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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.10
公開日:2019年8月14日

2000万円問題と高齢者の暮らしぶり

旧聞に属する話だが、金融庁の市場ワーキンググループが6月に公表した報告書、「高齢社会における資産形成・管理」は本来、日本が今、直面している超高齢社会における資産形成、保全、管理の在り方を広く世に問う内容だったが、一部のマスコミ、識者によって論点が「2000万円不足問題」に矮小化されたまま、人々の記憶から遠ざかろうとしている。

この問題がワイドショーネタになった頃から、SNSなどでもさまざまな意見が飛び交った。

「政府は100年、年金は安心しても良いと言ったのに、今さら老後のお金が2000万円無ければダメというのはどういうことだ」
「市場ワーキンググループのメンバーは金融関係者が中心。結局、老後資金が不足するなどと脅しをかけて、自分たちのビジネスが有利になるよう誘導しているだけではないか」

と言う否定的な意見が噴出する一方、

「今さら、このような話が問題になること自体に驚いた。公的年金だけでは老後の生活が立ち行かなくなるのは常識だろう」

と、内容について納得できるとする意見も飛び交った。

どちらが正しいのか。

否定的な意見については、年金不安を過日行われた参院選挙の争点とするため、報告書に書かれた内容の一部を切り取り、曲解した内容に仕立て上げられた感がある。

確かに報告書には以下のような一文が明記されている。

「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる」。

ただし、この一文に続き、以下のような文章もあることについては、この報告書に批判的な人たちからは聞こえてこなかった。

それは、「この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる」というものだ。要するに、2000万円はあくまでも参考値に過ぎず、絶対に2000万円が必要だという話ではないことを報告書は述べている。

ましてや、一部の識者が騒ぎ立てたような、「100年安心と言われた公的年金制度が危機に陥っている」という話は、報告書のどこにも記述されていない。そういう意味では、いささか飛躍した批判と言えるだろう。報告書に書かれた内容は、至極まっとうな話だ。

ただ、ひとつだけ留意しておきたい点がある。それは、2000万円という数字の根拠になった毎月の不足額5万円についてだ。

「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている」と報告書に書かれているが、この数字の大本は、総務省が公表している「家計調査年報」のものだ。2017年の数字によると、高齢夫婦無職世帯の実収入は20万9198円、実支出は26万3718円で、5万4520円の赤字になる。この赤字額は年間で65万4240円、30年間で1962万7200円になることから、2000万円という数字が出てきた。

2000万円の根拠を押さえたうえで過去に遡り、実収入と実支出の差額がどうなったのかを比較すると、この17年間で実は赤字額が大きく増えている。ちなみに2000年における実収入は24万4293円、実支出は25万3273円だから、赤字は僅か8980円に過ぎなかった。

つまり高齢者の生活ぶりは、着実に劣化しているのだ。

赤字が増えた原因は、高齢夫婦無職世帯が無駄遣いをして、支出が大きく増えたからではない。実支出はこの17年で増えるには増えたものの、率にしてわずか4.12%増だ。

そうであるにも関わらず赤字が増えたのは、実収入が減ったからだ。実収入は、2000年から2017年にかけて、14.37%も減っている。

恐らく、この赤字幅は今後も増えていくだろう。一部で言われているように、年金財政が破綻して老後の保障が全く無くなるような状態にはならないだろうが、年金の受給額が今後、徐々に減っていくのは確実だ。高齢夫婦無職世帯は実収入の過半を年金に頼っているため、実収入と実支出のギャップは広がっていかざるを得ない。

この事態への対応策は、収入と支出の管理をしっかり行うことだ。あまりにも当たり前の話だが、収入の範囲内で生活する。加えて、年金だけに頼るのではなく、出来るだけ長く働くようにする。資産運用はもちろん大事だが、月々の収支が赤字なのに資産運用しても、底の抜けたバケツに水を入れるようなものだ。

2000万円問題が炎上してから、金融機関が開催している資産運用セミナーは集客が順調と聞く。もちろん資産運用を学ぶことは大事だが、その前に「収入の範囲内で生活する」という極めて当たり前のことを、まずは実践するべきだろう。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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