蟹瀬誠一コラム「世界の風を感じて」

蟹瀬誠一(かにせ・せいいち)

国際ジャーナリスト/明治大学国際日本学部教授
(株)アバージェンス取締役
(株)ケイアソシエイツ副社長
1950年石川県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米TIME誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のテレビ報道界に転身。東欧、ベトナム、ロシア情勢など海外ニュース中心に取材・リポート。国際政治・経済・文化に詳しい。現在は『リーダー&イノベーション・賢者の選択』(日経CNBC,サンテレビ、BS-12)、『マネーの羅針盤』(テレビ東京)のメインキャスター。カンボジアに小学校を建設するボランティア活動や環境NPO理事としても活躍。
2008年より2013年3月まで明治大学国際日本学部長。
趣味は、読書、美術鑑賞、ゴルフ、テニス、スキューバ・ダイビングなど。


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米国の良心が試されるトランプ弾劾

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米10ドル紙幣には鼻筋の通った凜々しい人物の横顔が描かれている。建国の父のひとりで憲法の起草者だった思想家アレクサンダー・ハミルトンだ。彼は法を無視する傍若無人なリーダーが現れることを恐れて以下の文言を合衆国憲法に書き込んだ。

「大統領、副大統領および合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪その他の重大な罪または軽罪につき弾劾の訴追を受け、有罪の判決を受けたときは、その職を解かれる」

えっ、軽罪も、と驚かれたかもしれない。じつはこの「軽罪」という文言には「いかなる権力の乱用」という意味が込められている。ハミルトンによれば、それは「公人の不品行、つまり大衆の信頼を乱用したり傷つけること」だという。

そして今、不品行極まりないドナルド・トランプ大統領の弾劾手続きがいよいよ始まった。

12月18日(日本時間19日)、野党民主党が過半数を占める下院で大統領弾劾決議案が賛成多数で可決された。これでトランプ氏は米国史上3人目の弾劾訴追を受ける不名誉な大統領となった。この汚名はトランプに一生ついて回る。

史上初めて弾劾にかけられたのは第17代大統領のアンドリュー・ジョンソン(1968年)。理由は不法行為・拒否権乱用だったが、わずか1票差で罷免を免れた。2人目は1999年に不倫と偽証で墓穴を掘ったビル・クリントン大統領。こちらは不倫隠しで大統領を罷免するのは適切かという疑問の声が与野党からあがり、翌年「無罪」で決着している。

「まったく馬鹿げていて胸が悪くなります!」

弾劾決議案が下院で採決される前日にトランプ氏からの手紙を受け取ったペロシ米下院議長は怒りを露わにした。穏やかな物腰で知られる彼女が声を荒げたのも無理はない。6ページに及ぶその手紙には品格のかけらもない文体で彼女に対する個人攻撃、脅し、大袈裟な自己憐憫、そして数々の嘘が綴られていたのだ。

トランプ氏が訴追された理由はふたつ。ひとつは、自らの政治的利益のために軍事支援を見返りにウクライナの大統領に民主党大統領候補として有力なバイデン元副大統領の調査を依頼したという疑惑。すでに内部告発状や大統領同士の電話会談記録などの証拠が存在している。明らかな権力の乱用で安全保障にとっても脅威だ。もうひとつは議会からの召喚状に応じず関係書類の提出や政府高官の議会証言を妨げた「議会妨害」。

それなら有罪だろうと誰しも思う。だが、通常の刑事裁判とは違い、証拠がそろっていても、弾劾裁判は極めて政治的で一筋縄ではいかない。有罪無罪を決めるのが上院議員だからだ。大統領罷免には上院(100議席)に出席する議員の3分の2以上の賛成が必要と規定されている。

現在は共和党が過半数の53議席を占めており、大統領のヤクザまがい報復を恐れて共和党議員の造反は極めて少なそうだ。弾劾裁判中にトランプに致命的な証言や証拠が飛び出して世論が一気に反トランプに流れない限り、「無罪」の可能性が高い。

目先の経済だけみれば、トランプ自身も紙幅を肥やせる大企業と金持ち優先の規制撤廃と低金利政策で株価は史上最高値を更新し続け、失業率は歴史的低さになっている。暴走するマネーの先行きは奈落であることは2008年の世界金融危機をみれば明らかだ。

それでもトランプ再選の確立は40%だという。日本でもトランプを評価する経済評論家やアナリストがいる。米国の大統領は株価さえ上げれば人格、品位、良識、政治能力など不要だと言っているに等しい。"Nobody is above the law(誰の法律の上に立つことはできない)"というペロシ議長の言葉は重い。

だがトランプは「私は(神に)選ばれし者だ」と公言して恥じない。ハミルトンが生きていたらきっと怒りで拳を振り上げたことだろう。上院での弾劾裁判は年明けに始まる。

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