったというから、結果を覆るのは難しいとみられている。

だがケイコ氏の強気は冷徹な強権政治で知られた父ゆずりだ。

さらに、南米に新たな左派政権の誕生を嫌うアメリカ政府が「不正疑惑の調査は認められるべきだ」と側面からフジモリ氏に助け船を出したため、決着には数週間かかる可能性がある。

それにしてもなぜ劇的な逆転劇が起きたのか。主な理由は格差拡大と政治の混乱だ。

近年、ペルーでは汚職疑惑と政界の権力争いが泥沼化し、2016年の大統領選から大統領が3回も交替するほどの政治的混乱が続いてきた。さらに、新型コロナウィルスによる人口10万人当たりの死者数が500人超と急増して世界最悪の状況だ。作業員が墓地で穴を掘る姿がいまや日常の光景になっているという。

それに伴って経済も急激に悪化。2020年の国内総生産(GDP)はマイナス11.1%と落ち込み、失業率は15%超。貧富の差は拡大して地方の低所得者層の不満は爆発寸前だ。

両候補の人気もいまひとつだった。

離婚した母の代わりにフジモリ元大統領のファーストレディを務めたケイコ氏の知名度は相変わらず抜群だ。だが父は今や人権侵害や汚職の罪で投獄されており、彼女自身も組織犯罪やマネーロンダリング(資金洗浄)など4つの罪で起訴されている中での選挙だった。好感度はガタ落ちしている。

カスティジョ氏に至っては地方の教員組合出身で、ほんの数ヶ月前までは無名の泡沫候補だった。しかも彼が所属している「自由ペルー」は資源の国有化や憲法改正など過激な主張をする極左政党だ。

つまり、国民にとっては厄介な選択だったのだ。

そんな中、悲惨な現状を招いたのは多国籍企業と結託して利益を貪る悪徳政治家や大企業などの既得権益者だと訴えたポピュリスト(大衆迎合主義者)のカスティジョ氏が地方の低所得者層の共感を得て票を伸ばした。

カスティジョ氏はペルーの主要産業である銅鉱山から得た収益は医療や教育の充実や貧困撲滅に使うと公約している。だが前途は多難だ。議会(1院制、定員139)で彼の「自由ペルー」は弱小勢力であるため法案と通すことが難しい。これまでのペルー政治の歴史を振り返ると、逆に大統領が弾劾されてしまうことも十分ありえる。

アンデス南部地方には、古くから「民の声は、神の声」という諺があるが、著しい経済格差でふたつに分裂した今のペルー社会で先を見通すのは神様でも難しいだろう(終)

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