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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.07
公開日:2018年9月26日

分配金利回り23%の幻想

振り返ってみれば、8月は株式や為替のポーションを持っている人にとっては、かなり厳しい1カ月だったのではないだろうか。

株価は、お盆休みを挟んで、特に個人投資家が大勢参戦している新興株市場が、大きく下げた。東証マザーズ指数は8月末に1050ポイントまで戻したが、お盆休みの最中、8月16日には932ポイントまで下げた。日経平均株価も、新興株市場ほどの惨状ではなかったものの、同じくお盆休みにかけて下押しした。

外国為替市場では、トルコリラの下落が目立った。8月5日のトルコリラ/円は、1トルコリラ=21.7950円だったが、8月13日には16.0867円まで急落した。米国との政治的対立を背景にしたもので、日本人にとっては対岸の火事のはずだったが、そうは問屋が卸さなかった。

というのも、トルコリラの高金利に釣られて、トルコリラ関連の金融商品を購入している個人が、意外といたからだ。

トルコリラ急落の影響を受けた金融商品としては、「FX」、「トルコリラ建て外国債券」、「トルコの株式や債券を組み入れて運用している投資信託」といったところがメインだ。

確かに、トルコリラの魅力は高金利にある。トルコリラ建て債券の利回りは、年20%超にも達している。円建ての預貯金金利がゼロ水準であることを考えれば、何とも羨ましい限りだ。そう思った個人が、トルコリラ建ての高金利金融商品に群がった。

しかし、金利であろうとボラティリティであろうと、高いリターンが期待できる投資対象は、高いリスクがつきものだ。

そもそも金利が高いのは、インフレ率が高いからだ。インフレ率が高いと、相対的に通貨価値は低下する。トルコリラ建ての運用は、確かに高金利が期待できるものの、同国はインフレ率が高く、その分だけトルコリラの通貨価値は減額されていく。理論的に、トルコリラには常に下落圧力が掛かっている。

とはいえ、一国の通貨価値がゼロになるリスクはかなり低いし、過去からの下がりっぷりからすれば、「いい加減、底を打ってもいいだろう」という値ごろ感は働く。

トルコリラ/円の推移を長期で見ると、2008年1月は1トルコリラ=95円の水準だった。それが、同年10月には50円台(52円)をつけ、2011年3月に40円台(48円)、2015年8月に30円台(39円)まで下げた。7年半で半分超も下げているのだから、「そろそろ底値だろう」という値ごろ感が働く。もし、ここで下げ止まれば、年20%という利回りは、むしろ非常に魅力的だ。ただし、それでトルコリラ建ての金融商品を購入して良いのは、そこからさらに半値近くまで下げるかも知れないことを想定してリスクを許容できる投資家だけだ。

たとえば「アムンディ・欧州ハイ・イールド債券ファンド(トルコリラコース)」という投資信託がある。野村證券、東海東京証券、楽天証券、SBI証券のほか、りそな銀行、新生銀行などが、販売金融機関として名を連ねている。この投資信託、2011年11月に設定された時点の純資産総額は4100万円だったが、その後、順調に純資産総額を増やし、2014年11月には4064億2700万円となった。

商品の魅力は、何といっても高い分配金にある。欧州ハイ・イールド債券というのは文字通り、欧州市場で発行されている、高利回り債券のことだ。その債券から得られる高いクーポン収入に加え、トルコリラコースのような高金利通貨による為替ヘッジを行うことによって、ヘッジプレミアムという収入も加味され、総じて高い分配金収入が得られる。

ちなみに、2013年5月時点の分配金は、1万口あたり250円。このファンドは毎月分配型なので、この分配金が1年続くとなると合計で3000円が受け取れる計算になる。当時の基準価額は1万口につき1万2600円前後なので、これを利回りに直すと約23.8%だ。当時は「分配金利回り」という数字が流行っており、その数字を前面に打ち出してファンドをPRする傾向が方々で見られた。この数字につられて、この手のファンドを購入した個人は結構多い。

なお、2013年5月から2018年8月までの累計分配金額は9510円。基準価額は2013年5月末時点のそれが1万2689円で、2018年8月末には2193円まで下落した。

この間、9510円の分配金が得られたとしても、986円のマイナスだ。23.8%という分配金利回りが提示されていたにも関わらず、5年と3カ月運用した利回りはマイナスなのである。いくら9510円もの分配金が得られたとしても、基準価額が1万2689円から2193円まで下落しているのだから、当然といえば当然のことだ。ちなみにこの間の基準価額の下落率は、82.71%にも達する。

これが「分配金利回り」と呼ばれていたものの実体だ。普通、「利回り」と言われると、預金の利率と同様、元本を殖やすための目安のように思うだろう。分配金利回りが23.8%だとしたら、100万円が1年後に123万8000円になると思うのが、預貯金志向の強い人々の考え方だ。

しかし、投資信託の分配金利回りは、それがいくら高かったとしても、投資信託が価格変動商品である以上、基準価額が下落すれば、トータルの運用利回りは低下せざるを得ない。

これが分配金利回りの罠だ。預貯金志向が強いほど、利回りという数字のトリックに引っ掛りやすくなることの典型例と言っても良い。23.8%という数字は、ゼロ金利時代の徒花であり、幻想だったのだ。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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