若林栄四 ニューヨークからの便り

若林栄四(わかばやし・えいし)

1966年東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。シンガポール支店、本店為替資金部及びニューヨーク支店次長を経て勧角証券(アメリカ)執行副社長を歴任。現在、ニューヨークを拠点として、ファイナンシャル・コンサルタントとして活躍する傍ら、日本では株式会社ワカヤバシ エフエックス アソシエイツ(本邦法人)の代表取締役を務める。

【著書】
・黄金の相場予想
・世界一やさしい図解FXの教科書
・異次元経済 金利0の世界
・富の不均衡バブル
・etc

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トレトレブログ

今、森羅万象の中心には彼がいる

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今回東京からNY への帰路、サンフランシスコに寄って、あるヘッジファンドを訪問した。

このヘッジファンドはいい加減なものが多い業界では大いにまともで、50億ドル程度のアセットを運用している。マネジャーはスタンフォードのビジネススクールを出たいわゆるブレイニー(BRAINY―頭の良い)なヘッジファンドマネジャーである。

彼は米国株には弱気で、昨年NYであった時、筆者と意気投合し、この株式相場は2016年に入ったら急落するだろうという、筆者の日柄の研究から来るタイミング論が現実のものとなり始めた今年1月には大変上機嫌でよくメールしてきたものである。

頭の良い人間だけに何にでもはっきりした理屈がほしい性質である。

1月20日で底値を見たNY株が3月に向けて大きく上昇し始めた現象についての彼の解釈はトランプ現象である。ジャネット・イェレンFRB議長が、昨年12月の利上げの際のタカ派的なスタンスから年明け一転してハト派に転換したのは、金利上げで株価が下落すると、その不満からトランプ支持者が増えて、トランプが大統領に近づく恐れが出てきたので、リベラル派のイェレンが急にハト派に転身、その結果株価が上昇したという解釈である。

また中国が人民元安からわりと素直に経済改革を推進することにコミットしたのも、ルー財務長官がG20でアジアの連中に、あまり通貨安政策ばかり推進すると、これもトランプのバッシングの対象になり、トランプ大統領の出現に力を貸すことになるので、やめた方が良いと忠告したということになっている。

米国の金融当局はトランプの影におびえたり、あるいはトランプを出しにして、ほかの国を説得したりと大童でトランプ現象を政策に投影させてきた。まさに破竹の快進撃であったトランプに対する危機感は政府当局者の中では非常に強いものであった。

ところがそのトランプがウィスコンシン州でクルーズに破れ、共和党大会までに過半数の代議員の獲得がやや難しくなってきた。その上に失言が相次ぎ、この選挙戦で最悪の2週間といわれるほどトランプはメディアや、ほかの候補者から袋叩きにあっている。

そうした事情を勘案するとトランプ現象で足踏みをしていた米国株が、トランプの脅威が希薄化するにつれて、本来の暴落商いに入ってくるのではないかというのが、このヘッジファンドマネジャーの見方である。

トランプ現象で1月下旬以降の株式相場の戻りが演出されたかどうか筆者は知らないが、確かに4月は重要な日柄を迎えて、相場がいつ本来の暴落商いに戻っても不思議ではない。

昨年8月、今年1月と2度15000ドルのロウを見たNYダウには、結構強気の見方をする人が増えている。しかし日柄でみればこれからである。3度目の急落は15000ドルでは止まらないだろう。しかも相場は急落前夜の様相を示している。

トランプの凋落と米国株の下落が機を一にするという皮肉はよく考えられた喜劇である。

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天の配剤か?共和党の受難。

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米国大統領選挙が佳境に入りつつある。

共和党はトランプのようなとんでもない偽物が大統領候補として指名される可能性が高まっている。まともな共和党のエスタブリッシュメントは何とかこの形勢を変えてまともな候補に指名を向かわせたいと絶望的な努力をしているが無駄な努力のようだ。

トランプが大統領になることはないと思うが、もしなったら3ヶ月で国民から大ブーイングとなるだろう。米国の恥である。全く中身のない演説を延えんとやり、その中に何とも言えない下品な言葉を使って、人々を罵倒するような輩である。

大統領選挙での共和党の混迷は、恐るべきものだが、もう一つの三権分立の基本である司法の分野でも共和党は苦境に立ちつつある。

米国の最高裁判所判事は9人で構成されており、従来5人が保守派、4人がリベラルと色づけされてきた。ところがその保守派の重鎮であるスカリア判事が79歳で亡くなってしまった(2月)。

当然オバマ大統領がその後任を指名し、それを上院でコンファームすれば新しい判事が決定する。オバマ大統領は当然のようにリベラル色の強い判事を指名すると思われる。

それに対して、共和党上院のミッチェル院内総務は、来年新しい大統領が決まってから判事を指名するべきだとして、オバマの指名を拒否する構えである。オバマがリベラル系の判事を指名して最高裁判事がリベラル5対保守4という構成になり、すべてのリベラル・アジェンダが最高裁で通ってしまうことを共和党は恐れている。

しかしオバマの任期がまだ1年近く残されている中で、大統領が憲法上保障されている権利である最高裁判事の指名を遅らせようというのはどう考えても無理な話である。

この話を議会が強行すると、議会によるオブストラクション(妨害)の批判が高まる恐れがあり、それがひいては、大統領選挙と並行して行われる議会選挙に悪影響を及ぼす恐れもある。

一部共和党上院議員の中にはこれを強行すると、上院での共和党の過半数支配が崩れるとして、オバマの指名した判事を、議会で少なくとも審議すべきだという当たり前の意見をなす人もいることはいる。

共和党は最高裁の構成がリベラル有利になると、これから長期間(最高裁判事は罷免されない)に渡ってリベラル法廷(10-20年)となるので、これを何とか防ぎたい。

トランプの登場も頭が痛いが、スカリア判事の死亡も難しい。共和党はどうしようもない袋小路に追い込まれつつある。大きな政治潮流はすでに共和党から民主党リベラルに移行中である。スカリア判事の死亡はまさに天の配剤であり、一旦駄目になった流れは天も味方せずということか。

※1establishment 既存体制。この場合共和党の守旧派、主流派を意味する。

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