蟹瀬誠一コラム「世界の風を感じて」

蟹瀬誠一(かにせ・せいいち)

国際ジャーナリスト/明治大学国際日本学部教授
(株)アバージェンス取締役
(株)ケイアソシエイツ副社長
1950年石川県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米TIME誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のテレビ報道界に転身。東欧、ベトナム、ロシア情勢など海外ニュース中心に取材・リポート。国際政治・経済・文化に詳しい。現在は『リーダー&イノベーション・賢者の選択』(日経CNBC,サンテレビ、BS-12)、『マネーの羅針盤』(テレビ東京)のメインキャスター。カンボジアに小学校を建設するボランティア活動や環境NPO理事としても活躍。
2008年より2013年3月まで明治大学国際日本学部長。
趣味は、読書、美術鑑賞、ゴルフ、テニス、スキューバ・ダイビングなど。


書籍

Twitter

出演番組

おススメブログ

リンク用バナー

当ブログはリンクフリーです。
バナー画像はこちらをお使いください。

トレトレブログ

トレトレおすすめブログ

トランプ大統領の報復

  • 記事URL
  • はてなブックマーク

お爺ちゃんがドイツ移民で、最初の妻も3度目の妻も外国出身なのに反移民政策を掲げるトランプ米大統領が、今度は奇策で攪乱作戦にでた。国境付近で拘束した不法移民全員を全国各地の「聖域都市」に送り込めとツィートし、記者団にこう言い放った。

「あいつらは両手を広げて歓迎するといっている。本当にそうか見てやろうじゃないか!」

 米国には不法移民に対して寛容な「聖域都市」とよばれる自治体が300以上存在する。これらの自治体は、非正規という理由で移民を不当に拘束することや連邦機関に引き渡すことを拒否している。日本のように中央集権で移民に閉鎖的な国からみると、そんなことあり得ないと驚く人が多いかもしれない。しかし、州によって死刑制度の有無や、連邦法で違法な大麻利用が州法では合法というように、米国では自治体の独立性が極めて強いのだ。

就任早々、トランプ氏は大統領令で聖域都市への補助金停止を命じた。だがサンフランシスコ市などの聖域都市の抵抗に遭い裁判であえなく敗訴。「大統領が好まない移民政策を自治体が選んだという理由だけで、連邦補助金を打ち切ってはいけない」というのが判事の判断だった。今回はトランプ側の「政治的報復」である。ニューヨークやサンフランシスコをはじめ聖域都市には民主党支持者が多いからだ。

実際には今回の奇策は法的にも疑問があるため実現しない。それでも「見かけが良ければ結果は関係ない」というのがトランプ流。これまでの失政を隠し、移民流入に対する国民の恐怖さえ煽られればオーケーなのだ。

 聖域都市の歴史は1970年代に溯る。きっかけは政情不安や戦争から逃れるため中米諸国からの亡命希望者が殺到したことだった。米国政府は受け入れを拒否したが、すべての人々の基本的人権を守るのが建国の精神だとして米市民が各地で立ち上がり聖域都市運動が始まったのである。85年にはサンフランシスコが「避難都市」条例を制定。不法移民も米国民と同じ公共サービスを受けられるようになった。彼らの生活を支える資金源はもちろん税金だ。納税者である市民や合法的移民の間に不満がないわけではない。だが、もともと中南米から移民が押し寄せた原因は、その地域を支配しようとした米政府の裏工作によるところが大きい。米国が後押しする反政府勢力が社会主義政権を倒そうとして大量の難民が発生しているベネズエラ情勢などその典型だ。

 民主主義も法の支配も踏みにじるトランプ大統領は、世界遺産「自由の女神」像の台座に次の詩が刻まれていることをきっと知らない。

「疲れ果て、貧しさにあえぎ、自由の息吹を求める群衆を、私に与えたまえ。人生の高波に揉まれ、拒まれ続ける哀れな人々を。戻る祖国なく、動乱に弄ばれた人々を、私のもとに送りたまえ。私は希望の灯を掲げて照らそう、自由の国はここなのだと」

kanise_20190422.jpg

  • 記事URL
  • はてなブックマーク
トレトレ会員登録でもれなく3mBTCプレゼント!

ブレクジットの成否

  • 記事URL
  • はてなブックマーク

ひとりの政治家の判断ミスから国家が窮地に陥る。今のイギリスがまさにそうだ。欧州連合(EU)離脱の期限が月末に迫る中、まともな合意に至ることができず七転八倒している。

もとはといえば、3年前にキャメロン前首相が目先の党内事情と選挙対策のためにEU離脱の是非を問う国民投票の実施に打って出たからだ。キャメロン氏はてっきり否決されるものと思っていたが、結果は大誤算。国民は52%対48%の僅差でEU離脱を選択した。背景には欧州全域で高まった反移民感情があった。EU加盟国で金持ち国イギリスには貧しい国からの移民がヨーロッパ大陸を経由して1年に30万人も流れ込んでいた。学校も病院もアパートも満杯。さすがの異常事態にこれではやっていけないというムードが国民の間に漂ったのだ。

敗北したキャメロン氏は早々と首相だけでなく議員も辞任。後釜に座ったメイ首相はEU側となんとか離脱合意を取り付けたが、今度は本家であるイギリス議会の承認を得られず四苦八苦している。

最大の難関はアイルランドと北アイルランドの国境問題だ。イギリスは海に囲まれた島国のイメージが強いが、1037年にイギリスから独立したカトリック中心のアイルランド共和国と、残留したプロテスタントが多数派の北アイルランドの間には地続きの国境が500キロある。

現在はイギリスもアイルランドもEU加盟国だから人もモノも投資も羊もその国境を自由に往来できているが、イギリスがEUから離脱すると国境審査や関税を復活させなくてはならなくなるから厄介だ。

それだけではない。30年間も続き爆弾テロ、銃撃戦、暗殺などで3500人もの死者と4万2000人以上の負傷者をだした北アイルランド紛争を終結させた1998年の和平合意もEU統合が基本となっている。EUとの合意なしに離脱することに反対する北アイルランドで武力衝突が再燃する恐れもある。1月には新たな反英組織が自動車を爆発させる事件を起こしている。

ダメージが大きい合意なき離脱をなんとか避けようと、イギリス本土と北アイルランドを隔てるアイリッシュ海に国境線を引いたらどうかとか、イギリスのEU離脱後も北アイルランドだけ単一市場と関税同盟に残してはどうか、というような提案が出されたが、イギリス政府、議会、EUの3者が折り合える妙案が出てきていない。離脱日延期の可能性は残っているが、国民投票のやり直しも時間切れだ。遅かれ早かれ合意なき離脱が避けられないのではないか。

じつはブレクジットの裏には移民を嫌悪するひとりの大金持ちがいた。その話はまた後日。

kanise_20190329.png

  • 記事URL
  • はてなブックマーク
トレトレ会員登録でもれなく3mBTCプレゼント!

今北米・中米で起きている政情不安

  • 記事URL
  • はてなブックマーク

お騒がせトランプ米大統領が2月15日、メキシコとの国境に壁を建設する費用を確保するため、国家非常事態を宣言した。国境を越えて侵入してくるメキシコからの不法移民は強姦魔と麻薬密売人ばかりだというのが言い分だが、アメリカ人とメキシコ人のどちらが極悪か歴史をきちんと勉強したほうがいい。

アメリカの歴史はトランプを遙かに凌ぐ嘘と武力で塗り固めた領土拡大のオンパレードだ。1776年の独立当時、アメリカ「合州国」は大西洋岸の東部わずか13州だった。それが大西洋から太平洋まで達する広大な国家になったのは、武力によるイギリス植民地獲得、フランス・スペインからの領土買収、先住民虐殺、そしてメキシコを襲った悲劇の結果だ。

現在のテキサス州はもともとメキシコの領土だった。陽気で寛大なメキシコ人は1820年代から姿を見せ始めたアメリカからの移民を温かく受け入れた。ところがその数が2万人を超えた入植者たちは「テキサスはアメリカの領土だ」と勝手に独立宣言し、戦争の末メキシコからテキサスを奪った。

さらに軍事力も経済力も劣るメキシコの弱みにつけ込んで、今のニューメキシコやカリフォルニアまでも略奪した。アメリカのイデオロギーは民主主義ではなく「明白な運命(マニフェスト・デスティニー)」、つまり権力拡大はアメリカの天命だという身勝手な思想だ。トランプの「アメリカ・ファースト」の背景にはその思想がある。

「天命」に従って、パナマ、グアテマラ、アルゼンチン、ブラジル、エルサルバドル、キューバ、チリ、ペルーなど中南米に勢力を拡大。「エコノミック・ヒットマン」やCIAが暗躍して手口はより巧妙になった。エコノミック・ヒットマンとは表向き国際コンサルティング企業職員だがじつは米国の利益のために秘密裏に途上国を食い物にする連中だ。

彼らの手口は、まず天然資源豊富な途上国の指導者に世界銀行などの融資の話を持ちかけ、国に巨額の債務を負わせる。融資された資金はインフラ建設などを請け負う米企業と現地の権力者の懐に入る。やがて債務返済に窮した債務国政府は天然資源や国連の議決権を奪われ、米軍基地建設を強いられたりする。逆らう奴の暗殺や軍事介入も辞さない。

この事を知れば、豊かな自然に恵まれ世界屈指の産油国であるベネズエラが今なぜ未曾有宇の経済危機に陥っているかがわかる。1922年に原油が噴出して以来、およそ半世紀でベネズエラは最貧国からラテンアメリカで最も豊かな国のひとつになった。

するとインフラ整備や産業プロジェクトに世界銀行などから多額の融資が行われ、汚職が蔓延。原油価格崩壊後は債務返済でなくなり、貧困が拡大、「王様と物乞いの国」と呼ばれるほど深刻化した。これが緊縮財政、民営化、外資導入というアメリカ流新自由主義(小泉・竹中内閣も導入しました)の本性なのである。

それに反旗をひるがえして登場したのが反米社会主義チャベス政権だ。欧米では独裁者のレッテルが貼られているが、貧困層と軍の支持を受けたチャベスは石油が生み出す富を国民に等しく分けるため主要産業の国有化や価格統制を断行した。その路線を引き継いだのがマドゥロ大統領だが、原油価格の下落とアメリカの経済制裁によって経済は悪化の一途を辿っている。

打倒反米政権に燃えるアメリカはすかさず親米で暫定大統領を自称するホアン・グアイド氏(国会議長)の支持を表明、軍事介入も辞さない構えだ。これに対してマドゥロ政権を支援するロシアや中国などが猛反発、さながら世界を二分した東西冷戦を彷彿とさせる状況になっている。

罪深きは自由と民主主義の美名を借りたアメリカの露骨な勢力拡大主義なのだ。

kanise_20190220.png

  • 記事URL
  • はてなブックマーク
トレトレ会員登録でもれなく3mBTCプレゼント!

トランプの2019年はバラ色か?

  • 記事URL
  • はてなブックマーク

今年はいったいどんな年になるのだろう。そう思いあぐねていたら、ある人物がオーストラリアの研究機関へ寄稿したコラムが目に留まった。その人物とはジョセフ・E・スティグリッツ。コロンビア大学の教授である。ノーベル経済学賞を受賞し、米クリントン政権で経済諮問委員会委員長を務めた経済学者である。

コラムのタイトルはずばり「A Very Trumpian Year(トランプ色に染まる年)」。就任以来数限りない虚言、暴言、妄言で政策をちゃぶ台返しをしてきたトランプ大統領が世界にまき散らした悪い種が発芽して、混乱極まりない年になるという恐ろしい予言だ。

そういえば、知人で米リスクコンサルティング会社ユーラシアグループを率いるイアン・ブレマー氏が発表した2019年の10大リスクのトップも「Bad seeds(悪い種)」だった。危機に瀕する米国の民主主義や、止まらないロシアのサイバー攻撃、欧州でのポピュリズム(大衆迎合)政治の台頭、中東の不安定化、同盟関係の弱体化など、世界中の地政学的事象のほとんどの原因は悪性トランプ・ウィルス感染によるものだという。

世界的な最大の関心事はやはり「米中新冷戦」だろう。トランプ大統領就任直後は驚くほどの蜜月関係を演じた両国首脳だったが、その目的が北朝鮮を制御するための大芝居だと露見した後は坂道を転げ落ちるように対立が深刻化している。

米国では、大統領の独断専行に嫌気がさした国際協調派の側近が政権から次々と姿を消した。残ったのはロス商務長官やナバロ補佐官といった対中強行派ばかりが目立つ。とくに大統領選挙時にトランプ氏に重用されたナバロ氏は『米中もし戦はば』という物騒な著書だけでなく、経済学者時代には『中国がもたらす死』というドキュメンタリー映画まで自作した筋金入りの反中派だ。

一方、国内で一強体制を確立した習近平主席は、数で米国を圧倒することを目指したこれまでの対米軍事戦略から先端技術による情報支配へとシフトしている。サイバー戦闘能力を増強するとともに、専門家によれば、「暗殺者の槌矛(つちほこ)」戦術を練っているという。耳慣れない言葉だが、一見優位にみえる敵の能力を弱点として利用する戦術のことだ。

米国はハイテク技術に優れ、配電・交通・金融といった社会インフラから陸海空軍まですべてネット回線で繋がっている。しかし、その優位性はシステム内部にマルウェアを埋め込まれるなど外部から不正侵入されると大規模な機能不全を引き起こす弱点にもなる。

米中貿易戦争は早晩中国が譲歩して決定的な対立には至らない。だが、水面下で繰り広げられるサイバー技術戦争はこれからも激化するだろう。ちなみに、安全保障専門家リチャード・クラーク氏よれば、総合サイバー戦争能力でいちばん優れているのは北朝鮮だという。

北朝鮮は高度のサイバー攻撃能力を持っているが、回線がほとんど遮断された国内には米韓のサイバー戦士が攻撃できる目標がほとんど存在しないからだそうだ。

kanise_20180125.png

  • 記事URL
  • はてなブックマーク
トレトレ会員登録でもれなく3mBTCプレゼント!

地球の片隅で今も脅威の種が息づいている

  • 記事URL
  • はてなブックマーク

1990年代半ばに観た『アウトブレイク』という映画は背筋が寒くなる作品だった。アフリカからペット用に密輸されたサルが原因で致死率100%の殺人ウィルスがアメリカで爆発的に拡散し、人々が目や耳から出血して次々と死に至るサスペンスだったからだ。映画評論家の故淀川長治だったらきっと「怖いですね、怖いですね」と繰り返しただろう。

今、その殺人ウィルスのモデルとなったエボラ熱(致死率50~90%)の感染がアフリカ中部コンゴ民主共和国(旧ザイール)で急拡大している。同国の保健省によると、これまで見つかった患者は計542人(12月18日時点)。そのうち319人がすでに死亡したという。ウィルスは野生動物から感染し、接触感染で人から人へと拡大するからやっかいだ。

コンゴのエボラ熱流行は1976年にアフリカ中部で初めて集団感染が確認されて以降10回目だが、今回は「破滅的な事態」になる可能性があると世界保健機構(WHO)は警告している。地域の無関心や地下資源を巡って繰り返される武力紛争が迅速な対応を妨げているからだ。医師が反政府勢力に殺されたりしている。

史上最悪のエボラ熱の流行は2014年、西アフリカで起きた。ご記憶の方もいらっしゃるだろう。ギニアをはじめとする西アフリカ6カ国で約2万9千人が感染し、死者数は1万1千人を超えた。医療従事者の間でも感染が起き、支援団体がボランティアを撤退させたというから並大抵のことではない。

今回のウィルスはコンゴの地方から人口が密集している都市部に急速に広がっており、「爆発的拡大」の可能性が大だ。取材先で出会う医師や看護師の献身的な働きぶりには頭が下がるが、一般人は危険地域に近づかず最新情報に注意をはらうのが得策である。

じつは、私たちの身のまわりにも20世紀最悪の人的被害を出した感染症の脅威が存在している。毎冬流行するインフルエンザだ。今では"忘れられた記憶"となっているが、1918年から19年にかけて欧州を中心に世界各地を襲ったインフルエンザ(通称スペイン風邪)は世界人口のなんと3割にあたる5億人に感染し、第一次世界大戦の死者の4倍以上の4000万人~5000万人、日本だけでも関東大震災の犠牲者の5倍近くの45万人、の命を奪っている。そうなんです。インフルエンザを甘く見ちゃいけません。世界経済にも大打撃だった。

もちろん現在ではインフルエンザに関する予防・対処情報が世間に広くしらされていて、ワクチンやタミフルが開発されているからスペイン風邪のような大流行は起きないだろう。しかし考えてみると、今は年間13億人超が飛行機や他の交通機関で世界を飛び回っている大移動時代。新たな感染症がパンデミックを引き起こすリスクは常に存在していると考えたほうがいい。

いたずらに恐怖を煽るのは好ましくないが、デング熱重症患者経験のある私としては、日本のメディアはエボラ熱にもっと関心を持って報道すべきだと思う。

kanise_20181225.jpg

  • 記事URL
  • はてなブックマーク
トレトレ会員登録でもれなく3mBTCプレゼント!
川口投資道場
500円相当ビットコインプレゼント
アンケートに答えて500円相当のビットコインをゲット!
「これから始めるHSBC香港口座超入門書」2018年8月版
CCM香港 海外法人設立Wキャンペーン
トレトレ会員無料登録はこちら
トレトレLINE@公式アカウント登録
トレトレ公式facebookページ
TRADETRADE Twitter
香港ポスト
マカオ新聞

最近のブログ記事

月別アーカイブ

▲ TOPへ戻る

スマホサイトを表示