若林栄四 ニューヨークからの便り

若林栄四(わかばやし・えいし)

1966年東京銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。シンガポール支店、本店為替資金部及びニューヨーク支店次長を経て勧角証券(アメリカ)執行副社長を歴任。現在、ニューヨークを拠点として、ファイナンシャル・コンサルタントとして活躍する傍ら、日本では株式会社ワカヤバシ エフエックス アソシエイツ(本邦法人)の代表取締役を務める。

【著書】
・黄金の相場予想
・世界一やさしい図解FXの教科書
・異次元経済 金利0の世界
・富の不均衡バブル
・etc

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これからの5年間に来る危機

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パーフェクト・ストームという表現がある。

幾つかの巨大なストームが同時に発生し、それらが複合的に作用しあって、スーパーストームを形成するということを形容するときに使われるものと理解している。

リーマンショックの際は米国、欧州は傷んだが、日本、中国は、あまり痛手はなかった。

それでも大恐慌以来の不況といわれた。

それに比べて、次に来るべき大不況は米国のスローダウン並びに資産市場の崩壊、中国経済のデット・デフレーションによる混乱(日本のバブル破裂を上回る規模の破壊)、EUの混乱並びにBREXIT による実験、アベノミクス逆転現象による超円高がもたらす日本経済の混乱と、先進国経済と中国経済を中心とした混乱が複合的に襲う。

これはパーフェクト・ストーム以外の何物でもない。

これからの5年間世界を襲うパーフェクト・ストームは果たして、資本主義経済が持続可能かという命題をわれわれに突きつけるほどのマグニチュード10クラスの大事件となろう。

マーケットや経済などというものは後付けでいくらでも説明できるが、もともと社会科学としての経済学は極めて不完全なものであり、将来の動向を占う方法論を持っていない。

フローの経済とストックの経済の乖離が限界までストレッチされた現在の資本主義の矛盾は一度大掃除が必要なタイミングに来ているということだろう。

次の著書の題名だけは決めた。

"パーフェクト・ストーム"である。

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米株下落で見えてくるスピーカーの側面

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10月初めから今日までの2カ月ほどマーケットのセンティメントが激変した例を筆者は知らない。

ひどい目に会ったのは、疑わずにメディアの宣伝に乗せられてひたすらハイテク株を買い進んだ一般大衆だけではなく、この事態を全く予測できず相場急落への対応も狼狽でしかなかった専門家と言われる人たちであろう。

専門家特にCNBCテレビの"Mad Money"の人気キャスターであるジム・クレイマーはひどい。

FRBの金融政策を批判してみたり、はやめに絶好の買いのチャンスと言ってみたり、トランプに金融政策に口を出すなと言ってみたり支離滅裂で無能ぶりをさらけ出している。

全く時代大局観を持たずハッタリだけのこのような男が、局面局面でコメントするものだから、視聴者は右往左往を余儀なくされている。このような人に年俸数千万ドルも払うCNBCもチョロイ。

ことほど左様にウォールストリートと言っても大したことは無くプロと言ってもハッタリのプロである。

我が国のモーサテも業界人による強気競争みたいなもので全く役に立たない。そういう会社勤めの人ではない独立系の人のコメントを聞いてみたいものだ。会社をバックにしていると言いたいことも言えないのだろう。と好意的に解釈している。

一般に出演者の相場に対する感情移入が大きく、反応がエモーショナルで相場が良ければにこにこし、悪ければ憂鬱な表情をして見せる。

マーケットを対象にする人間は無表情であるべきだというのが筆者の信念である。

感情移入をすると間違えるのである。勝っても負けても淡々として相場を語れる人が信頼できる。

くだらないマーケットの解説ではなく、もう少し本質的な問題提起をして欲しいものだが、その前に、にこにこ憂鬱は止めよう。

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中間選挙の結果から見える米国内の対立

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米国中間選挙の結果が出た。

文明と野蛮の対立といってよいだろうが、野蛮の勢力が侮れないことを示した。トランプ現象は、一時的なまぐれでは無く、米国の野蛮化が進行中であることを証明した。

第2世界大戦が終了したときに、米国の軍人が、日本を評して、精神年齢7-8歳の国であるといみじくも喝破したが、今の米国はやはり精神年齢8歳の国で、その中で野蛮化が進行している。

ジャーナリズムに対するヘイトメールが横行している。

戦前の日本のように、物言えば唇寒しの状況が、徐々に浸透中である。

いわゆるファッショ(※)の浸透である。

私事で恐縮だが、筆者の長男はNYタイムズの記者であり、その連れ合いはウォール・ストリート・ジャーナルの記者である。

彼女の書いたTWITTERに関する記事が、超右翼のメディアで取り上げられた結果、自宅にヘイトメールが舞い込むようになり、自宅を一時的に引き上げてホテル住まいを余儀なくされる事態が発生している。

トランプにより国民分断化により、気に入らないものはすべてFAKE NEWS(嘘のニュース)とするトランプの言辞が一般国民に過剰な影響を与えている。

西欧文明の旗手として戦後世界を指導したあの米国はどこへ行ったのか。

文明派の懸命の努力もかかわらず、中間選挙の結果は思わしくなかった。

かろうじて下院の多数を民主党が制して、トランプを牽制したが、トランプは選挙の翌日には司法長官を首にして、民主党からの疑惑攻勢に備える姿勢を示している。

このトランプを支持する野蛮派の連中の勢力は無視できず、2020年のトランプ再選は決まったと豪語する共和党関係者もいる。

確かに激戦のフロリダ、ジョージアあたりの選挙は僅差ながらいずれも共和党が制しており、トランプのメッセージが効いている。

文明派は2020年に向けて何とか体勢を立て直して、トランプを阻止しなければならない。

核になる候補がいないところが、民主党の苦しいところである。

このままでは文明対野蛮の内戦になるという人もいる。

その場合、最終的には軍がどちらにつくかだろう。

10年前には考えられなかったファッショ国家米国は着々とその地歩を固めつつある。

この流れを破るのは、資産市場の崩壊により、野蛮派をDISCREDIT(信用を落とさせる)することである。

ファッショに対する対抗手段が資産崩壊というのでは米国の将来は暗い。

今までの望外な繁栄が逆転するというのは因果律で行けば納得的である。

 ※ファッショとはイタリアのムッソリーニ率いた政党ファッシオが語源で、ファシズムの事。

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トランプ劇場の茶番

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トランプ政権になってから、米国の議会も大幅に品位を落としている。

下院は普通の議会であり、たいていのことは過半数で決められる。

上院は良識の府であり、たいていのことはフィリバスターと呼ばれる、100議席のうちの60票を取ることが必要とされる仕組みであった。

たとえば、最高裁の判事の決定には上院の60票が必要であった。

それが、トランプが干渉して、昨年のニール・ゴーサッチ判事の上院承認の際に、普通の案件と同じく51対49の単純多数決で良いという風にルールを変更した。

これを行ったのは共和党院内総務のミッチ・マコーネル上院議員である。重要案件だから60票要るという上院の良い習慣はトランプにより踏みにじられ、マコーネルの党派的な

採配により現実化されたのである。ミッチ・マコーネルはバックドアー、アンダー・ザ・テーブルの汚い取引を行う業師として今日の地位を築いた男である。

全く風采が上がらず、弁舌がさわやかなわけでもない。しかしトランプと組んで彼が行ったことは、良識の府としての上院の将来に禍根を残し米国の民主主義に暗い影を投げかけている。

今度のもう一人の最高裁判事に指名されたカバノーは、従来の基準では全く判事になれる人ではないが、51対49の単純過半数と言う低いハードルだから最高裁判事になれたという男である。

最高裁判事は終身指名なのでこれから30年間彼は、最高裁判事として保守に肩入れする役目を果たすだろう。

フィリバスターと言えば、トランプ自慢の減税も、上院を単純過半数でしか通していないので、恒久減税ではなく、時限立法である。恒久減税のためには60票の賛成が必要だったのである。したがって5年後には減税の根拠法は消滅し、逆に増税になる可能性がある。

トランプはそれでも実績を作るために、いい加減な減税案を持ち出し、通常では到底通らないものが、単純過半数で無理矢理通したものである。

時限立法で、そのうち減税が消滅するどころか、増税になる可能性があるということが分かり、今や減税は共和党議員が中間選挙で決して話題にしないアイテムになった。

うっかり減税の実績を誇ろうものなら、会場から大ブーイングを浴びるからである。

企業減税は別として、所得減税の評判は地に落ちている。

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NASDAQは天井を付けた...

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時恰も、風雲急を告げる機が到来しつつある。

新興国経済は、あちこちで綻びを見せ、米国低金利で行き場を失って、新興国に投資先を求めた大量の資本が逆流しつつある。

また米国発の貿易戦争が、世界の経済を席捲しつつある。

それでもimpending(差し迫った)な危機をいう識者は多くない。

なぜならば、偏えに米国株式が好調だからである。米国株式相場が高値を更新している間は、危機に対する感覚がマヒしているのである。

もっともNYダウは1月26日に付けた26,616ドルの高値を僅かに更新したがさらに高値を追うほどの勢いはない。

好調なNASDAQ が相場を引っ張っている。しかしそれも危ない。

NASDAQが前回バブルの頂点にいたのは、2000年3月10日の5132である。

この2000年第1四半期というのは1932年7月の大恐慌の底NYダウ40ドルからの67.5年という節目の日柄であった。NASDAQは1983年からの指数なので、2000年3月はそれほどの意味を持たないが、2000年第1四半期は米国株式にとって大事なエポックであった。

そのITバブル頂点の日柄からの36.5単位である73四半期(18年と1四半期)目は今年の3月11日から9月9日までの期間である。72四半期(18年)が終わり、72.5年(74四半期目が始まる)までの時間帯である。

筆者の中ではこのNASDAQは9月9日以前に天井を付けるはずであるという、日柄からの推論が大きかった。レベルについては、この相場の底値1984年7月25日の223.9に、ダブルペンタゴン方式による154.5単位の7725(15450÷2)を加えた7948.9が天井の候補である。

8月30日(9月9日以前)に8133(7949を2.3%超過達成)を付けたNASDAQはすでに天井を付けたのではないかというのが筆者の考えである。

もう一つITバブル破裂後の最安値2002年10月の1108のフィボナッチ61.8倍は6847であり、それに底値1108を加えると7955と上記の7949とほぼ近似値である。

そのうちに株価が下がってくると問題が出るという識者の指摘はあるが、すでに天井を見て、地雷原に足を踏み込んでいるという指摘はない。

値ごろと日柄の双方で相場の天井を探る黄金分割の方法論が、果たして生きるかどうか。

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