蟹瀬誠一コラム「世界の風を感じて」

蟹瀬誠一(かにせ・せいいち)

国際ジャーナリスト
明治大学名誉教授
外交政策センター理事
(株)アバージェンス取締役
(株)ケイアソシエイツ副社長

1950年石川県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米TIME誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のテレビ報道界に転身。東欧、ベトナム、ロシア情勢など海外ニュース中心に取材・リポート。国際政治・経済・文化に詳しい。
現在は『賢者の選択FUSION』(サンテレビ、BS-12)メインキャスター、『ニュースオプエド』編集主幹。カンボジアに小学校を建設するボランティア活動や環境NPO理事としても活躍。
2008年より2013年3月まで明治大学国際日本学部長。
趣味は、読書、美術鑑賞、ゴルフ、テニス、スキューバ・ダイビングなど。


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ウォーゲーム

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「ウォーゲーム」をご存じだろうか。最新のコンピューター対戦ゲームではない。政府や議会、軍の研究機関、民間の研究所、マスコミの専門家が一同に介して、現実に起きている国際的危機の分析や未来予測をするシミュレーション(模擬演習)である。

先日、都内某所で私が理事を務めるNPO外交政策センター(FPC)主宰でこの「ウォーゲーム」を行った。参加者は50人弱、テーマはもちろん北朝鮮核危機である。相互に罵り合いをエスカレートさせている米国のトランプ大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長。

新年早々、金正恩が核兵器の発射ボタンは「常に自分の机の上にある」と挑発すれば、すぐさま「俺様はもっと大きくて強力な核爆弾を持っているし、ちゃんと機能する!」とツィッターで反撃した。まさに衝動的な「爬虫類脳」のぶつかり合いである。

爬虫類脳とは辺縁系とも呼ばれる人間の脳の一部で、この支配下ではわれわれは我慢を忘れ、目先の満足を求めて超自己中心的になる。その典型が世界に核戦争の恐怖を拡散している両者である。

今回東京で行ったシミュレーションでは、参加者が米国政府チーム、中国政府チーム、韓国政府チーム、日本政府チームの4つに分かれ、本部から時々刻々発表される状況についてそれぞれ対応策をねった。参加者は現実の大統領や首相、閣僚などになりきって議論・決断するため緊張感が半端ではない。なにしろ人類初の核戦争に発展しかねないのだから。

議論された内容についてはチャタムハウスルールが適用された。英国のシンクタンクである王立国際問題研究所(チャタムハウス)に由来する決め事で、参加者はシミュレーション中に得た情報を外部で自由に引用・公開することができるが、その発言者を特定する情報は伏せなければならないというものだ。

シナリオは今年の春に米国の北朝鮮に対する軍事行使の可能性が一段と高まるという設定が始まった。北朝鮮の挑発的軍事行動を受けて各国はギリギリの選択を迫られる。米国は先制核攻撃を行うのか、核ミサイルを撃ち込まれた日本はどう対応するのか、中国は北朝鮮に軍事侵攻するのか、など生々しい「FIRE AND FURY」(炎と怒り)が展開された。もちろん経済的なインパクトも議論された。

以前、私は米国マサチューセッツ工科大学(MIT)政治学部主宰の「アジア太平洋危機シミュレーション」に参加してテレビ報道したことがあるが、そのときを彷彿とさせる体験だった。

結果はシナリオや参加者によって当然大きく変わる。だが、こうした演習で重要なのは結果ではなくプロセスなのだ。危機に直面して各国の指導部がどのような議論をし、どのような行動をするのか。その渦中で、様々な問題点があぶり出されることがポイントだ。それが教訓となって実際の危機が発生したとき、あるいは危機を未然に防ぐために、役立つのだ。FPCではこれからもこうした試みを続けて行きたい。

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