若林栄四 ニューヨークからの便り

若林栄四(わかばやし・えいし)

1966年東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。シンガポール支店、本店為替資金部及びニューヨーク支店次長を経て勧角証券(アメリカ)執行副社長を歴任。現在、ニューヨークを拠点として、ファイナンシャル・コンサルタントとして活躍する傍ら、日本では株式会社ワカヤバシ エフエックス アソシエイツ(本邦法人)の代表取締役を務める。

【著書】
・黄金の相場予想
・世界一やさしい図解FXの教科書
・異次元経済 金利0の世界
・富の不均衡バブル
・etc

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現時点での米大統領選

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Convention Bounce と呼ばれるものがある。

米国大統領選挙の候補を指名する党大会(Convention)がおわるとそれぞれの党の指名した候補のPoll(人気投票)の数字が上がるというものである。

今回の例でも共和党大会の直後のPoll では一時的にトランプがクリントンを制する場面、あるいはタイにまで追いつく場面がみられた。

しかし民主党大会が終わると、今度はヒラリーがbounceして、大幅にトランプをリードする形になった。色々なpoll があるので一概には言えないが、おおむね8-10%ヒラリーがトランプをリードしているのが現状である。

もっともアメリカの大統領選挙では全国区で幾らリードしようが、少数の接戦州(スウィングステート)でのpollが重要である。

何故なら一つの州を制したものが、その州のエレクトラル-カレジ(選挙人)を独占する選挙人制度となっているからだ。

人口比率で決められた各州の選挙人の総数は538人であり、その過半数270人を採れば当選となる。

2000年の選挙では全国の獲得投票数で上回った民主党のアル・ゴアが選挙人で上回ったブッシュに敗北したのが記憶に新しい。

各州の投票傾向はほとんど固定的である。NYは民主党、カリフォルニアも民主党、テキサスは共和党、などなど投票する前からはっきりしている州が多い。

それを足し上げると最初から民主党候補は230以上の選挙人の獲得が確実視される。

共和党は、180人ぐらいは確実に集められる。

それでいくと、確実でない州(これをスウィングステートと呼ぶ)がどちらに傾くかで最終結果は決まる。ところが既に民主党は戦わずして230あるので、あと40を獲得すれば勝ちである。共和党は90スウィングステートで採らないと勝利はない。

ということでこの少数のスウィングステート例えば、フロリダ、オハイオ、ペンシルバニア、ノースカロライナ、バージニア、ウィスコンシン、コロラドで両候補の数字がどうかということが全国区より大事である。

そのスウィングステートでのpollも今現在圧倒的にヒラリーがリードしている。


民主党大会でのプレゼンテーションもよかったが、この2週間ほどはトランプの自滅である。民主党大会でトランプを難詰した戦死した兵士の父親に対して侮辱的な言辞を弄するなど、このトランプというのは、自分が非難されると徹底的に相手をやっつけなければ気が済まない性格である。それでこの父親との論争になり、これがダメージとなって、ヒラリーとの差が開いたのは間違いない。要するにトランプというのは小物なのである。

戦死した兵士の家族には、国に殉じたことに対する感謝を表明し、それ以上論争に入らないのが常識である。それができない。

さらには、民主党全国委員会がロシアにハッキングされたのをとらえて、ロシアに呼び掛け、ヒラリー・クリントンの消されたeメイル3万件もついでのハッキングしてくれという馬鹿な発言をしたことも、共和党支持者も含めて、ごうごうの非難を浴びた。

このセンスのなさ、発言する前に考えない軽薄さは耐え難いものがある。

その結果、トランプは以前にロシアのプーチン大統領を礼賛した事実と含めて、当選したらプーチンと図って、ウクライナやNATO を骨抜きにするつもりではないかといったコメントがテレビで大きく流れた。

こうした発言が次から次へと出てくるので、共和党支持者がクリントンに鞍替えを発表する例が続出した。

また共和党支持の大口ドナー(献金者)がヒラリーに乗り換えを発表するなどトランプキャンペインは崩壊の危機に瀕した。

そこでトランプは、彼に背を向けて保守派の共和党員に対し、ヒラリーが勝てば、今空席の最高裁判事にリベラル派が指名され、9人の判事のバランスがリベラル5人、保守4人となってこれから何十年にわたってリベラルの天下になってしまう。それを阻止するためにトランプが大統領にならなければならないとの理屈で自らに対する投票を呼び掛けている。

後3カ月となった選挙戦まだ一筋縄ではいかない感じである。

とりあえず、クリントン圧倒的有利の態勢に入ったが、ビル・クリントンが父ブッシュを破った1992年の選挙では、クリントンが序盤の劣勢を一気にひっくり返して、勝利した例もある。

ヒラリーにしてみれば早く3カ月たってほしいと祈る気持ちだろう。

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