若林栄四 ニューヨークからの便り

若林栄四(わかばやし・えいし)

1966年東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。シンガポール支店、本店為替資金部及びニューヨーク支店次長を経て勧角証券(アメリカ)執行副社長を歴任。現在、ニューヨークを拠点として、ファイナンシャル・コンサルタントとして活躍する傍ら、日本では株式会社ワカヤバシ エフエックス アソシエイツ(本邦法人)の代表取締役を務める。

【著書】
・黄金の相場予想
・世界一やさしい図解FXの教科書
・異次元経済 金利0の世界
・富の不均衡バブル
・etc

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2015年夏を思做す

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世の中が段々騒がしくなってきている。

ギリシャの問題に加えて、中国株の暴落である。しかしまだ米国株は比較的平静を保っている。FRBのまやかしによる景気誘導で、本当に実体経済が株価の上昇に追い付いてくる(株価は2009年3月の底値から約3倍)と市場は思っているが、実は次のショックは米国経済の減速であろう。

ギリシャ、中国、米国経済減速と来ると、どう見ても世界の株式市場は危ない。特に今まで油断(Complacent)している分株価下落に転じるとショックは大きいだろう。

この2015年夏というのはどういう日柄だろうか。1974年10月-12月に米欧主要先進国の株価は暴落の底を打っている。そのポイントからの40年半(162四半期目)という節目の時間帯に入っている。40年半の日柄については、米国株でいえば、1932年7月のNYダウ40ドルの大恐慌底値から1973年1月の1,067ドルの天井(その後1974年12月に向けて暴落570ドルで底を見ている)まで丁度40年半かかっている。

日本の例でいえば1949年5月の東証再開からバブル天井1989年12月の38,957円までが40年7カ月となっている。1971年8月の固定相場最後の360円からの円高は2012年2月の76円で、ドルダブルボトムを付け円安に大転換をした。(40年半である)そのほかにも40年半で流れが変わり景色が一転する相場は枚挙にいとまがない。 

もっと目先の話をすれば、2008年9月にリーマン・ブラザースが破綻し、10月には多くのマーケットで底値を記録する狂乱の1カ月であった。そのタイミングからの81カ月目(黄金分割162÷2)がこの6月-7月なのである。世界中のマーケットがきな臭くなってきたのは故無しとしない。

そう思って日本株の日柄を見てみると、2008年10月の大底6,994円からの81カ月目が7月である。もっと昔を振り返ると、1965年7月は昭和40年不況で株価が暴落した底値1,020円を示現した時であり、丁度50年目に当たる。

今、世の中がきな臭くなっているのは重大な日柄が来ているからで、一時的な現象ではない。

むしろ世の中がどんなに大きく転回するのかに、思いを致して、下げ相場に敬意を払う態度が必要だろう。

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米国景気の回復度合いはまだら模様

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米国景気指標は相変わらずまだら模様ではっきりしない。

これだけ雇用の数字が良くなっているのに、なぜまだら模様なのか。特に消費関連の数字が弱い。ガソリン価格の下落により大型乗用車の売れ行きがよく、久しぶりに年率17百万台に達しそうな勢いであるが、それ以外はパッとしない。

なぜ家計の貯蓄率が5%台に上昇してきているのか。巨視的にいえば、民衆は、IMPENDING CRISIS(切迫する危機)を動物的本能で察知して、それに対する自己防衛として貯蓄を積み上げている。あるいは迫りくるデフレの脅威に対して、最重要の現金を厚くしているということも考えられる。

もう少し前向きの見方をすると、年率4%の住宅価格上昇に対して、年率2%の賃金上昇だと、いつまでたっても住宅を取得できないので、標準の20%の頭金ではなく、30-40%の頭金を作るためせっせと貯蓄に励んでいるということもあるだろう。ゼロ金利の結果、貯蓄は一向に自己増殖しないので、ひたすら所得の中からの貯蓄の比率を上げることにより対処せざるを得ないのかもしれない。

ゼロ金利の中の資産高というのが、資産を持たない人々にとっては一番つらいことであろう。そうした状態が解消されるには、これから大幅に所得が上昇するか、あるいは資産価格が下落するかのどちらかかであろう。一年間に30%ものドル高では米国労働者のドル建て賃金の大幅上昇は期待できない。

となると一般労働者のためには資産価格が下落することが、資産取得への近道である。貯蓄率を上げることにより、経済成長を低下させ、その結果、資産価格を下げることにより、低所得者が資産保有に向かう環境を作り出すという神の摂理なのかもしれない。

既に持てる者には厳しく、待たざる者には優しい、開きすぎた貧富の差を是正するための人智を超えた力が働いているのかもしれない。

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ECBのQE(量的緩和策)で、QEバブルの終焉を迎える

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今マーケットで起こっていることを、クリアーに解説するのは非常に難しい。世界中のマーケットで、債券相場が急落し、金利が急騰した。それが、5月7日で終わり今度は債券相場が上昇、金利が低下し始めた。

8日の米国雇用統計の数字は、特に債券相場の上昇を促すような数字ではなかった。ECBの量的金融緩和が誤った反応を呼び起こし、ドイツの10年物国債は4月17日に0.05%まで低下した後急騰5月7日には0.786%までの金利上昇を見た。8日は0.54%で引けている。

こうした大きな相場のスウィングは市場の誤った見方に基づいている。ECBがQEをやれば、金利が低下し、株価が上昇するという見方である。FRBがQEをやった結果、米国株式は上昇し、金利は低下した。日銀がQEをやれば金利は低下し、株価が上昇した。だからECBがQEをやれば同じことが起こるだろうというわけだ。

そもそもQEなるものの、経済学的な評価はいい加減で、アナウンスメント効果ぐらいしかないのに、それにマーケットが乗っかって、無理やり米国株を押し上げ、日本株もやりすぎのレベルまでやってしまっている。

この中央銀行のまやかしの最後にECBが出てきて、QEをやるという馬鹿げたことをやった。もちろんECBはほかに何もできないので、QEをやった。何もしないわけにいかないのでQEをやったということだろう。それに対して市場はFRBや日銀のQEから、学んで大いに株価を押し上げ、金利を押し下げたということである。

そもそも本源的にはほとんど効果が考えられないQEの化けの皮がそろそろはがれてくるということではないだろうか。米国株高、日本株高、EU株高、円安、ユーロ安、ドル高、こうしたすべてのマーケットトレンドが偽りのQEで毒されてきた。その本当の姿がこれから出てくるということではないか。

FRBが始めたQEバブルがいよいよ崩壊の瀬戸際に来ていることを思わせるマーケットの混乱ぶりである。

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再び話題に上るNAIRU(ネイルー)、しかしデフレへ進む米国にとっては?

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長らく聞かなかった言葉が最近よく話題になる。

NAIRU(ネイルー)である。

Non accelerating inflation  rate of unemploymentで日本語では自然失業率と訳されている。失業率がどこまで低下するとインフレに火がつくかという限界の失業率をNAIRUと呼んでいる。

長らく失業率が高い状態が続き、またインフレ率も低い状態が続いたので、このNAIRU は人々の意識から遠ざかっていた。しかし最近になりインフレ率が5.5%まで低下してくると、一体どこまで失業率が下がるとインフレのリスクが高まるのかという議論が盛んになってきている。

エコノミストの平均では1年前のNAIRU は5.7%であったがWSJの調べでは最近5.1%まで落ちてきている。3月のFOMCでFRBも5.1%までNAIRUを下げてきている。(12月は5.35%)
エネルギー・プライスが低く、ドル高の現状で、インフレ率が急に上昇するとはだれが見ても考えられないだろう。

したがってこのNAIRUの議論は単なる議論の段階であり、これによってFRBがアクションを起こすことは考えられない。すなわち失業率が5%になったから、インフレを阻むために利上げするといったことである。

このNAIRUの議論にはひょっとすると米国経済が構造的に変わって、失業率の低下とインフレとの関係が、以前ほどはっきりしなくなっているのではないかという論者もいて、いずれにせよ、学者の遊び的な議論である。

金利0(ゼロ)の世界ではいろんなことが根本的に変わる。それまでの常識が通用しないということがこれからはっきりしてくるだろう。

NAIRUの議論も実体的にはそれほど意味を持たないが、いかにエコノミストやFRBが固定した観点からものを見て、新しい流れに気が付いていないかという一つの証拠として上げられる。もっとも米国はこれからデフレに入るのでこのNAIRUの議論そのものがナンセンスなのだが…….。

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若林栄四氏最新書籍「異次元経済 金利0の世界」プレゼントキャンペーン開催のお知らせ

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みなさん、こんにちは。トレトレ編集部です。

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最新号「Flying Back Japan! 023」もあわせてご覧ください。

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