たっしーが教える、中国株なら俺に聞け!!

田代尚機(たしろ・なおき)

TS・チャイナ・リサーチ代表。
1958年愛知県出身。大和総研勤務時代、北京に9年間駐在し、引受リサーチ、中国エコノミスト、中国株担当アナリストなどを担当。その後、内藤証券、リード・リサーチ・アンド・プロダクツ(株)を経て独立。個人投資家、機関投資家向けに中国株投資に関する助言・情報提供などを行う。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。現在、マネックス証券で「田代尚機の注目5銘柄」を掲載中。その他、SBIサーチナ、日経CNBC、ストックボイスなど、メディアへの出演・寄稿多数。

【著書】
・中国株二季報
・人民元投資入門
・中国株「黄金の10年」
・レッド・センセーション好機到来!

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本土、景気減速懸念が台頭!!

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中国株投資家のみなさん、こんにちは。

本土、景気減速懸念が台頭!!

米中貿易紛争、中国側の開放策発表で沈静化?!

米中貿易紛争というイベントも、そろそろ結末が見えてきたのではなかろうか。

10日に行われたボーアオアジアフォーラム会議開会式で、習近平国家主席が講演を行った。前週、米中の貿易紛争がヒートアップしたことで、市場関係者は習近平国家主席が何を話すのかに大いに注目した。

テーマは「開放によってともに繁栄を作り出し、イノベーションによって新たな未来を切り開こう」である。講演内容原稿は5500字を超えるもので、かなりのボリュームである。

挨拶、ボーアオアジアフォーラムのこれまでの成果などに続いて、過去40年の中国における改革開放の歴史を紹介している。次に、未来に向かって、我々は「何をすべきか」を主張している。
さらに、中国は国際社会に向かってどういう風に行動するかという点を示している。

投資家にとって重要なのは後ろの方に書かれている。開放を拡大する中で、中国は以下の重大措置を行うとしている。それは次の4点である。

1.市場アクセスを大幅に緩和する

2.さらに吸引力の高い投資環境を作り出す

3.知的財産権保護を強化する

4.輸入を主体的に拡大させる

1.の内容を詳しく見ると、
「今年、我々は我々の意思を示すいくつかの象徴的な措置を打ち出すだろう。
サービス業、特に金融の面で、昨年末、銀行、証券、保険などの業界における外資持ち株比率制限の開放について重要な措置を発表したが、今年はそれを実行に移す。
同時に開放の度合いを強める必要があり、保険業界の開放を進め、外資金融機関の設立制限を緩和、外資金融機関の中国での業務範囲を拡大し、中国金融市場における提携領域を拡大する。

製造業の面では、基本的に開放しているが、制限が残るのは、自動車、船舶、航空機などの少数の産業である。
これらの産業では既に、開放のための基礎は準備できており、次の段階として、特に自動車産業において、できるだけ早く、外資比率制限を取り払う必要がある」としている。

4.については、
「中国は貿易黒字を目標とせず、輸入の拡大を切に願っており、経常項目収支を均衡させようとしている。我々は自動車輸入関税を相当幅引き下げ、同時に一部のそのほかの輸入製品の関税を引き下げるつもりである」などとしている。

WTO加盟当時から、一貫してアメリカが主張しているのは、金融市場の開放である。金融産業はアメリカにおいて最も強い産業である。
経済規模が大きく、経済成長の早い中国は、世界でも資金需要が大きく、アメリカの金融機関にとって、最も攻め込みたい市場である。
多層からなる資本市場を形成し、国際化、自由化を進めるとしておきながらも、これまでも驚くほどの交渉力で、のらりくらりとアメリカの要求をかわし続けている。
資本市場の開放は自らのペースを崩すことなく、非常にゆっくりとした速度で進められている。

中国人民銀行の易網総裁は、同じくボーアオアジアフォーラム会議の分会において、貨幣政策の正常化といったテーマで講演を行っており、今後の金融市場開放について、より具体的な話をしている。

まず、基本方針として、以下の3点を挙げている。

1. 市場アクセスについては国民待遇+ネガティブリスト方式とする

2.金融業の対外開放、為替メカニズムに関する改革と資本項目の兌換性に関する改革をお互いに調整しながら、同時に推進する

3.開放と同時に、金融リスクの防止を重視し、金融の監督管理能力と開放の程度をうまく釣り合う形とする

6月30日までに大部分の措置を実施するとした案件は以下の6点である。

1.金融資産管理会社の外資持ち株比率制限を撤廃し、内外の資本を同じように扱う、外国銀行が中国において支店と子会社を同時に設立することを許可する

2.証券会社、基金管理会社、先物会社、生命・損害保険株式会社の外資持ち株比率の上限を51%とする、3年以降、制限を取り払う

3.外資企業の合弁証券会社は国内で1社だけとする制限を取り払う

4.さらに一歩進んで、本土、香港の株式市場の相互流通メカニズムを改善する

5.条件を満たした外国投資者が中国において保険代理業務、保険評価業務を営むことを許可する

6.外資に保険ブローカレッジ会社の経営を開放し、内外機関を同一に扱う

年内に実施する案件は以下の5点である。

1.信託、金融リース、自動車金融、通貨ブローカレッジ、消費金融などの銀行業の金融領域に外資を導入する

2.商業銀行が新たに発起設立する金融資産投資会社、理財会社の外資持ち株比率制限を撤廃する

3.外資銀行の業務範囲を大幅に拡大する

4.合弁証券会社の業務範囲に対して単独とするといった制限を撤廃する

5.外資保険会社が設立前に2年間、代表処を設置しなければならないといった制限を取り払う

そのほか、上海ロンドンストックコネクトが年内には実施できそうなこと、
これまでに発表している銀行カード決済機構とノンバンク決済機構の市場参入制限の開放、外資金融サービス会社が行う信用評価サービスの制限の緩和、外資投資による信用調査機関に対する国民待遇などを秩序立てて進めるとしている。

いろいろ細かい点が書いてあるが、いつも通り、重要なところには踏み込んでいない。例えば、証券業務で言えば、外資企業が独資で証券ビジネスができるわけではない。A株のブローカレッジ業務が自由にできなければ、証券会社とは言えない。

根本的なことを言えば、人民元取引について、外国人は基本的に"オフショア証券市場で自由に取引してください"という現行の為替システムが変わらなければ、外国金融機関は本土内で大きくビジネスを行うことはできない。

外国企業を国内市場に参入させるのは、国内金融産業に彼らの進んだ金融技術を吸収させることにある。外国企業の参入によって、国内金融市場が混乱するようなことは起こさないというのが当局の対外開放の基本的なスタンスである。

本質的には開放が中国金融システムを強化する方向に働く点ばかりであり、いつものことであるが、中国は非常にしたたかである。

とりあえず、トランプ大統領はこの緩和措置に満足したようだ。中国側の硬軟を取り混ぜた対応でこれ以上の関係悪化の可能性は遠のいたと言えそうだ。

 

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